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ー第六章ー
小泉佑香
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念願だった教師になって五年。私は、低学年の子供達を受け持つ事が多かったから余計に、生徒達の屈託のない笑顔がたまらなく愛おしく思える。聞き分けの良い子も悪い子も、私には、全てが磨けば光る原石。可能性の塊。私は、その人生の一瞬にでも、触れれる事に誇りを感じる。
私には、両親がいない。小学生の時に事故で亡くした。以来、祖父母に引き取られた私は、唯一の兄弟である四つ離れた弟の面倒をみる事に毎日のほとんどを費やした。今、思えば、その頃から教師という道は、決まっていたのかもしれない。まだ、色がついていない子供達の成長に間近で触れ、様々な色に染まって行く瞬間が見れる。誰に分かって貰えなくても構わない。私には、それが、この上ない幸せだ。
『どうだい?佑香。考えてくれたかい?』
『うん…。お婆ちゃん、ごめんね。やっぱり、私はまだ、そんな気にはなれないや。』
『そうかい…。良い人なんだけどね。佑香、気持ちは分かるけど、もうあまり深く考えるのは、およしよ。佑香の為にならないよ。もう少しだけ、待つから気が変わったから言っておくれ。』
『お婆ちゃん…。うん。ごめんね、ありがとう…。』
私は今年、二十八になる。いわゆる、アラサーってやつだ。この歳になっても、彼氏もいない事を育ての親である、お婆ちゃんは、しつこく気にかけて来る。気持ちは分かる。両親を早くに亡くした私には、早く人並みに結婚して、子供を産んで、幸せな家庭を築いて欲しいのだ。育ての親なりの責任をちゃんと果たしたいのだろう。二年前に初めて、お見合いの話を持って来て今回が、もう四回目になる。その度に私は、申し訳なく思いながらも断りをいれる。もちろん、ちゃんと理由がある。まだ、そんな気になれないからだ。
それは、六年前ー。
『あれ?佑香、今日は、サークル行かないの?』
『うん、ごめんね。今日ちょっと、お婆ちゃんの具合が悪くてさ、家の事、色々やんなきゃいけないから。先輩に、言っといてもらっても良い?』
『うん、分かった。…佑香、大変だよね。』
『何が?』
『私には、無理だな。だって、小学生の時から家の事やったり、弟の面倒みたりしてるんでしょう?その中で、ちゃんと大学入って、単位も落とさずに…。凄いよ。尊敬する。』
『いやいや、そんな事ないから。それが私には、当たり前の事だから、別に、凄い事やってるなんて感覚なんか無いよ。ホントに!だから気にしないでよ。あ!じゃあ行くね!ごめんね!バイバーイ!』
『うん、じゃあね!』
大学生の私は、日々、学校と家事に追われ、確かにフツーの女子大生よりかは、忙しない毎日を送っていたのかもしれない。教職を志していた私には、いくら生活が大変でも、どうしても大学まで行かなきゃいけない理由があった。
『悪いね、佑香。今日は、夕飯の支度までさせて。』
『何言ってるのよ、お婆ちゃん!気にしないで!具合悪いんだから、仕方ないじゃない。ゆっくり休んでて。』
『ほら!純平!テーブル片付けて!もう、ご飯出来るよ!』
『はいよ!』
『はい!お皿出して!もう、ご飯よそって良いよ!』
『はいはい!』
高校生の純平も、素っ気ない素振りを見せながらも文句を言わずに手伝いをし、家庭の状況を理解し、本当は、やりたかったはずであろう部活もやらずにバイトに勤しみ、僅かながらの給料を家計の足しにしてくれていた。両親のいない家庭は、だからこその当然の助け合いのもとに、他人が抱く同情的な大変さを払拭していたのかもしれない。
夏ー。
私も純平も夏休みの真っ最中。いつもの忙しない毎日からは確実に解放され、まだ子供である部分を前面に出して過ごしていた。
その日は、久しぶりに、日付が変わるほど夢中になって友達と遊んでいた。
『わぁ!いけない!もう、こんな時間だ!帰らなきゃ!』
『あれ、ホント!でも、もう電車ないよ。たまには、朝まで良いんじゃない?ねぇ?』
『そうだよ!たまには、ねぇ?佑香!』
『うーん、でも私行くね。ごめん!こっからなら歩いても帰れるから。』
『そっか、分かった。佑香、気を付けてね!』
