月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 外伝 ~未来(イマ)に至るためのプレリュード~

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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悲壮は音無く近付く

~未来(イマ)に至るためのプレリュード~ 24話

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山岳地帯。

予想通り、瘴気が山の中で充満しているのが分かる。

ゼルシェード「ゼファ。さっき言ったとおりだ。

内部にはお前とフロスティ、フェズ、サラテリ、グラファイトで行け。

こっちは…」

と、言った途端に魔物の群れ。

セピア「…ここにも出て来るんですのね。雑兵の悪神獣!」

プリムローズ「こっちは私達が食い止めるから、陛下達は先へ行って!」

少し心配ではあったが、セピアとエピナールとゼルシェードがいる。

サラテリ「うん、わかった!」

フェズ「気を付けろよ!?」

オペラ「皆さんも…どうかご無事で!」

駆けだしたゼファ達の後を押すように、

エピナール・エルブ「消滅する時間テンプス・ラクタック!」

エピナールとエルブの能力スキルのおかげで速度が上がる。

これなら敵に追い付かれずに内部へ入れる。

オペラ「邪から守る加護を…セイントウィンド!」

オペラの加護がかかった。これで瘴気は問題ない。

フロスティ「このまま先に行くぞ」

ゼファ「うん! あんまり長くかけないで戻ろう!」

グラファイト「みんな、そっちは任せたから!」


内部は敵こそ目立たないのだが、

何分、瘴気が黒く染まっていて視界が悪い。

サラテリ「うわぁ…先進むの時間かかりそう」

フェズ「お前の光属性で霧晴らしたりできねぇのかよ?」

サラテリ「霧じゃなくて瘴気だし。できるとしても風属性じゃないと無理じゃない??」

風属性か…

ゼファの持つ流変剣の能力で属性を変える事はできるが、

魔法剣を使う事しかできないので、何かを晴らすほどの風は起きない。

フロスティ「我の星属性も、瘴気を晴らすのには向かないの」

地道に進んでいくしかないか…。

グラファイト「道が崩れてないとも言い切れない。

十分気を付けて進んでいくよ」


プリムローズ「稲妻よ切り裂け…ヴォルテックソード!」

セピア「血で染まる地獄へ…ブラッドダスヘル!」

エピナール「華桜氷閃!」

エルブ「桜花廻華!」

四人のおかげで、魔物を押さえるのは余裕だった。

プリムローズ「エピナールたちのおかげで、こっちの先手が取れるからいいね!」

セピア「ええ。でも……」

どちらかと言うと、数の暴力。

エピナール「しつこいですね…っ」

エルブ「キリ、ないです…!」

ゼルシェード「オペラ、大丈夫そうか?」

ゼルシェードは常にオペラの隣に待機していた。

オペラに魔物が向かった時に止められるよう。

オペラ「はい…大丈夫、です…うっ!?」

ゼルシェード「オペラ! 魔力がだいぶ減っているんじゃないのか!?」

ずっと加護を持続させているのだ。

魔力がいつ尽きてもおかしくない。

かと言って、ゼルシェードの魔力は流変剣さえ持たないオペラには荷が重い。

オペラ「平気、です…ここで途絶えさせたら、ゼファ様達が…

だから……っ」

魔力が枯渇したらそれこそ命の危険が……。

ゼルシェード(くそっ…ゼファ…間に合うか…?)


その頃……。

フロスティ「っ…ここに来て強い魔物が…っ」

ゼファ「もともとこの山にいた魔物だ…でも」

グラファイト「ベレイザに強化されてるね…」

ベレイザ、やはり手を下しているか。

サラテリ「勝利の光ルクス・ヴィクトーリアもやったのに、倒せないって何!?」

フェズ「不死…じゃねえだろうな!?」

こんな所で足踏みしている場合じゃないのに……。

ゼファ「…まさか、こいつの回復力は…何かの能力…だったり…

それだったら、流変剣で…!?」

ドクン。

フロスティ「あ、あれ…力が抜け…」

グラファイト「加護が弱まってる…!?」

オペラの身に何か…もしくは魔力が限界か…。

サラテリ「ちょっ、まずいんじゃっ…」

この瘴気は加護無しじゃ即死しかねない毒だ。

フェズ「……外、どうなってんだ…!?」

ゼファ(……オペラ)


ゼルシェード「オペラ! これ以上は!」

オペラ「いいえ! 私が、もたせないと…」

けれど…もう魔法の発動は無理だろう。

オペラ(…能力スキル発動に使うのは魔力とは別のものだった…

それさえあれば……)

「命、懸けてでも…ゼファ様を守る…!」

その言葉でハッとした。

ゼルシェード「お前! そんなこと言ったら…っ」

それは、強い意志に応えてしまう。こんな言い方をして覚醒するそれは…。

エピナール「っ、オペラ様! だめです!」

セピア「死ぬ気ですの!?」

戦っている彼らにもその声は聞こえたようで、でも…

プリムローズ「だめ、やめて!?」

エルブ「貴方が死んでは…!?」

悪神獣のせいで近くに寄れない。

オペラ「魔力の枯渇が酷い…ここを切り抜けたところで、

まともな医療機関が途絶えてしまっている今、私の命は長くないでしょう。

今、何もせずに死ねば…ゼファ様達が助かりません…

どのみち尽きる命ならば、ゼファ様達を生かして散ります…」

ゼルシェード「お前は……」

…ベレイザさえ、こんな事をしなければ…

ゼファ達はここへ来ずに済んだのだ。

オペラ「私は、犠牲になるのではない。

希望をつなぐための架け橋になるだけです。どうか、自分を責めないで。

ゼルシェード様…ゼファ様を、お願いします…」

ゼルシェード「……分かった」

それを聞いて安心したのか、微笑む。

オペラ「私は貴方に会えて幸せでした……愛してます…ゼファ様。



……仇花の守護フロス・サクリフィチューム!」

その瞬間、オペラの姿を光が包んだ。

その時のオペラが泣いていたのを、ゼルシェードは見逃さなかった。

でもその涙は、悲しみではなく…ゼファに対する、感謝の涙だという事も、気付いた。


ゼファ「あ、加護が…戻った?」

フロスティ「た、助かったのじゃ…」

いや、安心してもいられない。目の前の魔物を…。

グラファイト「苦しむ獣パーティ・ベスティア!」

グラファイトが相手を状態異常にして動きを鈍らせた。

グラファイト「策があるんでしょ? 今のうちに!」

フロスティ「我も…呪いの詠歌カディレ・セプルクラム!」

フロスティの呪いも加わった。

ゼファ「よし、流れを向けるスキル・リムーバル!」

流変剣を使ってみると、相手の魔力が変化した。

ゼファ「やっぱりだ。こいつの生命力は、能力の一種みたいな物みたいだね」

フェズ「後はどうとでもなるな! 飢えの痛みドロア・フェイムス!」

よし、もうあとは総攻撃だ。

フロスティ「流星奏!」

サラテリ「煌羽天翼!」

グラファイト「鎌獄葬水!」

フェズ「八連殺傷!」

ゼファ「とどめだ! 世を救う…栄華の剣…栄華救世剣!!」

ゼファの一撃がとどめを刺した。

その奥に一つの箱が。

フロスティ「…あった! これが鍵じゃな」

フェズ「早くもどろーぜ。外が心配だしよ」


ゼファが鍵を取ったと同時に、エピナールたちが戦っていた奴らも消滅した。

ゼファ「みんな、大丈夫かい!?」

プリムローズ「……陛下…」

エルブ「……」

あれ、なんだか暗い…。

サラテリ「…オペラどうしたの?」

そう言えば、オペラがいない。

ゼルシェード「……ゼファ。よく聞け」

隠し事をしていいわけがない。

オペラは、犠牲になったわけではないと言ったのだ。

オペラがそう思っているのだから、こっちが違うと、不幸だと言っていいはずがないのだ。

だから、全部伝えた。


フェズ「……マジかよ…」

サラテリ「……オペラ……」

フロスティ「加護が戻ったのは、そのせいか…」

エルブ「…すみません」

いや、こんなの…

エピナール「止められませんでした…」

セピア「魔物がいたのもそうですが……」

いや、違う…

オペラがやってくれなければ、ゼファ達は死んでいた。

救われた命なんだ。オペラに。

ゼファ「ありがとう、最期まで、彼女の護衛をしてくれて」

出た言葉は、感謝だった。

ゼファ「オペラは幸せだと言ったんだろう。

だったら、我らの方が彼女は不幸みたいな顔をしているのは良くない」

ゼルシェード「ゼファ……」

そう言いながら、さっきまでオペラがいた大地にしゃがみ込む。

ゼファ「君は幸せだったんだろう? 希望を作ってくれたんだ。

………ありがとう……」

震えた声から出た「ありがとう」。

それが涙の引き金に。

…………


ゼファ「っ……うわああああああああああああああああああああああ!!!!」


ゼファの声はそこら一帯に轟いた。

でも、立ち止まれない。立ち止まってはいけない。

それこそ、オペラの死を無意味にする行為に他にならないのだ。
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