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ー第三章ー
≪覚悟≫
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斉木優里、21歳、国立大学に通う4年生。射手座のA型。実家は、不動産経営をしてるお嬢様。ちなみに一人っ子。
3ヶ月前までは、高らかに理想の彼女と周りの奴らにも謳っていた。もちろん、今でも優里は、理想は理想で、その路線からズレた訳ではない。ただ、あの時の優里の言葉が現実となって止まらないのだ。例の元カレが優里をフった理由が、悲しいかな、分かり始めてきてしまった。
『おい清彦ぉ。お前、最近大丈夫か?えらい、やつれたろう?』
『なんだ、拓か…。』
『なんだとは、何だよ!なんだとは!こっちは心配してやってんのによ!』
『ああ、悪い。…優里の事でちょっとな…。』
『なに?優里ちゃんと上手くいってねーのか?』
『うーん、そういう訳じゃないんだけど、ちょっとさ…。』
『だから、ちょっと何なんだよ!』
『最近、優里が俺に対する要求が凄いんだよ。』
『要求?』
『ああ。優里って実は、ものすげぇ理想が高い女でさ、俺を100%理想の彼氏にするべく、これはこうしてだとか、そういう注文が止まらないんだよ。』
『そういう事か…。』
『まぁ俺も、優里と別れたくねーし、その要求全部に応えて行くつもりだけど、さすがにちょっと疲れて来ちゃってな…。』
『ってか、毎日?』
『いや、さすがに毎日は会えないからな。大体、週1、2かな。ただ、会う度に何かしら要求してくるからな。ま、小っちゃい事だけど。』
『例えば、何よ?』
『そうだなぁ。例えば、服装だとか、髪型だとか、とりあえず、ホストっぽいチャラチャラした感じは嫌いで、かといって、坊主とか短過ぎて、イカチイのも嫌いで、ちょうど良い"間"のとこを雑誌持って来て、髪型も服装もハッキリこれにしてって注文して来るんだよ。』
『それで最近、お前なんかイメージ変わったんだな。でも、見た目的な事だけなのか?』
『いや、他にもあるさ。歩く時は、必ず私の右側に居てって。んで腕を組むんじゃなくて手を繋ぎたいんだと。』
『そんなん別にいいじゃんか!』
『ただ、それも!必ず俺から手を繋ぎに行かないとダメなんだと!』
『え?』
『自分から甘えた感じで手を繋ぎに行くのが、なんか嫌だからって、ただ、それだけの理由で。"なんか嫌だから"ってのが結構、多くてよ。ただ、全部が全部、まだ許せる範疇だから怒る訳にも行かずで、従わずにはいられないんだよな。』
『清彦さぁ、お前完全に遊ばれてんな。』
『いや、遊ばれてはねーさ。それは、分かる。だって間違いなく優里も俺の事が好きだし。他に男がいる訳でもないし。』
『だってよぉ、…お前、相変わらず、ヤらせてもらってないんだろ?』
『それは、だって仕方ねーじゃんか!優里が、そういうポリシーなんだから!それは、尊重してやんないとさ…。』
『…って言ったってよぉ。俺だったら無理だね、そんな子。せっかく付き合ってんのにヤれないなんて!俺は絶対にノー!いくら好きでも、将来結婚する保障もないのにセックス無しで関係を維持していくのは絶対に無理!』
『やっぱり、そうだよなぁ…。』
『なんだ。お前も、そう思ってんじゃん。だったら、あんま傷が深くなる前に別れた方がいーんじゃねーのか?優里ちゃんが長い事、男がいなかった理由が納得するわ。3ヶ月は、経ったんだろ?ほら、前の奴よりは越えたじゃん。それで十分だろ。』
『拓…。お前が、そんな事言ってくれんなよ!応援してくれんじゃなかったのかよ!』
『清彦…。』
『俺の心が折れそうな時に、お前がトドメを刺してどうすんだよ!こういう時こそ励ましてくれんじゃねーのかよ!…クソッ!俺だって、ヤりてーよ!ヤりてーけど、ピンサロすら我慢してセンズリだけで発散してんだ!友達だったら…、男だったら、そんくらい分かんだろ!』
『だから言ってんだよ!』
『あ?』
俺は、驚いた!あの拓が、胸ぐらを掴んで来たのだ。小刻みに震えながら熱くなった両手で、更に力を込めて俺の目を睨み付けながら拓は、俺に言い放った。
『もう苦しいんだろ?いつも冷静なお前が、そんなに取り乱すくらいに追い込まれてんだろ?めちゃめちゃ無理してる証拠じゃねーかよ!ここで俺が励ますって事は、お前にもっともっと無理して苦しめって言ってんのと同じじゃねーか!友達だったら…、男だったら止めるだろ!そんな苛酷な環境に大事な奴をいつまでも置いときたくなんかねーんだよ!』
『拓…。』
始めての喧嘩だった。拓とは、お互いが19の時、フラフラした人生をやり直そうと偶然、同じ時期に今の職場で働きだした、もはや、ただの同僚という言葉では言い尽くせない、完全に親友だ。その拓とは、今まで殴り合いはもちろん、言い争いになる事さえ無かった。それなのに、優里の事で、俺の理想と謳った優里の事で、こんな場面を生み出してしまったんだ。確かに、これをきっかけに拓との関係がどうにかなってしまうとは考えられないが、拓と喧嘩するはめにまで陥ってしまった優里との現状が、ただ、ひたすらに悲しかった。それは、優里との別れを現実のものにする後押しの何物でもなかった。
夏の終わり、10年以上勤めてきた誇りある職場での拓との初めての喧嘩は、静かに寒い季節の訪れを告げていた。
10月―。
兼ねてからの計画通りに、優里の大学生活の夏休みをエンジョイさせた俺は、その満足感の一方で、あの日の拓との喧嘩が物語る優里との"距離"を密かに知らしめ始めていた。
付き合って間もなく4ヶ月に入ろうとしている。結局、泊まりがけで行った海でも抱き合って眠る以上の"進展"は皆無だった。確かに期待はしていた。とは言え、優里だってまだ学生のうら若き乙女。最後の夏休み、白く光る砂浜に青い海、加えてオーシャンビューのホテル、これ以上ないムード満点の夜。全てを許してくれると思うじゃない。
『おっ!珍しい!優里、今日は積極的だな!優里の方から、そんな熱ーいチュウが来るなんて!』
『そりゃまぁ、私だって、テンション上がっちゃうよ!こんなシチュエーションに居たらさ。』
『という事はだ!優里ちゃん!ついに、この時が来たんだね!お父さん嬉しいよ!よーし、優しくしてあげるから、ゆっくりその身を俺に預けてごら…。』
『キーちゃん。私ね、ハネムーンベイビーを作るのが夢なんだ!』
『は?』
『もちろん!イコール、その時がロストヴァージンね!結婚して、直ぐハネムーンに行って、ロストヴァージンでご懐妊!ああ!なんて素敵なんでしょう!ロミオ、あなたは、やっぱりロミオだわ!』
『おお、素晴らしい夢だよジュリエット…。』
『ちょっとキーちゃん!お笑い好きがそれじゃ廃るわよ。ちゃんとノっかってよ!』
『へいへい…。すいませんでした、優里エット。ロミオは、心が折れたので、お先に永遠の眠りにつかせて頂きます。』
『えーもう、寝ちゃうの?夜は、まだまだこれからなのにん!キヨミオ!』
『む、無理があるよ。優里エット…。』
…とまぁ、こんな具合だ。俺の満開の下心は、見事に躱され、あっさりと夏の終わりを迎えたのだ。もちろん、優里には何の悪気もない。俺も、それを承知の上で共にしているのだから。俺は、確かに拓には、さも迷惑そうに優里からの要求に異議を唱えた。でも、実は優里は、ホントに何も悪気を感じさせていないのだ。だから、困ると言えるのかもしれないのだが、誰にも渡したくないという独占欲は、もはや俺に麻酔を打っているようなもので、人には零せる、受けた傷の結晶であるはずの愚痴も、優里の笑顔の前では、その痛みすら感じない。
もしかして俺の理想って、惚れた女の言いなりになる事だったのか?俺自身が、理想になるって事だったのか?待てよ?俺は、Sだぞ?え!?実は、Mなのか?違う!そういう事じゃないだろ!
あーもう、優里。頭がどうにかなっちゃいそうだよ…。
『…キーちゃん!ねぇってば!キーちゃん!聞いてるの?』
『え!?』
『どうしたの?最近、多いよ。そうやって、ボーッとしてるの。』
『そ、そんな事ないよ!』
『そんな事あるよ。最近、私といる時、気が付くと脱け殻になってるもん。…つまんない?もう飽きちゃった?』
ついに優里本人にまで、核心を突かれるようにまでなってしまった。違うんだ!優里、決して飽きたとか、つまんないとか、そういう事じゃないんだ!ただ、ちょっと考え込んじゃってるだけなんだよ!
『4ヶ月か…。キーちゃん、私なんかの為に凄い頑張ってくれたよね。大変だったでしょ。私の注文に完璧に応え続けるのって…。』
『ゆ、優里?』
『私ね、キーちゃんが凄い無理して私の理想になってくれようとしてるの知ってるよ。もう、疲れたよね?ううん!いーの!そりゃあ、誰だって疲れちゃうよね。こんなワガママクソガキ女。キーちゃんには、十分ありがとうって気持ちでいっぱいだよ。だから、もう嫌になったんならスパッと言ってね。覚悟は、出来てるから。』
『優里、お前それ本気で言ってんのか!?俺は、優里を嫌いになんかならない!確かに、ちょっと疲れたなって思う事もある。でも、だからって俺が優里からの要求を断った事あるか?ないだろ?それは、俺が優里の理想に少しでも近付けるならって、惚れた女に対する当たり前の奉仕だ!優里は、俺にホント、キーちゃんて優しいよねって言うけど、俺からしてみれば、優しくするなんて人として当たり前の行為じゃねーか!俺の中に優しさなんて言葉なんかない!だって当たり前なんだから!』
『キーちゃん…。』
『優里、俺にとって優里は、理想の彼女で、優里にとって俺は、理想の彼氏だ。この関係は、まだ終わりはしない。絶対に、終わりはしないから!』
『キーちゃん…。ありがとう。私は、とっくにキーちゃんの私への愛情なんか冷めちゃってると思ってた。元カレも別れる間際は、いつも脱け殻になってたから、キーちゃんとも、もう終わりだって覚悟してた。でも、ごめんね!キーちゃんは違った!全然、違った!やっぱりキーちゃんは、私の理想の彼氏だよ!』
『優里…。あ!大丈夫か?優里の理想の彼氏は、デート中にボーッとなんかしないんだろ?』
『キーちゃん…。そ、そうよ!もちろん!ちょっとキーちゃん!私の理想の彼氏は、脱け殻になんかならないんだからね!気を付けてちょうだい!』
『はい、お客様。ご注文は以上で宜しかったでしょうか?』
『ええ、結構よ!早く届けてちょうだいね!』
『かしこまりました、お客様。誠心誠意をもって、仕上げて参りますので今しばらくお待ちを。』
『あははは!キーちゃん!もう届いてます!』
こりゃ俺達、結婚しちゃうね!だってもう、そんな雰囲気じゃない?この関門を乗り越えたら、これ以上の難所はないでしょう。あんの?まだ?ウソ、ある?そりゃあね、人生いつどこで何が起こるかなんて分からないけどさ、ここまで来たら優里の処女を奪ってやる!それが目的?イコール結婚だ?いーじゃんか!本望だよ!下心満載なのは、恋してる証拠だ!理想の彼女は、理想の女房だ!決めた!俺は、決めたぞ優里にプロポーズする!
俺の決心は、もう揺るぎはしない!俺には、優里しかいないんだ!優里にだって、俺しかいないはずだ!色んなオーダーに応えて喜んで理想の旦那様になってやるともさ!
12月20日―。
優里と付き合って半年が過ぎた。そう今日は、優里の22回目の誕生日。俺は、人生初のサプライズを企てた。名付けて、バレバレだけど頑張りました!ドッキリバースデー&プロポーズ大作戦だ!ベタなタイトルなんてどうでも良い!肝心なのは、気持ちだ!用意は良いか!?覚悟は決めたか!?
いざ、勝負!
3ヶ月前までは、高らかに理想の彼女と周りの奴らにも謳っていた。もちろん、今でも優里は、理想は理想で、その路線からズレた訳ではない。ただ、あの時の優里の言葉が現実となって止まらないのだ。例の元カレが優里をフった理由が、悲しいかな、分かり始めてきてしまった。
『おい清彦ぉ。お前、最近大丈夫か?えらい、やつれたろう?』
『なんだ、拓か…。』
『なんだとは、何だよ!なんだとは!こっちは心配してやってんのによ!』
『ああ、悪い。…優里の事でちょっとな…。』
『なに?優里ちゃんと上手くいってねーのか?』
『うーん、そういう訳じゃないんだけど、ちょっとさ…。』
『だから、ちょっと何なんだよ!』
『最近、優里が俺に対する要求が凄いんだよ。』
『要求?』
『ああ。優里って実は、ものすげぇ理想が高い女でさ、俺を100%理想の彼氏にするべく、これはこうしてだとか、そういう注文が止まらないんだよ。』
『そういう事か…。』
『まぁ俺も、優里と別れたくねーし、その要求全部に応えて行くつもりだけど、さすがにちょっと疲れて来ちゃってな…。』
『ってか、毎日?』
『いや、さすがに毎日は会えないからな。大体、週1、2かな。ただ、会う度に何かしら要求してくるからな。ま、小っちゃい事だけど。』
『例えば、何よ?』
『そうだなぁ。例えば、服装だとか、髪型だとか、とりあえず、ホストっぽいチャラチャラした感じは嫌いで、かといって、坊主とか短過ぎて、イカチイのも嫌いで、ちょうど良い"間"のとこを雑誌持って来て、髪型も服装もハッキリこれにしてって注文して来るんだよ。』
『それで最近、お前なんかイメージ変わったんだな。でも、見た目的な事だけなのか?』
『いや、他にもあるさ。歩く時は、必ず私の右側に居てって。んで腕を組むんじゃなくて手を繋ぎたいんだと。』
『そんなん別にいいじゃんか!』
『ただ、それも!必ず俺から手を繋ぎに行かないとダメなんだと!』
『え?』
『自分から甘えた感じで手を繋ぎに行くのが、なんか嫌だからって、ただ、それだけの理由で。"なんか嫌だから"ってのが結構、多くてよ。ただ、全部が全部、まだ許せる範疇だから怒る訳にも行かずで、従わずにはいられないんだよな。』
『清彦さぁ、お前完全に遊ばれてんな。』
『いや、遊ばれてはねーさ。それは、分かる。だって間違いなく優里も俺の事が好きだし。他に男がいる訳でもないし。』
『だってよぉ、…お前、相変わらず、ヤらせてもらってないんだろ?』
『それは、だって仕方ねーじゃんか!優里が、そういうポリシーなんだから!それは、尊重してやんないとさ…。』
『…って言ったってよぉ。俺だったら無理だね、そんな子。せっかく付き合ってんのにヤれないなんて!俺は絶対にノー!いくら好きでも、将来結婚する保障もないのにセックス無しで関係を維持していくのは絶対に無理!』
『やっぱり、そうだよなぁ…。』
『なんだ。お前も、そう思ってんじゃん。だったら、あんま傷が深くなる前に別れた方がいーんじゃねーのか?優里ちゃんが長い事、男がいなかった理由が納得するわ。3ヶ月は、経ったんだろ?ほら、前の奴よりは越えたじゃん。それで十分だろ。』
『拓…。お前が、そんな事言ってくれんなよ!応援してくれんじゃなかったのかよ!』
『清彦…。』
『俺の心が折れそうな時に、お前がトドメを刺してどうすんだよ!こういう時こそ励ましてくれんじゃねーのかよ!…クソッ!俺だって、ヤりてーよ!ヤりてーけど、ピンサロすら我慢してセンズリだけで発散してんだ!友達だったら…、男だったら、そんくらい分かんだろ!』
『だから言ってんだよ!』
『あ?』
俺は、驚いた!あの拓が、胸ぐらを掴んで来たのだ。小刻みに震えながら熱くなった両手で、更に力を込めて俺の目を睨み付けながら拓は、俺に言い放った。
