花と十字架の想い

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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聖武器

花と十字架の想い 31話

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崩れ落ちたアスターの手を取って歌い続けるフクシア。

フクシア「貴方のピアノ…どこか懐かしい♪

悲しい音しかもう響~きはしない…虚空に消えた思い出~♪」

本来2人で歌うものなのか、歌詞がまとまらない。

でも、アスターの苦しみが引いていっているのがわかった。

フクシア「貴方の~哀しみに~付け込んだ、

逆の~十~字架から救いたい~目を覚まして~♪」

シオン「フクシア……」

すると、頭痛が治まったのかアスターがフクシアの手を握り返した。

フクシア「…っ! ……あの頃には~戻~れない? そんなの私は信じな~い♪

たとえ剣を交えるとして~も取り~戻してみせる~♪」

アスター「……あの頃に~した~約束…俺の中に蘇らせようと…

君の剣が~その歌声が~呪縛解こうとして~…」

アイリス「あっ…アスターさんが…歌った…!」

疲労で声は大きくないが、確かにアスターも歌い出した。おそらく、洗脳はもう…とけた。

フクシア・アスター「歌とピアノの~音~もう一度、明るく奏でた~い♪

その想いは、まだ残ってい~る♪ 一緒に掟変えよう~♪」

 歌い終わった頃、アスターが顔を上げた。その瞳にはもう光が宿っていた。

フクシア「アスター…洗脳、解けたんだ…!」

アスター「…フクシア…ごめん…ありがとう…」

アスターが立ち上がる。

アスター「シオン…だったよな。

今まですまなかった…洗脳されていたとはいえ、本当に…」

シオン「気にしなくていい。こうして普通に話すのは初めてだな。

でも……おかえり、って言っとくよ」

アスター「…ありがとう。シオン…」

フクシアが封印に触れて解除し、天使の輝石を手に取る。

フクシア「…これで、堕天使にならずに済む…」

石を握り締めた途端、白い光がフクシアを包んだ。

フクシアの片翼も元に戻り、翼の色も黒ずみがなくなった。剣も、黒い部分がなくなった。



アスターが近くに寄る。

アスター「本当にごめん…君を堕天使にしかけるなんて…」

フクシア「…悪いのは、掟と…それに付け込んだ魔族だよ…」

フクシアがアスターに微笑む。


その瞬間…何か、魔法のような物音がどこからか聞こえてきた。

アスター「…! 全員伏せろ!」

アスターの声に慌てて全員が伏せた。伏せていなかったらまともに食らっていたであろう。

宙に魔法の線が走っていた。

ブローディア「な、何!?」

アスター「……来たのか…」

シュロ「え…?」

アスターが祭壇のほうへ目を向けている。全員そっちのほうを向くと…

魔王フロックス「察しがいいな。アスター」

シオン「……!?」

転移魔法でその場に現れたのは、何なのか…。

でも、どこか近寄れない…威圧感…恐ろしい程の魔力の持ち主…。

誰なのか呆然としていると、ブローディアが声を上げた。

ブローディア「フロックスお兄ちゃん!?」

シオン「フロックス…って……まさか!」

アイリス「ま、魔王…!?」

目の前にいるのは、魔王…

だとすればさっきの魔法を食らっていたら、ほぼ確実に瀕死は免れなかった。

魔王フロックス「初めましてだな。もっとも、私の部下はお前たちに何度も会っているが」

ブローディアのことを見てもなんとも思わないあたり、

魔王の意識が強くなっているのだろう。

相手が魔王なら…と、シオンがアイリスの前に立ちふさがる。

シオン「アイリスが目的か…!? そうだとしたら、渡すわけにはいかないからな…!」

アイリス「シオン……」

アイリスを後ろにし、シオンたちが全員武器を構える。

魔王フロックス「アイリス…か。ククク…ハハハハッ!」

レオノティス「貴様…何がおかしい」

急に高笑いをした魔王。

魔王フロックス「アイリスはお前たちの友人か…。

アイリスと言う名でお前たちには通っているんだったな」

アイリス「…ど、どういうこと…」

魔王フロックス「記憶はまだ戻っていないか…まあ、良い…」

後ろにいるアイリスの不安そうな表情に気づき、シオンが斬りかかりそうになった。

それを、アスターが制した。

アスター「…よせ。今の力では、立ち向かったところで全滅する」

シュロ「うっ…で、でも逃げるわけにも…!」

静かにアスターが剣を抜いた。

アスター「せめてもの罪滅ぼし…俺が引き受けるから、シオンたちは逃げろ!」

フクシア「アスター…何言ってるの…!? 死んじゃうよ!」

 少しアスターがシオンたちの方を振り向いた。

アスター「…お前たちには奪われるわけにいかない物がたくさんあるだろ…

やられれば、すべて奪われる」

そう…今のシオンたちは呪剣・ウロボロスも、黒曜石も、

ペンダントも、アイリスも奪われるわけにはいかない。

分かっていた…分かっていたけど、決断できずにいた。

アスター「王都から北へ行け! ずっと行った先に雪の降る地にたどり着く!

そこなら、魔族の侵入を絶対に阻む結界が張られているから安心しろ!

今は、ここから遠くに…!」

シオン「…くっ…! 走れ!」

シオンが全員に指示を出した。苦渋の決断。1人をここに置いていくなんて…

でも、これしか方法がない。

立ち止まるフクシアとブローディアの手も引っ張って、一斉に走り出す。

魔王フロックス「アイリスは、必ず私達の元へ来ることになる…覚悟しておけ!」

その声に、一瞬シオンは振り返り睨んだ。

フクシア「アスター!!」

ブローディア「フロックスお兄ちゃん! 目を覚ましてー!」

2人の声がアスターたちにも聞こえる。でも、振り返らない。


魔王フロックス「裏切り者…死ぬ覚悟はできたのか?」

アスター「もともと俺は魔族とは関係ない。

シオンたちの元へは、命かけてでも行かせない」

魔王が静かに剣を抜く。

その剣は並の人間が見れば見ただけで命を落としかねない程の力を纏っていた。

魔王フロックス「残ったこと、あの世で後悔するんだな」

アスター「そう簡単にいくと思うなよ…魔王!!」

そう言った瞬間、2人の剣がぶつかった。
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