みんな、もちろん私の事情を知っている。だから、私を気遣ってくれる言葉は胸に染みる。私は、そんな優しさを振り切って深夜の世田谷を歩いて家路についた。
人気の無い静かな深夜の住宅街。東京と言えど住宅街は昼間の喧騒が、まるで嘘みたいに静かになる。途中、ふと建て物が消え、不自然にも感じる広い公園や空き地が覗く道がある。そこが深夜、人っこ一人、歩いてもいない状況だったら、それは確かに彼にとって、格好の場所だったのかもしれない。
それは突然、訪れた。
『お姉さん、一人?』
『え?』
背後から忍び寄る若い男の声だった。
『ウッ!んー!んー!』
私は、口を塞がれ、そのまま車の中に押し込まれた。
『んー!んー!』
『ははは!嫌がれ!嫌がれ!』
目に飛び込んで来たのは、目出し帽を被った男。その声で、まだ若い男というのは直ぐに分かった。私は、必死に抵抗した。必死に…。でも、成す術なくとは、まさにこの事かの様に私は、力尽きた…。
『ははは!良かったよ!お姉さん、ごめんね!ありがとう!』
男は終始、笑っていた。泣き叫ぶ私を愉しむ様に。男は、事を終えると、そのまま車を走らせ、それも計画していたのか、少し離れた真っ暗な公園の前に、また車を止めた。そして、再び後部座席で放心状態になっている私に近寄って来た。
『な、何!?今度は、何!?何するの!?もう、やめて!お願い!お願いだから!』
『もう、何もしないよ。ただ、ちょっと黙っててね。』
私は、ガムテープで口を塞がれ、そのままうつ伏せにされると、両手両足もガムテープでぐるぐる巻きに縛られた。
『んー!んー!』
『大丈夫。殺したりは、しないから。』
男は、そう言うと、私の下着を着け直し、肌蹴た服もきちんと直した。そして、私を抱き上げると公園のトイレへと運び、壁際に下ろすと溢れていた涙を拭いた。
『ごめんね。夜が明ける頃には、誰か見付けてくれるから。それまでは、我慢して。』
私は、少し呆気に取られていた。この人、根は絶対、優しい人なんだ。なのに、何でこんな事するのよ…。私を置いて、その場を去る男の後ろ姿を見て私は、一度は拭われた事を忘れる様に、また涙を零した。
私が発見されたのは、そのまま迎えた早朝の事。直ぐに、病院に搬送されると、起こった全てを話し、その後、全国を賑わす事になる連続強姦魔の始りの事件となった。私を含め、次の被害者の方も、その次の被害者の方も、ありのまま起こった全てを話したはずなのに、犯人の男は捕まる事はなかった。
私は、あの男の異様な笑い声が耳から離れない。六年が経った今、それは、トラウマとなり私は、若い男に近付く事さえも避けていた。
『佑香、そろそろ考えても良いんじゃないかい?あれから大分、時間も経ったし、いつまでも塞いでても仕方ないよ。』
『お婆ちゃん…。』
『お見合いの話を頂いてるんだよ。これを機に、頑張ってみないかい?あの事を忘れる良いきっかけになるかもしれないよ。』
『うん…。ありがとう、お婆ちゃん。でも、ごめんね、まだ、ちょっと時間が欲しい…。』
私は、教師となり子供達の前に立つ今、その指標となり、見本となる様な凛とした姿を見せなければならない。例え、そんな忌々しい過去が有ろうと純粋な目をして教えを請う子供達には関係ない。
『…先生は?そういう人いないの?』
『うん…。先生もね、実は、ずっと一人なの。今は好きな人もいないし、もう二十七歳だけど結婚も出来そうにないなぁ。そういう意味じゃ先生は、まだ幸せじゃないのかもね。』
『先生も僕と一緒なんだね。じゃあ、このまま、ずっと一人だったら僕が結婚してあげるよ。』
『凛太郎君…。ありがとう。じゃあ、その時は、お言葉に甘えてお願いします。』
『うん!幸せになろうね!』
凛太郎君のこの言葉は、正直、私の胸に痛いほど染みた。いつか…。いつか、私も愛する人に出逢って、結婚する時が来るだろう。でも、私は、あの事件のことを話すつもりはない。私は、もう無かった事にしたい。結局、犯人も捕まらないまま、恐らく、この事件は、人々の記憶から忘れ去られるだろう。だったら、当事者の私自身も、もう忘れてしまいたい。
この過去は、話した所で誰も得をしないの。もちろん、同情もいらない。このトラウマは、いつか必ず消えるはず。そう、それは愛する人と出逢えた時。その時に、この過去は邪魔なだけなの。心の騒めきを呼び、情を促す悪魔…。