『もう苦しいんだろ?いつも冷静なお前が、そんなに取り乱すくらいに追い込まれてんだろ?めちゃめちゃ無理してる証拠じゃねーかよ!ここで俺が励ますって事は、お前にもっともっと無理して苦しめって言ってんのと同じじゃねーか!友達だったら…、男だったら止めるだろ!そんな苛酷な環境に大事な奴をいつまでも置いときたくなんかねーんだよ!』
『拓…。』
始めての喧嘩だった。拓とは、お互いが19の時、フラフラした人生をやり直そうと偶然、同じ時期に今の職場で働きだした、もはや、ただの同僚という言葉では言い尽くせない、完全に親友だ。その拓とは、今まで殴り合いはもちろん、言い争いになる事さえ無かった。それなのに、優里の事で、俺の理想と謳った優里の事で、こんな場面を生み出してしまったんだ。確かに、これをきっかけに拓との関係がどうにかなってしまうとは考えられないが、拓と喧嘩するはめにまで陥ってしまった優里との現状が、ただ、ひたすらに悲しかった。それは、優里との別れを現実のものにする後押しの何物でもなかった。
夏の終わり、10年以上勤めてきた誇りある職場での拓との初めての喧嘩は、静かに寒い季節の訪れを告げていた。
10月―。
兼ねてからの計画通りに、優里の大学生活の夏休みをエンジョイさせた俺は、その満足感の一方で、あの日の拓との喧嘩が物語る優里との"距離"を密かに知らしめ始めていた。
付き合って間もなく4ヶ月に入ろうとしている。結局、泊まりがけで行った海でも抱き合って眠る以上の"進展"は皆無だった。確かに期待はしていた。とは言え、優里だってまだ学生のうら若き乙女。最後の夏休み、白く光る砂浜に青い海、加えてオーシャンビューのホテル、これ以上ないムード満点の夜。全てを許してくれると思うじゃない。
『おっ!珍しい!優里、今日は積極的だな!優里の方から、そんな熱ーいチュウが来るなんて!』
『そりゃまぁ、私だって、テンション上がっちゃうよ!こんなシチュエーションに居たらさ。』
『という事はだ!優里ちゃん!ついに、この時が来たんだね!お父さん嬉しいよ!よーし、優しくしてあげるから、ゆっくりその身を俺に預けてごら…。』
『キーちゃん。私ね、ハネムーンベイビーを作るのが夢なんだ!』
『は?』
『もちろん!イコール、その時がロストヴァージンね!結婚して、直ぐハネムーンに行って、ロストヴァージンでご懐妊!ああ!なんて素敵なんでしょう!ロミオ、あなたは、やっぱりロミオだわ!』
『おお、素晴らしい夢だよジュリエット…。』
『ちょっとキーちゃん!お笑い好きがそれじゃ廃るわよ。ちゃんとノっかってよ!』
『へいへい…。すいませんでした、優里エット。ロミオは、心が折れたので、お先に永遠の眠りにつかせて頂きます。』
『えーもう、寝ちゃうの?夜は、まだまだこれからなのにん!キヨミオ!』
『む、無理があるよ。優里エット…。』
…とまぁ、こんな具合だ。俺の満開の下心は、見事に躱され、あっさりと夏の終わりを迎えたのだ。もちろん、優里には何の悪気もない。俺も、それを承知の上で共にしているのだから。俺は、確かに拓には、さも迷惑そうに優里からの要求に異議を唱えた。でも、実は優里は、ホントに何も悪気を感じさせていないのだ。だから、困ると言えるのかもしれないのだが、誰にも渡したくないという独占欲は、もはや俺に麻酔を打っているようなもので、人には零せる、受けた傷の結晶であるはずの愚痴も、優里の笑顔の前では、その痛みすら感じない。
もしかして俺の理想って、惚れた女の言いなりになる事だったのか?俺自身が、理想になるって事だったのか?待てよ?俺は、Sだぞ?え!?実は、Mなのか?違う!そういう事じゃないだろ!
