花と十字架の想い

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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聖武器

花と十字架の想い 32話

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アスターに言われた通り、北へ進んで行く。

魔族が一切侵入できない結界が張られている地…

それはシオンたちも聞いたことがあった。

アイスクラピウス雪原。そして、その雪原にあるアルテミスの町。

そんなに大きな町ではないが、そこに張られた結界は

魔物はおろか魔族すら入れることのない強力なもの。

今の魔王は完全復活していない。媒体を使っている状態なら、この結界はまだ破られない。


今は出来るだけ…出来るだけ遠くへ…王都から離れた場所へ…。

夜になった頃、ようやくアルテミスの町に到着した。

シオン「ふぅ…やっと着いたな…。もう夜、か…」

アイリス「……」

フクシア「……」

ブローディア「……」

シオン「……とりあえず宿をとろう。色々あったからな」

 女性陣の顔が暗い。それもそうだ。フクシアはアスターを置いてきてしまったこと。

ブローディアは自分の声が兄に届かなかったこと。アイリスは…魔王の言った言葉のこと。


宿を見つけて入る。

シオン「一泊したいんですけど、空いてますか?」

「あ、はい。空いてますよ! こんなところまでお疲れ様です。ゆっくり休んでいって下さい!」

そう言われて、部屋に案内される。どうやら今日は、客はシオンたちだけらしい。

しばらく部屋で暖を取った後に、眠れなくて廊下に出ると、アイリスがいた。

シオン「…アイリス」

アイリス「っ…シオン…」

やっぱり、まだ気にしてる。

シオン「…魔王の言ったこと…?」

黙ってアイリスが頷いた後…

アイリス「…なんだか、怖いの…知ってしまうことが…。

魔王の言ったこと…全くの嘘のようには感じられなくて……

私が、いつか魔族のほうへ行くことになる…って…」

シオン「……アイリスは、まだ全て思い出せてないんだろ?…記憶なんて関係ない。

今、アイリスはどうしたい? 魔族のところに行きたいって思ってる?」

ハッとアイリスが顔を上げた。

アイリス「思ってない…! 魔族のところなんて…絶対に行きたくない。

私は、シオンたちと一緒にいたい」

シオン「なら、それでいいんだよ。運命なんてない。在るのは自分の意志。

アイリスがそうしたいのなら、そうしていいんだよ」

アイリス「……シオン……」

少し黙り込んだ後、シオンがまた口を開いた。

シオン「アイリスは何があっても俺たちの仲間だ。

たとえ君がなんだったとしても、アイリスがここにいたいと思う限り、

俺たちは見放したりしない」

アイリス「ありがとう…シオン……あっ」

アイリスが窓の外を見た。そこの景色は…

アイリス「…雪……」

シオン「…本当だ…相当冷えてるみたいだ…アイリス、そろそろ部屋に戻ったほうがいい」

頷いて大人しくアイリスが部屋に戻ったのを確認して、シオンも部屋に戻る。


その頃、ブローディアは宿の外にいて、

それを探しに来たシュロとレオノティスと話していた。

それについてきたカルビとテイルも一緒。

シュロ「ブローディア…やっぱり、お兄さんのこと…」

ブローディア「…うん、まさか声が届かなかったなんて……」

レオノティス「…兄が魔王の媒体に…か…

魔王の肉体さえ取り戻せば媒体にされている者は救い出せると思うが…」

無論、それだって魔王が媒体だった者を殺さなければ、の話だが。

ブローディア「でも、魔王の肉体を取り戻す手伝いなんてできないし…

下手したら、お兄ちゃんを殺す…なんてことに…」

カルビ「…ルビ!?」

シュロ「そんなことには絶対ならないって信じよう!

きっと何か方法がある…僕たちで必ず助け出そう」

シュロが慌ててフォローに入る。

テイル「フロックスしゃんは大丈夫ルイ。

ブローディアしゃんは、そう信じてあげないと、ルイ♪」

ブローディア「…みんな…」

レオノティス「元気を出せ。そうでないと、お前の兄も心配するだろうからな」

少しの沈黙の後、ブローディアが顔を上げた。

ブローディア「ふふ…あはははっ! は~…ありがとう、みんな。なんか元気でたよ。

そうだよね、私のお兄ちゃんだもん。きっと大丈夫だよね」

シュロ「ああっ、大丈夫だっ」

カルビ「ブローディア。フロックスのことは僕もよくわかってるルビ。

あの人は簡単に意識を壊されるような人じゃないルビ」

カルビがブローディアの腕の中に飛び込んできた。

ブローディア「…うんっ!」


ブローディアが元気になったので、宿の中に戻ろうと宿屋の前まで来る。

…と、地面に血痕がある。

ブローディア「…血…!?」

何があったのかと思っていると、シオンが慌てて宿の扉を開けてきた。

シオン「みんな! 大変だ! アスターが…!」


空いていた一室に、アスターは横になっていた。その横でフクシアが看病していた。

レオノティス「これは…一体…」

フクシア「…あの、ね…私眠れなくて、不安で、宿のすぐそばに出ていたの。

そしたら急に転移魔法…かな…

それでアスターが私の目の前に倒れて現れて…血だらけで…!」

魔王が逃がした? いや、まさかそんなわけ無い。なら、どうして……

フクシアが言うにはアスターは気を失っていたらしい。

と、なると転移魔法をアスター自身が唱えることも不可能だろう。

アイリス「…それで…アスターさんの片目が…」

よく見ると、アスターの右目に包帯…血が滲んでいる…。

シュロ「…魔王にやられたっていうのか。その傷…!」

酷く疲弊しているようで、傷も深かった。

回復魔法はかけてあるが、目覚める様子はなかったので、

とりあえず明日の朝、また様子を見に来ることに。

フクシア「みんなは、先に寝てて…私がアスターにはついてるから」

シオン「無理するなよ?」

フクシア「うん…」

シオンたちが退室する。

フクシア「……アスター……ごめんね……ごめんね……ありがとう……っ」

アスターの手を握って、我慢しきれずに涙が落ちる。

フクシア「お願い…目を覚まして…」

一体、魔王となにがあったのか…自分たちが去った後、どれだけ酷い戦いがあったのか…

アスターに直接聞かないわけには、何も分からなかった。
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