イーハトーブの約束

サーム

文字の大きさ
5 / 11
第五章

銀河鉄道に乗って

しおりを挟む
 *ユウジ 8時間10分後*

   なぁ、サチ! 
 なんぼ呼んでも返事がないやんか! 
 大丈夫か? 苦しいんか?
 俺がいるから大丈夫やぞ! 
 これはサチの手か? 
 まだ暖かいやんか!
 さあ、手握ってるから、大丈夫や!
 イーハトーブ見つけなあかんのやろ!
 二人で見つけに行こう!

 *サチ 8時間10分後*

 これは、ユウくんの手? 
 あぁ、死なないでユウくん! 
 真っ暗で、それに息ができない、
 ここは、土の中なのね。
 あぁ、ユウくん! 死なないで!
 わたしの手、離さないでね!

 あぁ、ここが土の中じゃなくて、
 空の上ならいいのに...。

 銀河鉄道に乗って、空を飛びたかったわ、二人でね。あぁ、お願い! 二人を助けてください! 神様! 私たち、いっぱいお祈りしてきたよ! 御朱印帳3冊? もっとあるかも? ユウくんもわたしも神社やらお寺巡るの好きだから、そりゃ御朱印目当てかもしれないけど、ちゃんと心を込めてお祈りしてたよ!だから、お願いです! 神様助けて!

 *ユウジ、サチ 8時間15分後*

  「あれ? サチかな? この手、この温もり、そうだよね! さぁ、しっかり! 今から、二人で力合わせて、こんな土の塊なんか吹き飛ばすぞ! そんで、空の上に出掛けるぞ!」
 「ユウくんなの! ほんとに! 空の上に連れていってくれるの? ヤッター!わたし絶対手を離さないわ! さぁ、早くいきましょう!」
 俺たちは、気がつくと、二人で手を繋いで、小岩井農場の売店の外にいた。
 そう、せっかく来たのに農場に入れなくて、がっかりしているところだ。
 はい! ここから始めるで!
 「サチ! 一緒にイーハトーブ行くで!」

 「イルミネーションやってるみたいな写真載せるから、てっきりやってると思ってもうたわ」
 「あわてんぼうやね! 店員さんがびっくりしてたよね? こんな真っ暗闇の農場入ったら、牛さんに襲われるね。また今度、またね、来たらいいやん」
 「あーあ、入りたかったなあ! しゃあないなぁ、帰るか」
 あきらめて車に向かおうとした、その時、真っ暗な空から、何かがこっちに向かってやって来た!そして、物凄い突風で吹き飛ばされそうになって、俺は、咄嗟にサチを抱きよせて地面に伏せた。
 何か物凄い轟音とともに、巨大な物体が、俺たちめがけて飛んでくる! 眩い光を放ちながら!
 ヴォーン! キィーン! プシュー!
 その物体は、俺たちの目前で停止した。俺は、顔を上げて、その物体の正体を確かめようと目を凝らしたが、凄まじい砂煙でよく見えない。
 「こいわいすていしょーん! こいわいすていしょーん! お乗りの方はお急ぎを! えー、すぐに発車となります、お乗りの方はお急ぎを!」
 砂煙が収まって、その眩しい光を放っている物体をよく見ると、なんと!それは、蒸気機関車のようだった。
 「えっ? なんで? こんなところに機関車が?」
 「ねぇ! この形って、林風舎で買った"銀河鉄道の機関車の切り絵"じゃない?」
 君に言われてみると、確かに、あの切り絵の銀河鉄道の機関車の形だった。
 「そこのお二人さん、急いでください!」車掌?らしき男に声を掛けられて、「えっ?俺たちのこと?」と戸惑っていると、君が本当にうれしそうな笑顔で、「ねぇ、乗ろうよ!」と俺の手を引っ張って行く。びっくりして、でもなんかワクワクして、俺は、君と一緒にその機関車に乗り込んだ。

 車両には、俺たちの他には誰もいない。一番前のボックス席に二人向かい合って窓側に座る。
 ヴォーン、ヴォーンと警笛が鳴って、車掌さんの「出発進行!」の声で、列車は動き出した。
 「ところでどこ行くんだろ?」君に聞いてみたが、景色を眺めるのに夢中で、返事がない。
 「うぁー、すごい! 空を飛んでるよ! もうさっきの売店があんなに下に見えるわ!」
 君のその声で、俺も外を眺めてみると、確かにこの列車は、空を飛んでいる! 売店がみるみる小さくなっていくのがわかる。でも、夜だからほかには何も見えない...? と思っていたら、おびただしい数の星たちが、一斉に輝きを増し、お月様も太陽のように明るくなった。
 「ねぇ! みんな踊ってるよ! 楽しそうだね!」君は、窓から飛び出してしまいそうな勢いで、身を乗り出して、動物たちのショーを見ている。
 「ユウくん、私を連れてきてくれてありがとう! この旅行とっても楽しくて、ずっとこのままどこまでも行けたらいいのにって思うくらいなの。ユウくんと一緒にね! どこまでも、いつまでもこうしていたい!」
 「本当に! 俺もだよ、サチ! 今日まで俺といてくれて、ありがとう!」
 お月様が見ているのは、わかってたけど、俺は、君を抱き寄せてキスをした。数えきれないほどの星たちが、二人を祝福しているように、また一段とキラキラと輝き出した。
 俺たちを乗せた"銀河鉄道の機関車の切り絵"は、イーハトーブの夜空を旋回して、農場の動物たちのショーを見せてくれている。
 「ねえ? 私と一緒になって良かった? なんて聞いてもちゃんと答えないんでしょ? いっつも冗談で誤魔化すんだもん!」
 「え~、そんなこと言うてもなぁ。恥ずいやん。何、その顔? 怒ってんのか? もう、しゃあないなぁ、"お前と、一緒になって最高やで、俺は世界一の幸せモンやで!" これでええんか?」
 「もう、またそんな言い方するんやから!」
 「ほんまやんか、ほんまやで!」
 
 「ええ、ゴホン! お楽しみのところ申し訳ありません。そろそろショーは終わりにして、次の駅に向かいます。よろしいですか?」車掌さんが、申し訳なさそうに言ってきた。こいつ、ずっと見てたんか?
 「ありがとう!こんな素敵なショーを見せてくれて、さぁ次に向かいましょう!」君は、にっこりと笑って答えて、「車掌さん、次はどこに行くの?」と聞くと、「銀河ステーション」と言う。「なんか本物の銀河鉄道に乗ってるみたいやなぁ!それで、どこまで行くんや?」俺がふと思って聞くと、車掌は「行きたいところまで行くのです」となんかわかったようなわからないような答えだ。
 「そうよ、いつまでも、どこまでも行けるはずよ!」君は全部知ってるような言い方をした。
 列車は、星の煌めく夜空を走って、いや、飛んでか? 銀河ステーションへと向かった。

 *  ユウジ、サチ 9時間後*

 「お二人さん、お腹が空いているのではありませんか? 銀河ステーションまで一時間ほどかかりますので、その間、食堂車で何か召し上がってはいかがですか?」
 車掌さんにそう言われて、俺もサチもちょっとお腹空いたなぁと思ってたので、言われた通りに食堂車に行ってみることにした。
 そこは、高級なフレンチレストランのように、車両自体も少し違った内装になっていて、木目を上手く活かしたダークブラウンの壁で、天井には、王宮にあるような豪華なシャンデリアが吊るされていた。テーブルは、ゆったりと間隔を空けて、1両に6席しか置かれてない。赤いテーブルクロスが、シャンデリアの淡いオレンジ色の照明に映えている。席について、フレンチディナーのコースを注文した。
 「ねぇ、見て!岩手山が綺麗よ!」君に教えられて窓の外を見ると、何故か、秋晴れの空で、岩手山が白い雪を纏って堂々とそびえ立っていた。これは、俺がネットで見たまんまの景色や! さっきまで夜やったのに、夕陽が綺麗? どうなってんの? でも理想的な "思った通りの" 景色やね!
 「美味しいね! 前菜のサラダも、ポタージュも! メインはお肉かしら?」サチは、幸せな笑顔で、料理を楽しんでいる。
 「メインは、牛肉の赤ワイン煮やって! 岩手に来て正解だったよな。こんな楽しい旅行になって。小岩井農場にも頑張って来てよかったわ、ほんまはイルミネーションは、11月からしかやってないらしいで、ナイトクルーズなんかないのに、俺たちのためにやってくれたんやって、めっちゃラッキーやで俺たち!」
 「ユウくんが一生懸命、良い旅行にしようと、私を喜ばせようと考えてくれたからだよ! ありがとう!」
 俺たちは、これ以上ない、"思った通りの"料理と素晴らしい景色で、至福の時間を過ごしていた。
 「ミユは、東京で頑張ってるみたいやけど、ええ会社見つかって良かったなぁ」
 「そうよね、あの子は、頑張り屋さんだから。でも、一人暮らしは初めてだから、慣れるまでは、大変だと思うけど、まぁ、彼氏が近くにいるから、良かったんじゃない?」
 「彼氏? 嗚呼、なんかおるらしいなぁ、知らんけど」
 「知らんけどって、関西人しか言わないらしいけど、一応知ってるけど責任取りません、みたいな感じ?」
 「知らんけどは、知らんけどや、それ以上でもそれ以下でもないで」
 「うーん、よくわかりません」
 なんか取り止めのない話をしてたら、1組のカップルが入ってきて、俺の真正面のサチの向こう側のテーブルに座った。かなり年配の夫婦のようだ。俺たち以外にも客がいたんやと少し意外やったけど、まぁ、考えたら俺たちだけっていうのもおかしいかなと思った。
 俺は、サチにどうしても聞きたい事を、この際やから、聞いておこうと思った。なんとなく二人の雰囲気もええし、今なら聞けるかなと思ったんや。
 「あのなぁ、ちょっと聞きたい事があんねんけど、ええ?」
 「うん、何?」
 「俺と付き合う前にな、吉田先輩もサチにアタックしてたんやって? あんなかっこええ先輩やなくて、なんで俺を選んでくれたん?」
 「何それ? 今ごろですか? もうそんな昔の話どうでもいいでしょ!」
 「えっ! でもずっと引っかかってんねん! 仕事もできて、次期課長、将来の部長って言われてて、イケメンのあの先輩を振って、なんでこの俺を選んでくれたん?」
 「もう、好きだったからに決まってるでしょ! なんか抜けてて、世話焼いてあげないと、危なっかしい感じがして、でも明るくて皆んなに好かれてるところ? とにかく、一緒に居たら楽しいかなって思ったの! もう、いいでしょ!」
 「そっかあ、好きやったんや!! 聞いて良かったわ! ありがとう!」
 「でもいろいろ大変でしたけどねえ~、結婚してみたらねえ、思ったようには行かないわよね。」
 「ちょっと待って! その前に、聞き逃すとこやったけど、"なんか抜けてて"って言わへんかった?」
 「そんな事言わへんで~」
 「なんやその下手くそな関西弁は、まぁええわ。そんなにすきやったん?」
 「もう! 知らないで~す!」
 「俺は、サチの事大好きやったんや。先輩が奪いにきても、絶対渡さんわ!」
 「もう、そんな事言って、こんなとこで、恥ずかしいからやめて。」
 「あぁ、他に客いてたんやな」と、その老夫婦の方を見ると、かなり年配のご様子で、ご夫婦とも80才は超えてるように見えた。旦那さんの方は、結構いかつい顔してて、どっかの偉い先生って感じがした。
 「あのご夫婦どうしたんだろうね? 結婚記念日かなにかかしら?」ミユも興味深そうにしてる。
 「なんかあの旦那さん、怖そうやな?」
 「そうね、学校の先生でもしてたのかな?」
 二人でそんな風に話をしていたら、その老夫婦の旦那さんの方が、突然、「オイ!」とかなり大きな威圧的な声で、ウエイトレスを呼んだ。あれ?ウエイトレスいたんだ。今まで車掌さんしか見てなかったけど。
 「なんかメニューがさっぱりわからん! ちょっとつまみたいだけだから....、サンドウィッチかなんか持ってきて」とメニューに無いものを頼んでいる。
 「えっ? サンドウィッチですか? 少々お待ちください」ウエイトレスも困惑して、一旦下がっていった。
 うわ!面倒くさい奴!と思って見てたら、ウエイトレスがまたやってきて
 「サンドウィッチですが、ハムサンドでよろしいですか?」と聞いている。「いいよ!早く持ってきて!」何という傲慢なジジイ! メニューにないものを作ってくれるというのにお礼も言わずに、当たり前みたいに、早よ持ってこいかよと思っていると、サチもこっちに目配せして、苦笑いしている。
 そのハムサンドも無事やってきて、俺たちのテーブルにメインディッシュの赤ワイン煮が運ばれてきた。その後も、その旦那さんは、ウェイトレスを呼びつけて、何かと注文つけていたが、サンドウィッチも食べ終えたのか、にこやかになって、奥さんと談笑していた。
 「ねえ、ユウくん! この旅行プレゼントしてくれてありがとう!」サチが、少し酔ったのか、頬を赤らめて、そんな事を言ってくれた。
 「ええ? 何? 当たり前やん、今まで苦労ばっかりかけてなぁ...。でも、俺もちょっとは出世して余裕? みたいなんが出てきたんかな? まぁ、出世いうても安月給やけどな。」
 「本当やね。家計は、相変わらず苦しいけどね。でもこうやって二人で、たまに旅行できるくらいの余裕は、出来てきたね。」
 「あっ、家計は苦しいんやな、まだまだ頑張りま~す! だから、これからもよろしくお願いします。二人でこれからも、いっぱいいろんなところ行こうな!」
 本当に楽しい旅行に出来て良かったと心の底から感じて、サチのことが愛おしくて、いつまでも一緒に生きていきたいと思っていた。でも、いつか離れ離れになってしまうんやないかと、何故かめちゃくちゃ不安な気持ちになっていた。
 だから...サチの手を握りしめて、「好きやで」と言おうとした...、その時、突然、聞こえてきたんや、それは... ...、
 
 「バラが咲いた、バラが咲いた、真っ赤なバラが、淋しかった僕の庭が明るくなあった、バラよ、バラよ、小さなバラ、いつまでもそこに咲いてておくれー」
 えっ? 何? 誰が歌うてんの? 
 俺たちの、他には、あの老夫婦しか居れへんけど...。
 なんと、ジジイが、いや老夫婦の旦那様が、大声で、朗々と「バラが咲いた」を熱唱し始めたのだった。
 俺たちは、最初、え?となにが起こっているのか、理解できなかったが、延々と続く熱唱に、思わず笑顔になってしまい、二人で見つめ合うしかなかった。そして、窓の外を見たら、真っ赤なバラが一面に咲き乱れていた。
 「どうしたの? 一面バラで、映えるわ!」ワインでほろ酔いのサチが、窓にへばりついて微笑んでいる。ちょっと怖いわ~! 真っ赤なバラの花園を通り過ぎると、次には、真っ白なバラが、これまた一面に咲き乱れていて、「今度は、真っ白!めっちゃ綺麗!」サチは、窓に顔を押しつけて大喜びで、「鼻、潰れてまうで!」と言っても見惚れて聞こえないみたい。ジジイ、じゃなくて旦那様もそのバラの花園に見惚れながら、ノリノリで歌い続ける。そしてその後、もっと思いがけない展開が待っていた。なんと、「バラが咲いた」が二番に入るところで、奥様が、一緒に歌い出したのだ。
 「バラが散った、バラが散った、」旦那も嬉しそうに一緒に歌い出す。
 「いつの間にか僕の庭は、前のように淋しくなった。僕の庭のバラは、散ってしまったけれど... えーと?」
 「お父ちゃん、忘れてしもうた?」
 「待て! あっ、思い出したぞ!
 けれども、やな、淋しくなったけれど、いや、淋しかった僕の心にバラが咲いた、バラが咲いた、バラが咲いた、僕の心にいつまでも散らないバラが咲いた~」奥様も合わせるように
 「バラが咲いた~」そして、大拍手!「お父ちゃん、上手ですわ! さすが!」
 二人の微笑ましいやりとりに、なんか知らんけど、あっ、また知らんけどが出てしもたけど、なんか、涙が出てきて止まらんわ! 君も笑いながら泣いていたよな。
 「私たちもあんな風になれたかな? ねぇ、ユウくん、なれたよね? ずっと仲良しで暮らせたよね。」
 君の顔が、涙でいっぱいの笑顔が、かすんでいく。段々と見えなくなっていく...。
 「バラが咲いた、バラが咲いた、僕の心にいつまでも散らないバラが咲いた」仲良し老夫婦の大声の歌も、段々小さくなって、聞こえなくなっていく...。
 
 沈黙が支配した真っ暗な闇がやってきて、全てのものに、この世界の全てに覆いかぶさっていく。
 
 息ができない... 息ができない...
  ユウジ!大丈夫? サチ!大丈夫か?

