152 / 206
5. 行き合いの空に広がる
17
しおりを挟む
「あ、ジェイクだ」
待ち合わせの時間ギリギリに到着し、二人の姿を探す。先にリアムが声を上げ、外の見える窓際を指差した。よく似た体格が背を向けて並んでいる。その距離がどこか近く感じられて、嬉しくなった。
「ジェイク、早かったね」
「リアム。いつものように、時間を忘れているんじゃないかと心配したぞ」
「そこ心配しなくても、恵舞がリアムの手綱をしっかり握っている」
「依澄さん。実は張り切り過ぎて、時間が押したのは私のせいというか……」
会話を交わしあう私たちの間に、少しのわだかまりも感じない。それに自然に笑みが零れた。そんな私にジェイクが顔を向ける。そして私の前に歩み寄った。
「恵舞。改めて謝罪させてくれないか」
私を見下ろすその顔は、もう冷たいものではない。代わりに、緊張の色が浮かんでいた。
「僕は君のことを、ミヤフジの権力だけでルークに取り入ったのだと、思い込もうとしていた。仕事に対する姿勢を間近で見ていたのに。すべて僕に否がある。どんな罰でも受け入れる覚悟はしている。本当にすまなかった。それから……感謝している。ルークとの時間を与えてくれたこと」
ジェイクの誠心誠意が伝わってくる。確かに酷いことをされそうになった。けれどそれは未遂に終わった。私は最初から、罰を与える気など全くなかった。
「謝罪を受け入れます。一つだけ約束して。もう二度と、大切な人を悲しませるようなことはしないって」
ジェイクを見据えて告げると、眼鏡の奥の瞳がくしゃっと歪んだ。
「ありがとう、恵舞。ところで、ルークから聞いたのだが。日本では謝罪の時、ドゲザというものをするらしい。これでいいだろうか」
そう言ったかと思うと、ジェイクは屈もうとする。それに慌てて「ストップ! ストップ!」と声を掛けた。
「それ、依澄さんのジョーク! 真に受けないで!」
キョトンとした様子でジェイクは依澄さんを見ると、彼はニヤリと口角を上げる。
「ばれたか。さすが恵舞」
「もう! わかります!」
そんなやり取りを見ながら、リアムは笑い始めた。
「やっぱり依澄には敵わないや」
笑い声を漏らしながら、リアムは腕時計を確認する。
「そろそろ時間だ。恵舞、通訳のみんなにもお礼を言っておいて。優秀な人材ばかりで、ハワードに欲しいくらいだよ」
「ありがとう。みんな喜ぶよ」
「僕もリアムと同じ気持ちだ。ありがとう、恵舞」
二人とそれぞれ握手を交わす。
去って行く二人の顔は晴れやかで、まもなく訪れる澄み切った夏空を思わせていた。
待ち合わせの時間ギリギリに到着し、二人の姿を探す。先にリアムが声を上げ、外の見える窓際を指差した。よく似た体格が背を向けて並んでいる。その距離がどこか近く感じられて、嬉しくなった。
「ジェイク、早かったね」
「リアム。いつものように、時間を忘れているんじゃないかと心配したぞ」
「そこ心配しなくても、恵舞がリアムの手綱をしっかり握っている」
「依澄さん。実は張り切り過ぎて、時間が押したのは私のせいというか……」
会話を交わしあう私たちの間に、少しのわだかまりも感じない。それに自然に笑みが零れた。そんな私にジェイクが顔を向ける。そして私の前に歩み寄った。
「恵舞。改めて謝罪させてくれないか」
私を見下ろすその顔は、もう冷たいものではない。代わりに、緊張の色が浮かんでいた。
「僕は君のことを、ミヤフジの権力だけでルークに取り入ったのだと、思い込もうとしていた。仕事に対する姿勢を間近で見ていたのに。すべて僕に否がある。どんな罰でも受け入れる覚悟はしている。本当にすまなかった。それから……感謝している。ルークとの時間を与えてくれたこと」
ジェイクの誠心誠意が伝わってくる。確かに酷いことをされそうになった。けれどそれは未遂に終わった。私は最初から、罰を与える気など全くなかった。
「謝罪を受け入れます。一つだけ約束して。もう二度と、大切な人を悲しませるようなことはしないって」
ジェイクを見据えて告げると、眼鏡の奥の瞳がくしゃっと歪んだ。
「ありがとう、恵舞。ところで、ルークから聞いたのだが。日本では謝罪の時、ドゲザというものをするらしい。これでいいだろうか」
そう言ったかと思うと、ジェイクは屈もうとする。それに慌てて「ストップ! ストップ!」と声を掛けた。
「それ、依澄さんのジョーク! 真に受けないで!」
キョトンとした様子でジェイクは依澄さんを見ると、彼はニヤリと口角を上げる。
「ばれたか。さすが恵舞」
「もう! わかります!」
そんなやり取りを見ながら、リアムは笑い始めた。
「やっぱり依澄には敵わないや」
笑い声を漏らしながら、リアムは腕時計を確認する。
「そろそろ時間だ。恵舞、通訳のみんなにもお礼を言っておいて。優秀な人材ばかりで、ハワードに欲しいくらいだよ」
「ありがとう。みんな喜ぶよ」
「僕もリアムと同じ気持ちだ。ありがとう、恵舞」
二人とそれぞれ握手を交わす。
去って行く二人の顔は晴れやかで、まもなく訪れる澄み切った夏空を思わせていた。
13
あなたにおすすめの小説
一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。
断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。
夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。
パリで出会ったその美人モデル。
女性だと思っていたら――まさかの男!?
酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。
けれど、彼の本当の姿はモデルではなく――
(モデル)御曹司×駆け出しデザイナー
【サクセスシンデレラストーリー!】
清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー
麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル)
初出2021.11.26
改稿2023.10
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる