花と十字架の想い

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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決戦

花と十字架の想い 76話

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リナリアとシュロとレオノティスが戦っていた頃、

まっすぐ進んでいたシオン達は、足止めされていた。

シオン「うーん……左右から矢が飛んで来る。

そして……道の上には炎……;;;;」

アイリス「どうやっても、無理だよね…」

炎ならブローディアの魔法でどうにでもなりそうだが、

左右の矢は防げない。

ブローディア「こういうのって普通、一定時間で作動したり止まったりして、

タイミング見て進めば行けるようになってるものじゃないの!?」

どこ知識だ。と言うか、どの世界観だ。

シオン「ファンタジー小説か冒険小説の読みすぎじゃないか?」

アイリス「でも、これどうしよう…」

・・・・・・

シオン「やっぱり、装置を何とかする方法を探して……」

と言いかけた時、床が連鎖するように消炎。

左右の矢の発射口も閉まってしまった。

ブローディア「え、なんで???」

シオン「……誰かが解除してしまったのか? いや、でも……」

自分達の横にある解除装置は押していない。


この時起こった時の事は分かるだろう。

カイヤが作動させた、全トラップ解除装置だ。


シオン(…みんな、無事なのか?)

そう思った時、先ほど火が出ていた道の先からとんでもなく邪悪な気配。

シオン「っ!?」

(何だ、今の気配…いま大きな何かが見えたような…魔王、か?)

魔王だとしてもこの先にいるであろうジェイドを倒さないと未来(さき)はない。

アイリス「…シオン。」

ブローディア「大丈夫?」

シオン「行こう…この先にジェイドがいるだろうから…」

(みんなはきっと大丈夫…俺が信じなくてどうする…!)


そのまま歩いていくと、大層な扉が見えて来て、

それをゆっくり開けると…

ジェイド「ここまで来たか…罠をどうやって無傷で解いたのか知らないが…」

シオン「ジェイド……」

・・・・・・

ジェイド「…俺の部下、マリンが死んだ」

アイリス「……え!?」

ジェイド「お前らに殺された、と、魔王様が言った。」

え、え、何のことだ? マリンとはこの城に入ってから一度も会っては…

ブローディア「ちょっと勝手な事言わないでよ! 私達はーー」

ジェイド「俺は魔王様の方を信じる。だから…!」

有無を言わさないとばかりに、その双剣を抜く。

シオン「…アイリス、ブローディア。ここは俺に任せてくれ」

ブローディア「えっ! 絶対に負けられないなら、私達全員で…!」

シオン「俺がやらないといけないんだ!」

迷いのない、それでいて強い意志のこもった言葉に何も言い返せない。

アイリス「…信じてるよ、シオン」

アイリスは素直に引き下がり、ブローディアと共に後ろに下がる。


シオン「まず、お前が言う、マリンの死に関しては、俺達は何も知らない!

むしろ、助けに来たつもりだった!」

ジェイド「なら、俺に勝てたら信じてやる! …まあ、俺と戦う理由はそれだけじゃないだろう?」

シオン「…クロッカスと、村の仇だ……! そして、

この先の未来を紡ぐために戦う!」

ジェイド「……その未来にお前はいるんだろうかな……」

何事かジェイドが呟いたが、小声な上に距離が距離だけに聞こえなかった。

ジェイド「俺が戦う理由も至極単純だ。

カイヤとマリンのために戦う…それだけだ!」

同時に踏み込んで剣がぶつかる。

目で追えないほど剣のぶつかり合いと動きが激しい。

シオン「っ! 煌翼斬!」

ジェイド「ちぃっ! ブラッドクロス!」

互いの衝撃波がぶつかる。

シオン「お前が! 仲間を想う気持ちがあるとは意外だな!」

ジェイド「無駄口叩いてる場合か!? デッドウェイブ!」

横にかわして即斬りかかる。

シオン「影牙刃!」

双方の技の繰り出しの後、また剣戟が長く続く。

ジェイド(初めて会った時は話にすらならなかったのに……)

シオン(そうか…俺は…ここまで渡り合えるようになったのか……)

距離を一度おいて息を整える。

ジェイド「シオン…なぜそこまで強さを求めた?」

シオン「強さを求めたわけじゃない」

一瞬、アイリスとブローディアの方を向く。

シオン「俺は、クロッカスを失って、後悔した。

村が滅んでお前に負けた時とアイリスが攫われた時、後悔した。

要は二度と後悔したくないがための自己満足だ。仲間をこれ以上傷つけたくないから。

後悔したくないと思った結果、ついでに付いて来た強さだ」

くだらない、とか、きれいごと、だの言われると思っていた。

けれど……

ジェイド「そうか……」

アイリス(ジェイド……?)

少しの沈黙が流れる。

シオン「ブローディア。君達の周りにシールド張っておいてくれ。

…巻き込まれる」

ブローディア「え、う、うん! …我らを守護せよ! フィジカルシールド!」

アイリスとブローディアの周りに物理を受け付けないシールドが展開される。

・・・・・・・・・

シオン・ジェイド「この剣は、友のために!」

どちらからともなく、剣を掲げる。

シオン「虹華祈翼斬!」

ジェイド「絶竜十字閃!」

技名を叫んで剣を衝突させる。

勢いが強すぎて暴風が起きる。

ブローディア「シオン!」

アイリス「シオン……」

剣のぶつかったところから火花が上がる。

ジェイド「っらあああああ!!」

シオン「ぐっ……っ…はあああああ!!」

虹華祈翼斬と絶竜十字閃が喰らい合う。

大きな爆風が包んだ後、煙が晴れると…

シオン「はあ…はぁ……」

ジェイド「ぐ……俺の攻撃が、敗れた……?」

シオンの攻撃の方が勝り、ジェイドの腕に傷を付けていた。

ジェイド「……まだ、俺は負けを認めるわけにはいかない…!

化け物を……化け物でも…避けなかった…奴が…」

化け物? 魔獣のことか……? てせも、それならみんな…

ジェイド「まあ、良い…この姿で、勝てたら…認めてやる……!」

シオン「なっ!!」

淀んだ赤い光が辺りを包む。途中、ドラゴンの咆哮がとどろいた。

シオン「! 魔獣の姿になったか!」

悠々と空中を飛んでいる。

ジェイド「この状態なら、俺の威力もそれなりに上がる。

どうやって戦う?」

ブローディア「シオン! 私達も戦わないと!」

アイリス「空中じゃ、シオンの攻撃は……!」

それでも、シオンは二人を制止した。

シオン「……大丈夫。これを…使えば…!」

シオンが聖十華剣・ガイアリカーランスを掲げると、

聖武器の姿に戻った。

アイリス「自由なんだ…でも……」

シオン「聖十華剣に比べたら、こっちの方が弱いな。

でも、空中の敵に対抗するにはこれしかない」

そう言うと、シオンは自らに剣を突き刺した。

ブローディア「ちょっ、何を!」

カルビ「ルビ!?」

でも、シオンは全然痛そうじゃなくて…

シオン「バジルさんの時に分かったと思うけど、

聖武器は使い手の意思次第で殺さない事も可能だ。

これを俺に突き刺して……光の翼!!」

その叫びに応えるように、シオンの背に翼が出る。

剣を自身から抜くと飛び上がり、ジェイドの前に構える。

シオン「聖剣の力だ。この剣の時じゃないと翼が消えてしまうから、これで戦うけど…

ジェイド、今のお前を止めるには十分だ。」

ジェイド「…いいだろう! この姿、良く刻みつけておけ! 

お前らの見る最期の光景だ!」

シオン「そっちこそ、ちゃんと見ておけ。お前を殺す奴の姿だ」

ドラゴンの炎がシオンに向かって飛んで来る。

その勢いはかなり強かった。何とかシオンはかわして体勢を整える。

シオン「二人とも! 危ないから部屋から出てくれ!」

でも、動かない。

アイリス「ここにいさせて! シオンは、一人で戦ってるんじゃない!

私達も、逃げないから…!」

逃げてくれて構わないと思っていた。でも…

一人じゃない。それを改めて確信した事で、負ける気がしなくなったのも確かで…

シオン「…いくぞ、ジェイド!!」

ジェイド「上等だ!」

背に回って斬りつけて、そこに向かって尾が壁まで吹っ飛ばしてきて、

また斬りかかって…

シオン「鱗が硬い……! 氷刃連撃!」

かつて砂漠で自分で編み出した技も、連撃の全てがロクに通らない。

ジェイド「ここで負ければ、次に狙われるのは、お前の仲間だ!」

シオン「!!!」

ふと過る。ここに一緒に来た仲間たち。

シオン「………」


アイリス「いつか見えるようになると良いね、青い空」

ブローディア「シオン、アイリスのことよろしくね? 仲良くどうぞ~♪」

シュロ「……シオン…大丈夫か!?」

フクシア「じゃあ、みんなはこっちへ。聖堂に案内するよ」

レオノティス「自分のやるべき事を見失うな! リーダー!」

アスター「シオン…だったよな。今まですまなかった…洗脳されていたとはいえ、本当に…」

リナリア「ダメ…危険なら尚更…一人で挑まないで」

シスル「全盛期の魔王に、勝てるか?」


・・・・・・・・・

アイリス「シオン危ない!」

ジェイド「よそ見しているな!」

シオン「ぐっ…!?」

急降下してきたドラゴンに地面に押さえつけられる。

シオン「くっ……!」

でも、焦りはない…勝てる。もう、大丈夫。

シオン(みんなのために……!)

シオンが決して手放さない聖武器が光を放つ。

ジェイド「これは……!」

光に耐えきれず上空に戻る。

シオンは起き上がって、ドラゴンの方へ飛翔する。

シオン「ゼロ・オリジン! エターナル・タイス!」

負けじと吐き出される炎。

でも、シオンの刃は炎ごと貫いて、ドラゴンの体に突き刺さる。


ドラゴンの叫び声が上がった後、閃光が放たれ、互いに着地。

いや、ジェイドの方は倒れているが…

シオン「……ふぅ…」

上がる息を整えながら、聖十華剣にもう一度戻す。

アイリス「シオン! 大丈夫!?」

ブローディア「もう、無理ばっかり!」

アイリスに回復魔法を唱えてもらって、一息つける。

シオン「勝ったんだから、いいだろ。

これで、後は魔王だけだ……ジェイド、さすがに負け、認めるだろ?」

ジェイド「……ああ。認め、たいな……」

認め、たい?

シオン「!?」

ここに来る直前で感じた邪悪な気配。

この先の玉座からじゃない。ここから……?

シオン「………」


シオン「……ジェイド?」
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