  「もう今さら、どうしようもないけど、もっと、ちゃんとすれば良かったと思う事がいっぱいあるわ。
 プロポーズの言葉は「絶対、君を幸せにします」やったのに...。
 ダイヤの指輪なんて買ってあげられへんし、安月給やから、家のこともミユのことも全部任せてなぁ。結婚してからは、喧嘩ばっかりして、悲しませてなぁ。
 ミユが生まれた日、仕事で失敗して、すぐに駆けつけてられへんで、やっと駆けつけたのに、結局、上司に呼びつけられて...、ほんま最低の旦那やなぁ?
 あぁ、もっと優しくすれば良かったわ。こんな事になるなんて、考えられへんやん。サチ、君はずっといてくれると思ってたんや、俺の隣に、ずーっと、おるもんやと...。なんの確証もなく、ただ、君はいるもんだと、いなくなるなんて考えもしなかった。君がいないと、いないと、なんもできへんのに、なーんにもちゃんとできへんのに。ほんま、俺はどうしょうもないアホやな。」

  「こんな事になって、あなたのこと、ほんとに好きなんだってわかった。
 私は、あなたの大きな手の中で、守られて生きてきたのね。たぶん、あなたは優しいから、私が弱音吐いたり、辛くて、後ろ向きなことばっかり言って困らせた時、叱ってくれたんだよね、「あかんで、しっかりしろ!そんなにくよくよしてもしゃあない!」ってね。
 そして、何も聞いてないようなふりして、冗談いって笑かしてくれたんだよね。なによ、ちっとも優しくしてくれないし、仕事ばっかりして、かまってくれないなんて思って、わがままばっかり言って、困らせて、ごめんね。ユウくん、あなたと一緒に生きてきて、幸せよ。だから、ずっと一緒にいてね! 死なないでね!」
 
 *ミユ 10時間後*
 
  東北道の大規模崩落事故現場です。事故から、すでに3日が経とうとしています。生存者の命のリミットとされる72時間が、まもなくやってきます。ご覧のように、かなりの量の土砂が、いまだに残されたままです。今までに10名の方々の死亡が確認されており、さらに、この土砂の下には、多くの車両が埋まっているものと見られます。現場では、このように懸命の救助活動が続けられています。
 ミユは、テレビから流れてくる絶望的な状況に、耳を塞ぎ、顔を覆ってただ泣くばかりだった。事故のニュースに嫌な予感がして、サチとユウジの携帯に連絡したが全く繋がらず、居てもたってもいられなくて、会社を早退して実家に来てみたが、案の定、出掛けていて不在だった。それから3日間、両親からの連絡を一人で待っている。明日には、彼氏の車で現地に行くことにしている。
 「大丈夫、お父さんもお母さんも運がいいって言ってたもん...」自分に言い聞かせてみるが、涙が出てきて止まらない。
 「明日ごめんね。ほんとに一緒にいってくれるの? うん、ありがとう」
 彼氏と電話している、その時、テレビ画面に速報が流れた。

 "東北道崩落事故現場で新たに男女二人が発見されました"
  「ごめん、今、速報が入ったの、また、後で掛け直すわ!」ミユは、慌ててチャンネルを切り替えて、新しい情報が流れてないか探した。すると、ニュース番組で、ちょうど現場からのレポートをしているところだった。

 「発見された二人は、男女で、折り重なるようにして土の中に埋もれていたとの事です。今のところ、生死は判明しておりません...」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

サトシ先生は美しき十代の乙女に手を出さない

白神ブナ
恋愛
高校一年一学期から三年三学期まで続く長編です。気になるサブタイトルを見つけて途中からでもお楽しみいただけます。 女子校あるあると、先生あるある、受験あるあるを描く学園恋愛ドラマ。 佐藤サトシは30歳の独身高校教師。 一度は公立高校の教師だったが心が折れて転職し、私立白金女子学園にやって来た。 一年A組の受け持つことになったサトシ先生。 その中の一人、桜井美柑はガチでサトシ先生に恋してしまった。 サトシ先生は、桜井美柑という生徒の存在を意識してしまいつつ、あくまで職務に忠実であろうと必死に適度な距離を保とうとするが……

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

処理中です...