花と十字架の想い

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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聖武器

花と十字架の想い 51話

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バジルとクロッカスの母親が、悲劇のその日の事。シオンから聞いた話を静かに話し出した。

「あれは…シオン君とクロッカスが森に、ピクニックに出かけた日の事だったわ。

森に…魔獣が現れてしまったの。剣も何も持っていなかったシオン君達の所にね」
 

さっきまで晴れていたのに降り出した雨、そして雷鳴。そこに轟く魔獣の声。

クロッカス「きゃっ! な、んで…!?」

魔獣の向かう先はクロッカスのほうだった。

シオン「なんでここに魔獣が…クロッカス! そこから離れて!」

クロッカス「…っ、ダメ…足をくじいてて、動けない!」

武器を持っていないため、

クロッカスの前にただ立ちふさがっているしかシオンにはできなかった。

そこへ…

カイヤ「ピクニック中に魔獣に出くわすとは災難ですね…さらに雨や雷まで…」

シオン「…あなたは?」

黒衣のフードを被った男性。後に魔王の精鋭、逆刃十架の一員と判明した人である。

カイヤ「名乗るほどの物ではないですよ。

話はあとです、このままではあなたもそちらのお嬢さんも危険です」

そう言ってシオンに投げられた剣。

シオン「これは……!?」

カイヤ「ウロボロスという名の剣です。これがあればあの魔獣も倒せます」

迷っている時間はなかった。シオンは剣を構えて魔獣に斬りかかる。

シオン「うぉぉぉぉぉ!!」

魔獣は一撃で行動不能になった。けど…悪夢はここからだった。

カイヤ「…ふっ。本当に、人というのは大切な人が絡むと後先を考えない。

それは呪いの剣。一度何かを斬ると自分以外の全てが敵に見え、

殲滅するか剣を手放さない限り解けない呪いがかかります」

シオン「えっ……」

この時すでにシオンの意識はボーっとしか残っていなかった。

カイヤ「そして、その魔獣を放ったのは、私の仲間の…」

奥からもう一人黒衣のフードを被った男性が歩いてくる。

ジェイド「俺が放った」

こちらも後に逆刃十架の一員と判明した人。

シオン「どういう……。……………」

とうとうシオンの目に光がなくなった。

クロッカス「…シオン??」

シオン「…敵ハスベテ殺ス…」

シオンの歩いている先にはクロッカス。シオンが一番殺したくない人。

カイヤ「精神状態がしっかりしていれば呪いに耐えるのですが、駄目でしたね。

魔獣、相当怖かったようで」

ジェイド「呪われやがったか! これ狙ったんだろ、これは面白い…」

カイヤ「ええ、本当に…」

そんなことを話している間にもシオンはクロッカスに近づいていく。

クロッカス「シオン! しっかりして!」

シオン「…死ネ」

そのまま、剣はクロッカスに振り下ろされた。
 

目が覚めた時、シオンの目の前には血の付いた呪いの剣と、惨殺されているクロッカス。

二人の男の姿は無かった。

シオン「クロッカス!!」

シオンは慌ててクロッカスに駆け寄った。

クロッカス「…シオ、ン…」

まだそんなに時間は経っていなかったのだろうか。

クロッカスの息はまだあった。が、これは助からない。

シオン「俺は…どうして、君を…!」

クロッカス「シオン…自分を責めないで…こうなったのはシオンのせいじゃない…。

私があげた花…ずっと持って……」

それを最後にクロッカスは二度と喋らなかった。

シオン「クロッカス……? …そんな…」
 

「これが、聞いた話よ」

レオノティス「…シオンの呪いはなぜ解けたんだ。

その二人の男も視界には入っていただろう」

殺される前に逃げたのか。でもそれは厳しかった。

呪われている時に姿を見られた者は、どこまでも追われるという。

が、シオンはクロッカスを殺したその場から動いてはいない。

「クロッカスを殺したショックで呪いが解けたのか…

いいえ、そんなに簡単な呪いじゃないわ。

あれは、人同士の殺しを見たがった、神が造った剣だから…」

神が造ったもの。それならそう簡単に解けないだろう。なら、どうして…

「私は、怒ってないのよ。シオン君の意志じゃないから…

でも、ルークは…心の底では怒っているかもしれないわね…」

シオンは、その呪いの剣を森にあった崖に放り投げたらしい。

それをワイバーンが回収した、という事だろう。

アイリス「…あのっ。シオンの居場所に心当たりは…!?」

「シオン君ね…なら、クロッカスの御墓がある場所…シオン君の村にいると思うわ」

アイリス「…あの村…」
 

馬車は、バジルとクロッカスの母親が手配してくれた。

幸い、そこまで遠くはなかったので、夕方になる前につく事が出来た。

シュロ「…酷く、荒れてるな…」

アイリス「ジェイドに、滅ぼされたって…」

シオンを探して奥へ進んで行く。その途中、アスターの目に入った物があった。

アスター(…あれは…花?)


森を進んで行くと、シオンの姿が見えた。

フクシア「アイリス、私たちここにいるから、アイリス、話してきていいよ」

アイリス「…うん、解かった…」

仲間に後押しされて、シオンの側に行く。

アイリス「シオン」

シオン「アイリス…なんでここに…」

アイリス「バジルさんとクロッカスさんのお母さんから聞いたよ。全部…」

シオン「そっか…」

俯くシオンの代わりに、アイリスは空を見上げる。

アイリス「空、綺麗だね。青くて…そう思わない?」

シオン「今の、俺の目には…灰色にしか見えないな…ははっ」

やっぱり気にしている。そのシオンに、アイリスも打ち明けた。

アイリス「シオン…私もね、シオンに言ってなかった事があるの」

シオン「え?」

アイリス「私、何人も人、死なせちゃってるんだ…」

それは魔族に追われていたとき…シオンに出会うまでの事だった。

街や村に入れば、追って来た魔族によって被害を受け、

その側を通っただけでもいる可能性を疑われ、街や村が被害を受けて。

アイリス「どんなに街の人達に尽くしても、そうなって人が死んで、

裏切り者、悪魔呼ばわり…怖かったの。心を開けなくなりかけてた。でも…」

シオン「でも?」

アイリス「心を開かないと、余計に人は離れていっちゃうから…

心から笑えなくても、心は閉ざさないようにしてたの」

シオン「……」

アイリス「バジルさんも、本当はシオンの事を許したいのに、

それが出来なくて辛いんだと思う…。

……心を開かないと、相手も心を開いてくれないよ…?」

シオンがその言葉にはっとする。

シオン「…そうか。俺は今まで、心のどこかで、心を閉ざしていた…のか」


シオンがそう言うなり、仲間がみんな出てきた。

シオン「みんな…」

アスター「心配かけさせて…。アイリスも、俺達も心配してたんだからな」

シスル「復讐したいって言うバジルの気持ちは分かるけどな」

リナリア「シスルっ!!」

慌ててリナリアが声を上げる。シオンはそんなやり取りも、今は少し微笑ましく思えた。

アスター「もう、仲間じゃないなんて言わないよな?」

シオン「…ああ、もう二度と言わない。俺は、みんなと仲間でいる…」

ブローディア「シオン、

おばさんがクッキー焼いて待っててくれてるって言ってたから、一緒に行こう?」

それに頷く。復讐は、人の人生の半分以上を削ってしまう。それだけはダメだ。

そのせいでバジルが自分を見失うなんて…クロッカスも望んでいない。

なら、やるべきことは…。

クロッカスの死という呪縛から、救い出すこと。

アイリス「シオン」

シオン「ん?」

みんなが帰り道に向かって歩き出した時、アイリスがシオンに声をかけた。

アイリス「いつか見えるようになると良いね、青い空」

シオン「そうだね…」

そう言ってシオンとアイリスも歩き出す。

こんどは前のほうを歩いていたアスターがシオンに声をかけた。

アスター「そういえばシオン! この荒れた村に、花が一輪咲いてたぞ!」

シオン「え…本当…?」

心当たりはあった。村を旅立つ時に、咲かないとわかっていて植えた、フリージアの花。

水もあげていないのに…まさか、咲くなんて…。

何かの奇跡なのだろうか、と、シオンは少し、嬉しくなった。
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