あーもう、優里。頭がどうにかなっちゃいそうだよ…。
『…キーちゃん!ねぇってば!キーちゃん!聞いてるの?』
『え!?』
『どうしたの?最近、多いよ。そうやって、ボーッとしてるの。』
『そ、そんな事ないよ!』
『そんな事あるよ。最近、私といる時、気が付くと脱け殻になってるもん。…つまんない?もう飽きちゃった?』
ついに優里本人にまで、核心を突かれるようにまでなってしまった。違うんだ!優里、決して飽きたとか、つまんないとか、そういう事じゃないんだ!ただ、ちょっと考え込んじゃってるだけなんだよ!
『4ヶ月か…。キーちゃん、私なんかの為に凄い頑張ってくれたよね。大変だったでしょ。私の注文に完璧に応え続けるのって…。』
『ゆ、優里?』
『私ね、キーちゃんが凄い無理して私の理想になってくれようとしてるの知ってるよ。もう、疲れたよね?ううん!いーの!そりゃあ、誰だって疲れちゃうよね。こんなワガママクソガキ女。キーちゃんには、十分ありがとうって気持ちでいっぱいだよ。だから、もう嫌になったんならスパッと言ってね。覚悟は、出来てるから。』
『優里、お前それ本気で言ってんのか!?俺は、優里を嫌いになんかならない!確かに、ちょっと疲れたなって思う事もある。でも、だからって俺が優里からの要求を断った事あるか?ないだろ?それは、俺が優里の理想に少しでも近付けるならって、惚れた女に対する当たり前の奉仕だ!優里は、俺にホント、キーちゃんて優しいよねって言うけど、俺からしてみれば、優しくするなんて人として当たり前の行為じゃねーか!俺の中に優しさなんて言葉なんかない!だって当たり前なんだから!』
『キーちゃん…。』
『優里、俺にとって優里は、理想の彼女で、優里にとって俺は、理想の彼氏だ。この関係は、まだ終わりはしない。絶対に、終わりはしないから!』
『キーちゃん…。ありがとう。私は、とっくにキーちゃんの私への愛情なんか冷めちゃってると思ってた。元カレも別れる間際は、いつも脱け殻になってたから、キーちゃんとも、もう終わりだって覚悟してた。でも、ごめんね!キーちゃんは違った!全然、違った!やっぱりキーちゃんは、私の理想の彼氏だよ!』
『優里…。あ!大丈夫か?優里の理想の彼氏は、デート中にボーッとなんかしないんだろ?』
『キーちゃん…。そ、そうよ!もちろん!ちょっとキーちゃん!私の理想の彼氏は、脱け殻になんかならないんだからね!気を付けてちょうだい!』
『はい、お客様。ご注文は以上で宜しかったでしょうか?』
『ええ、結構よ!早く届けてちょうだいね!』
『かしこまりました、お客様。誠心誠意をもって、仕上げて参りますので今しばらくお待ちを。』
『あははは!キーちゃん!もう届いてます!』
こりゃ俺達、結婚しちゃうね!だってもう、そんな雰囲気じゃない?この関門を乗り越えたら、これ以上の難所はないでしょう。あんの?まだ?ウソ、ある?そりゃあね、人生いつどこで何が起こるかなんて分からないけどさ、ここまで来たら優里の処女を奪ってやる!それが目的?イコール結婚だ?いーじゃんか!本望だよ!下心満載なのは、恋してる証拠だ!理想の彼女は、理想の女房だ!決めた!俺は、決めたぞ優里にプロポーズする!
俺の決心は、もう揺るぎはしない!俺には、優里しかいないんだ!優里にだって、俺しかいないはずだ!色んなオーダーに応えて喜んで理想の旦那様になってやるともさ!
12月20日―。
優里と付き合って半年が過ぎた。そう今日は、優里の22回目の誕生日。俺は、人生初のサプライズを企てた。名付けて、バレバレだけど頑張りました!ドッキリバースデー&プロポーズ大作戦だ!ベタなタイトルなんてどうでも良い!肝心なのは、気持ちだ!用意は良いか!?覚悟は決めたか!?
いざ、勝負!
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