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3. 夏の兆しとめぐる想い
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「よかった。カレー、食べてもらえそう……」
胸を撫で下ろしたのも束の間、ハッとして立ち上がる。
「片付けなきゃ!」
シンクはまだ散らかったままで、慌ててキッチンに戻った。お鍋の様子を見ながら片付けていると、箱に書いてあった煮込み時間がやってきた。
一応具材は柔らかくなっていそうだ。火を止めてルーを入れると、カレーの香りがキッチンいっぱいに広がった。
「ただいま、恵舞」
しばらく煮込みながらカレーの鍋をかき混ぜていると、いつのまにか依澄さんが帰宅していたようだ。着替えもせずキッチンに直行したようで、まだスーツ姿だった。
「あ、おかえりなさい」
レードルを持ったまま返すと、彼は笑顔でこちらに歩みを寄せた。
「いい匂いがする」
自分の後ろに立った依澄さんが肩から顔を覗かせたかと思うと、腰に手を回し抱きしめられるような格好になる。いわゆるバックハグ状態にドキドキして、かき混ぜる手が早くなった。
「依澄さん! スーツが汚れます。着替えて来てください」
「ん。わかってるけど、もうちょっとこうしていたい」
耳を低い声がくすぐり、肩をすくめそうになる。面白がっているのか、彼はクスクス笑いながら、顔にすり寄っていた。
「動けないですって。もう食べられるんで、用意しますよ!」
「残念。じゃあ、残りの楽しみは食後に取っておこうか」
楽しげに言うと、依澄さんは私の頰にキスを落として離れる。
「私、デザートじゃないです!」
照れを隠すように、頰を膨らませながら振り返る。依澄さんはネクタイを緩めながら、不敵な笑みを浮かべていた。その顔の良さに、見慣れたはずなのに心臓が跳ね上がった。
「俺にとって恵舞は、どんなデザートより甘いけど?」
「そんなこと、ない……です」
甘いのは依澄さんのほうだ。彼を直視できず熱くなった顔を逸らすと、額にまた唇が降ってきた。
「着替えてくるよ。待ってて」
「……はい」
完全に手のひらの上で転がされているみたいだ。額を冷ますように手を当てる私を見て、笑いながら依澄さんはキッチンを後にして行った。
グツグツと音を立てる音に我に返り、慌てて火を消す。
「危ない危ない。ここまできて焦がしたら台無しになるところだった」
鍋底をレードルでかき混ぜると、とりあえず大丈夫そうで安心する。
(スキンシップは……時と場合を考えてもらわなきゃ)
嬉しくないわけじゃないけど、これではいつか何かやらかしそうだ。もちろん自分が。
まだ熱を帯びている顔を手で扇ぎながら、そんなことを思っていた。
胸を撫で下ろしたのも束の間、ハッとして立ち上がる。
「片付けなきゃ!」
シンクはまだ散らかったままで、慌ててキッチンに戻った。お鍋の様子を見ながら片付けていると、箱に書いてあった煮込み時間がやってきた。
一応具材は柔らかくなっていそうだ。火を止めてルーを入れると、カレーの香りがキッチンいっぱいに広がった。
「ただいま、恵舞」
しばらく煮込みながらカレーの鍋をかき混ぜていると、いつのまにか依澄さんが帰宅していたようだ。着替えもせずキッチンに直行したようで、まだスーツ姿だった。
「あ、おかえりなさい」
レードルを持ったまま返すと、彼は笑顔でこちらに歩みを寄せた。
「いい匂いがする」
自分の後ろに立った依澄さんが肩から顔を覗かせたかと思うと、腰に手を回し抱きしめられるような格好になる。いわゆるバックハグ状態にドキドキして、かき混ぜる手が早くなった。
「依澄さん! スーツが汚れます。着替えて来てください」
「ん。わかってるけど、もうちょっとこうしていたい」
耳を低い声がくすぐり、肩をすくめそうになる。面白がっているのか、彼はクスクス笑いながら、顔にすり寄っていた。
「動けないですって。もう食べられるんで、用意しますよ!」
「残念。じゃあ、残りの楽しみは食後に取っておこうか」
楽しげに言うと、依澄さんは私の頰にキスを落として離れる。
「私、デザートじゃないです!」
照れを隠すように、頰を膨らませながら振り返る。依澄さんはネクタイを緩めながら、不敵な笑みを浮かべていた。その顔の良さに、見慣れたはずなのに心臓が跳ね上がった。
「俺にとって恵舞は、どんなデザートより甘いけど?」
「そんなこと、ない……です」
甘いのは依澄さんのほうだ。彼を直視できず熱くなった顔を逸らすと、額にまた唇が降ってきた。
「着替えてくるよ。待ってて」
「……はい」
完全に手のひらの上で転がされているみたいだ。額を冷ますように手を当てる私を見て、笑いながら依澄さんはキッチンを後にして行った。
グツグツと音を立てる音に我に返り、慌てて火を消す。
「危ない危ない。ここまできて焦がしたら台無しになるところだった」
鍋底をレードルでかき混ぜると、とりあえず大丈夫そうで安心する。
(スキンシップは……時と場合を考えてもらわなきゃ)
嬉しくないわけじゃないけど、これではいつか何かやらかしそうだ。もちろん自分が。
まだ熱を帯びている顔を手で扇ぎながら、そんなことを思っていた。
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