154 / 183
37
10
しおりを挟む
たくさんの笑顔と笑い声で溢れる庭。それを眺めているだけで、本当に幸せだなぁと俺は何度も思っていた。
「咲月。ソイツを俺に近づけるなよ?」
「お父さん?噛み付いたりしないから!」
「なんだ学。こんなチビすけが怖いのか?」
「学君、昔から犬が苦手で。すぐ吠えられちゃうのよね?」
「父ちゃん、健太君ちに行くの嫌がってたのそれか。犬いるもんな、玄関脇に」
「だからうちの親父、おじさん来たらすぐわかったのか」
「え~?こんなに可愛いのに?おじさん、撫でてみたら?」
俺とさっちゃんを囲むように、親戚となったお互いの家族と、健太君と明日香ちゃんが並んでそんな会話を繰り広げる。かんちゃんはリードを繋がれたまま、不思議そうにみんなを見上げていた。
「大丈夫ですって、学さん。こんな小さな子でも撫でられるんですから」
俺はさっちゃんの足元でかんちゃんを撫でている甥っ子と姪っ子を見ながらそう言う。
「でも俺、かんちゃんに初めて会った時は相当吠えられましたけどね?」
笑いながら俺が学さんにそう言うと、「俺は吠えられてない!」と途端に得意げになった。
「お父さん?変なところで張り合わないの!さっき睦月さん以上に泣いてたの誰?」
さっちゃんにそう言われて、学さんは決まり悪そうに顔を背ける。それを見て、皆から笑い声が漏れた。
そうなのだ。バージンロードを歩くさっちゃんの隣で、学さんは滝のような涙を流していたのだ。さっちゃんはあとでこっそり「こっちの涙、引っ込んじゃった」なんて笑っていた。
まぁ、学さんの気持ちもわからないでもないけど。もし俺に娘が生まれて同じような状況になったら、俺はもう泣く自信しかない。
「あ、そうだ。せっかくだから今のうちに」
思い出したようにさっちゃんは声を上げると、皆がそれに注目する。
「これ。明日香ちゃんに貰って欲しいの」
そう言うとさっちゃんは明日香ちゃんにブーケを差し出した。
「えっ!」
急に振られ、明日香ちゃんは驚いている。俺達が結婚の承諾をもらいに行った日、明日香ちゃんは健太君と結婚すると言っていた。今日2人が揃ってここに来てくれて、付き合いは順調だと話してくれた。
「今度は明日香ちゃんが幸せになる番だよ?」
そう言われて、明日香ちゃんは大粒の涙を浮かべて健太君を見た。それに健太君は頷くと、受け取るように背中を押した。
「ありがとう咲月。これからも、一生友だちでいてね」
「うん。もちろんだよ!」
そう言って2人は抱きしめ合っていた。
「咲月。ソイツを俺に近づけるなよ?」
「お父さん?噛み付いたりしないから!」
「なんだ学。こんなチビすけが怖いのか?」
「学君、昔から犬が苦手で。すぐ吠えられちゃうのよね?」
「父ちゃん、健太君ちに行くの嫌がってたのそれか。犬いるもんな、玄関脇に」
「だからうちの親父、おじさん来たらすぐわかったのか」
「え~?こんなに可愛いのに?おじさん、撫でてみたら?」
俺とさっちゃんを囲むように、親戚となったお互いの家族と、健太君と明日香ちゃんが並んでそんな会話を繰り広げる。かんちゃんはリードを繋がれたまま、不思議そうにみんなを見上げていた。
「大丈夫ですって、学さん。こんな小さな子でも撫でられるんですから」
俺はさっちゃんの足元でかんちゃんを撫でている甥っ子と姪っ子を見ながらそう言う。
「でも俺、かんちゃんに初めて会った時は相当吠えられましたけどね?」
笑いながら俺が学さんにそう言うと、「俺は吠えられてない!」と途端に得意げになった。
「お父さん?変なところで張り合わないの!さっき睦月さん以上に泣いてたの誰?」
さっちゃんにそう言われて、学さんは決まり悪そうに顔を背ける。それを見て、皆から笑い声が漏れた。
そうなのだ。バージンロードを歩くさっちゃんの隣で、学さんは滝のような涙を流していたのだ。さっちゃんはあとでこっそり「こっちの涙、引っ込んじゃった」なんて笑っていた。
まぁ、学さんの気持ちもわからないでもないけど。もし俺に娘が生まれて同じような状況になったら、俺はもう泣く自信しかない。
「あ、そうだ。せっかくだから今のうちに」
思い出したようにさっちゃんは声を上げると、皆がそれに注目する。
「これ。明日香ちゃんに貰って欲しいの」
そう言うとさっちゃんは明日香ちゃんにブーケを差し出した。
「えっ!」
急に振られ、明日香ちゃんは驚いている。俺達が結婚の承諾をもらいに行った日、明日香ちゃんは健太君と結婚すると言っていた。今日2人が揃ってここに来てくれて、付き合いは順調だと話してくれた。
「今度は明日香ちゃんが幸せになる番だよ?」
そう言われて、明日香ちゃんは大粒の涙を浮かべて健太君を見た。それに健太君は頷くと、受け取るように背中を押した。
「ありがとう咲月。これからも、一生友だちでいてね」
「うん。もちろんだよ!」
そう言って2人は抱きしめ合っていた。
0
あなたにおすすめの小説
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる