貴族様の愛の囁き

赤木 水月

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第2幕

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確かに声と外見だけはサギリなのかもしれない……
だが、いかにも俺様で傍若無人そうな男がサギリ本人などと認められる筈もなく

「イヤァァァァァァッ!詐欺よ!詐欺!私の推しがぁぁぁぁっ!」

愛が深いだけに、拒絶反応は凄まじかった。

「なっ!何だ急に!?トチ狂ったのか?」

突然、叫び出した瞳にサギリは驚いて後ずさる。
彼女の奇行が到底、理解出来る筈もない。

「お、落ち着いて下さい。瞳さん!」
「そ、そんな…嘘よぉぉぉぉっ!」

何とか落ち着かせようとケインが声を掛けるのだが、絶望に打ちひしがれ中の瞳の耳には届いていなかった

「お、おい、ケイン!この女をどうにかしろ!」
「で、ですが……!」

もはや1人錯乱状態と化した状態にサギリとケインは戸惑いを隠せない。

「ねぇ、何の騒ぎ?」
「女の子の声だよね?」

そんな彼等の間に、のんびりとした声が入り込んで来た

「ウィリアム様、ルイ様……」

姿を現した、サギリの双子の弟達にケインは姿勢を正し会釈する

「ルイ!お前の得意分野だろ。あの女を何とかしろ!」

お手上げだとばかりにサギリは、蹲り髪を振り乱しながら悲痛に叫ぶ瞳を指し示した。
ここまで騒がれる程、一体何をしたというのか。

「彼女は、もしかして今日から新しく入るメイドさんかな?」
「そんな事は、後回しだ!さっさと、あの女を黙らせろ。煩くてかなわない!」
「はいはい。全く兄上は短気だなぁ」

大方、兄の方がキツイ言い方をしたのだろうと簡単に想像出来た。
ルイは蹲る瞳の頭をゆっくりと撫でる

「レディ、どうか泣かないで。美しい君に涙は似合わないよ。私に可愛い笑顔を見せてくれないだろうか?」

色気たっぷりの声色に、ピタリと瞳の叫びが止んだ。歯の浮くような台詞と言えども、女は甘い言葉に弱いものである。

「は、はい!喜んでっ!」

項垂れた顔を勢いよく上げれば大概の女性は一発で落ちるであろう、甘い微笑みを浮かべたルイがいた

「ふふっ…イイコだね」
「ん……?あ、あれ?」
「どうかした?」

然り気無く顔を近付けて来る彼に、違和感を覚える。
ルイはゲームの設定上、クールで硬派なキャラクターだった筈だ
このような甘い言葉をサラリと言えるような、キザな軟派男ではない。

まるで公式とは真逆だ
それにルイに限らずサギリの場合もそうである……

本来、包容力のある好青年である筈が傍若無人な俺様になっていた。という事は天然癒し系のウィリアムも全く違うキャラクターになっている確率が大いにある

サギリの傍に立っているウィリアムへと、視線を向けてしまう
すると目が合った途端、ニッコリと微笑まれた。癒し系の彼だけは変わってないと瞳がホッとした刹那……

「いつまでも床に這いつくばってないで、さっさと仕事しなよ給金泥棒」

可愛らしい笑顔はそのままに、ウィリアムはサラリと毒づいた

「う、うぅぅ…キャラ崩壊ぃぃぃっ!」

瞳の期待と憧れが二度も打ち砕かれ、悲痛な叫びが邸に響き渡ったのである
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