そんな事実を知っても、誰も得しない。だから、永遠の秘密。こんなこと誰にも言わない。言える訳がない。知らない方が、幸せになれるの…。
私には、両親がいない。小学生の時に事故で亡くした。以来、祖父母に引き取られた私は、唯一の兄弟である四つ離れた弟の面倒をみる事に毎日のほとんどを費やした。今、思えば、その頃から教師という道は、決まっていたのかもしれない。まだ、色がついていない子供達の成長に間近で触れ、様々な色に染まって行く瞬間が見れる。誰に分かって貰えなくても構わない。私には、それが、この上ない幸せだ。
『どうだい?佑香。考えてくれたかい?』
『うん…。お婆ちゃん、ごめんね。やっぱり、私はまだ、そんな気にはなれないや。』
『そうかい…。良い人なんだけどね。佑香、気持ちは分かるけど、もうあまり深く考えるのは、およしよ。佑香の為にならないよ。もう少しだけ、待つから気が変わったから言っておくれ。』
『お婆ちゃん…。うん。ごめんね、ありがとう…。』
私は今年、二十八になる。いわゆる、アラサーってやつだ。この歳になっても、彼氏もいない事を育ての親である、お婆ちゃんは、しつこく気にかけて来る。気持ちは分かる。両親を早くに亡くした私には、早く人並みに結婚して、子供を産んで、幸せな家庭を築いて欲しいのだ。育ての親なりの責任をちゃんと果たしたいのだろう。二年前に初めて、お見合いの話を持って来て今回が、もう四回目になる。その度に私は、申し訳なく思いながらも断りをいれる。もちろん、ちゃんと理由がある。まだ、そんな気になれないからだ。
それは、六年前ー。
『あれ?佑香、今日は、サークル行かないの?』
『うん、ごめんね。今日ちょっと、お婆ちゃんの具合が悪くてさ、家の事、色々やんなきゃいけないから。先輩に、言っといてもらっても良い?』
『うん、分かった。…佑香、大変だよね。』
『何が?』
『私には、無理だな。だって、小学生の時から家の事やったり、弟の面倒みたりしてるんでしょう?その中で、ちゃんと大学入って、単位も落とさずに…。凄いよ。尊敬する。』
『いやいや、そんな事ないから。それが私には、当たり前の事だから、別に、凄い事やってるなんて感覚なんか無いよ。ホントに!だから気にしないでよ。あ!じゃあ行くね!ごめんね!バイバーイ!』
『うん、じゃあね!』
大学生の私は、日々、学校と家事に追われ、確かにフツーの女子大生よりかは、忙しない毎日を送っていたのかもしれない。教職を志していた私には、いくら生活が大変でも、どうしても大学まで行かなきゃいけない理由があった。
『悪いね、佑香。今日は、夕飯の支度までさせて。』
『何言ってるのよ、お婆ちゃん!気にしないで!具合悪いんだから、仕方ないじゃない。ゆっくり休んでて。』
『ほら!純平!テーブル片付けて!もう、ご飯出来るよ!』
『はいよ!』
『はい!お皿出して!もう、ご飯よそって良いよ!』
『はいはい!』
高校生の純平も、素っ気ない素振りを見せながらも文句を言わずに手伝いをし、家庭の状況を理解し、本当は、やりたかったはずであろう部活もやらずにバイトに勤しみ、僅かながらの給料を家計の足しにしてくれていた。両親のいない家庭は、だからこその当然の助け合いのもとに、他人が抱く同情的な大変さを払拭していたのかもしれない。
夏ー。
私も純平も夏休みの真っ最中。いつもの忙しない毎日からは確実に解放され、まだ子供である部分を前面に出して過ごしていた。
その日は、久しぶりに、日付が変わるほど夢中になって友達と遊んでいた。
『わぁ!いけない!もう、こんな時間だ!帰らなきゃ!』
『あれ、ホント!でも、もう電車ないよ。たまには、朝まで良いんじゃない?ねぇ?』
『そうだよ!たまには、ねぇ?佑香!』
『うーん、でも私行くね。ごめん!こっからなら歩いても帰れるから。』
『そっか、分かった。佑香、気を付けてね!』
みんな、もちろん私の事情を知っている。だから、私を気遣ってくれる言葉は胸に染みる。私は、そんな優しさを振り切って深夜の世田谷を歩いて家路についた。
人気の無い静かな深夜の住宅街。東京と言えど住宅街は昼間の喧騒が、まるで嘘みたいに静かになる。途中、ふと建て物が消え、不自然にも感じる広い公園や空き地が覗く道がある。そこが深夜、人っこ一人、歩いてもいない状況だったら、それは確かに彼にとって、格好の場所だったのかもしれない。
それは突然、訪れた。
『お姉さん、一人?』
『え?』
背後から忍び寄る若い男の声だった。
『ウッ!んー!んー!』
私は、口を塞がれ、そのまま車の中に押し込まれた。
『んー!んー!』
『ははは!嫌がれ!嫌がれ!』
目に飛び込んで来たのは、目出し帽を被った男。その声で、まだ若い男というのは直ぐに分かった。私は、必死に抵抗した。必死に…。でも、成す術なくとは、まさにこの事かの様に私は、力尽きた…。
『ははは!良かったよ!お姉さん、ごめんね!ありがとう!』
男は終始、笑っていた。泣き叫ぶ私を愉しむ様に。男は、事を終えると、そのまま車を走らせ、それも計画していたのか、少し離れた真っ暗な公園の前に、また車を止めた。そして、再び後部座席で放心状態になっている私に近寄って来た。
『な、何!?今度は、何!?何するの!?もう、やめて!お願い!お願いだから!』
『もう、何もしないよ。ただ、ちょっと黙っててね。』
私は、ガムテープで口を塞がれ、そのままうつ伏せにされると、両手両足もガムテープでぐるぐる巻きに縛られた。
『んー!んー!』
『大丈夫。殺したりは、しないから。』
男は、そう言うと、私の下着を着け直し、肌蹴た服もきちんと直した。そして、私を抱き上げると公園のトイレへと運び、壁際に下ろすと溢れていた涙を拭いた。
『ごめんね。夜が明ける頃には、誰か見付けてくれるから。それまでは、我慢して。』
私は、少し呆気に取られていた。この人、根は絶対、優しい人なんだ。なのに、何でこんな事するのよ…。私を置いて、その場を去る男の後ろ姿を見て私は、一度は拭われた事を忘れる様に、また涙を零した。
私が発見されたのは、そのまま迎えた早朝の事。直ぐに、病院に搬送されると、起こった全てを話し、その後、全国を賑わす事になる連続強姦魔の始りの事件となった。私を含め、次の被害者の方も、その次の被害者の方も、ありのまま起こった全てを話したはずなのに、犯人の男は捕まる事はなかった。
私は、あの男の異様な笑い声が耳から離れない。六年が経った今、それは、トラウマとなり私は、若い男に近付く事さえも避けていた。
『佑香、そろそろ考えても良いんじゃないかい?あれから大分、時間も経ったし、いつまでも塞いでても仕方ないよ。』
『お婆ちゃん…。』
『お見合いの話を頂いてるんだよ。これを機に、頑張ってみないかい?あの事を忘れる良いきっかけになるかもしれないよ。』
『うん…。ありがとう、お婆ちゃん。でも、ごめんね、まだ、ちょっと時間が欲しい…。』
私は、教師となり子供達の前に立つ今、その指標となり、見本となる様な凛とした姿を見せなければならない。例え、そんな忌々しい過去が有ろうと純粋な目をして教えを請う子供達には関係ない。
『…先生は?そういう人いないの?』
『うん…。先生もね、実は、ずっと一人なの。今は好きな人もいないし、もう二十七歳だけど結婚も出来そうにないなぁ。そういう意味じゃ先生は、まだ幸せじゃないのかもね。』
『先生も僕と一緒なんだね。じゃあ、このまま、ずっと一人だったら僕が結婚してあげるよ。』
『凛太郎君…。ありがとう。じゃあ、その時は、お言葉に甘えてお願いします。』
『うん!幸せになろうね!』
凛太郎君のこの言葉は、正直、私の胸に痛いほど染みた。いつか…。いつか、私も愛する人に出逢って、結婚する時が来るだろう。でも、私は、あの事件のことを話すつもりはない。私は、もう無かった事にしたい。結局、犯人も捕まらないまま、恐らく、この事件は、人々の記憶から忘れ去られるだろう。だったら、当事者の私自身も、もう忘れてしまいたい。
この過去は、話した所で誰も得をしないの。もちろん、同情もいらない。このトラウマは、いつか必ず消えるはず。そう、それは愛する人と出逢えた時。その時に、この過去は邪魔なだけなの。心の騒めきを呼び、情を促す悪魔…。
そんな事実を知っても、誰も得しない。だから、永遠の秘密。こんなこと誰にも言わない。言える訳がない。知らない方が、幸せになれるの…。
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