貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月

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6.急転が直下……する?

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 触れるだけだった初めてのキス。じんわりと創ちゃんの熱が伝わってきたかと思うと、そのうち私の唇を喰むように啄まれる。

 何度も、何度も、何度も……

「って! 創ちゃん! 何回すれば気が済むの?」

 離してはまた塞がれて、を繰り返され、さすがにクラクラしそうだ。隙を見て創ちゃんの胸を押すと、残念そうに息を吐いた。

「今までできなかったぶんもしようと思って」

 シレッとそう言われて、私は「そんなこと考えてたの⁈  創ちゃん、実はムッツリ……」とつい、余計なことを言ってしまう。そんな私に少しムッとしているようだ。

「悪かったな。これでも俺は我慢してたんだ。与織子は結構隙だらけだったしな?」
「なっ! 隙って! だいたい、いっちゃんに変なことするなって言われてたじゃない!」

 私が言い返すと、創ちゃんは不本意と言いたげに少し眉を顰めた。

「別に……してないだろ」
「えっ? これで? 唇腫れそうなのに?」

 私が目を丸くしつつ返すと、またクスクスと笑われる。

「まぁ、そうだな。でもこれくらいはさすがに一矢の想定内だろ。これ以上先に進んだら殺されそうだが」

 これ以上先……? と思い浮かべて、夜ドラマを見ていたときのお茶の間の様子が頭を過ぎる。あれだ、ベッドシーンと言われるやつ。始まった途端、お父さんが真っ先にチャンネルを変えてしまうあれ。

「え、あ、それは、そのっ!」

 私がアタフタしていると、創ちゃんは笑いながら私の頭を撫でた。

「それは、ちゃんと結婚するまで待つから」
「えっ! 結婚するの?」
「……しないのか?」

 似たようなやりとりが最近もあった気がする。そうだ、婚姻届を書いたときだ。

「与織子が……その気じゃないなら諦めるが……」

 あからさまにシュンとしてしまった創ちゃんに慌てて私は返す。

「結婚は大好きな人とするものだから! だからその、創ちゃんしか考えられないと言うか……」

 恥ずかしくなってきて、尻すぼみに小さくなっていく声とともに下を向く。そんな私の頭をまた撫でながら、創ちゃんは笑う。

「冗談だ。俺も与織子しか考えられないから。だから、俺と……結婚してください」

 顔を上げると、創ちゃんは真剣に私を見ている。これは、冗談ではないはずだ。

「……はい。私でよかったら……」
「俺は……お前がいいんだよ」

 フッと表情を緩めると、また創ちゃんは私に近づく。

本当に……唇腫れちゃうよ!

 そんなことを思いながらも、私はされるがままにそれを受け入れた。さっきより、少し情熱的なキスだった。

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