わたしは何色?

杉本けんいちろう

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わたしは何色?

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春ー。

ねぇ、桜さん。あなたは何色?

『わたしは、見ての通りピンク色よ。キレイでしょ?みんな、わたしを見てウキウキしてるの。それを見てわたしも嬉しくなるの。』

ホントね。キレイな色。何だか、とっても楽しくなる色。羨ましいわ…。

『羨ましい?何で?あなたも、キレイな色してるじゃない。何も羨むことなんてないわ。』

夏ー。

ねぇ、向日葵さん。あなたは何色?

『ぼくは、見ての通りの黄色だよ。あの熱い熱いお日さまに向かって元気に咲くんだ。みんな、ぼくを見ている時、絶対、笑顔になるんだ。ぼくもそれを見て嬉しくなるんだ。』

ホントね。まるでお日さまの光の色。みんなを元気にしてくれる色。羨ましいわ…。

『羨ましい?何で?きみだって、ぼくらを元気にしてくれる色をしてるじゃないか。何も羨むことなんてないよ。』

秋ー。

ねぇ、紅葉さん。あなたは何色?

『わたしは、見ての通りオレンジ色よ。どう?癒やされるでしょ?みんな、わたしを見て心を和ませてるの。時々ね、どこか寂しげにわたしを見ている方もいるけど、時間と共に忘れていくみたい。不思議ね。』

ホントね。不思議な力を秘めた色。心を洗ってくれる不思議な色。でも、とっても美しい不思議な色。羨ましいわ…。

『羨ましい?どうして?わたしからしたら、よっぽどあなたの方が不思議な力を持った色をしてるわ。何も羨むことなんてないわ。』

冬ー。

ねぇ、雪だるまさん。あなたは何色?

『ぼくは、見ての通り真っ白だよ。たくさんの子供たちが、それは楽しそうに作ってくれるんだ。雪は冷たいだろうに、そんなの関係ないよってばかりに白い息を出しながら、笑いながらね。寒いはずの冬なのに、ぼくは何か温かい気持ちになれるんだ。』

ホントね。温かい気持ちになれる色。真っ白なのに、触ったら冷たい真っ白なのに、こんなにもほっこりさせてくれる温かい色。羨ましいわ…。

『羨ましい?何で?ぼくからしたら、よっぽどきみの方が羨ましいよ。ぼくは、この寒い冬の間にしか、いれないからね。きみみたいに一年中、四季を感じることが出来るなんて、それこそ羨ましいよ。』

そんな、わたしが羨ましいだなんて…。だってわたしには、みんなみたいに色がないのよ。

『色?何を言ってるんだい?ちゃんとキレイな色が付いてるじゃないか?みんな、そう言ってなかったかい?』

え…?

『…どうして、わたしがこんなにキレイなピンク色の花を咲かせることが出来るのか、あなたには分からないの?あなたが、キレイな温かい空気を運んで来てくれるからじゃない。わたしは、それをウキウキしながら待ってるのよ。』

『…この夏の暑さは、お日さまだけのせいじゃないよ。きみがそれに匹敵する熱い熱い空気を運んで来てくれるからじゃないか。だから、ぼくも元気に黄色い花を咲かせられるんだよ。ぼくは、きみに元気を貰ってるんだよ。』

『…みんな、わたしを見て心を和ませてくのは、この美しいオレンジ色のおかげ。でも、このオレンジ色にしてくれるのは他の誰でもない、あなたが遠くから澄んだ空気を運んで来てくれるからよ。言ってみれば、わたしの色は、あなたにコントロールされてるの。実は少し嫉妬してるの。でも、それ以上に感謝してる。わたしも、あなたが運んで来てくれる澄んだ空気に癒されてるのよ。』

『…どうだい?みんな、きみのお陰なんだ。春には、みんなをウキウキさせるキレイなピンク色。夏には、みんなを熱くさせる元気な黄色。秋には、みんなを癒やしてくれる不思議な力を持ったオレンジ色。冬には、みんなをほっこりさせる温かい白色。きみは、一年を通して色んな色になれるんだよ。そんなの羨ましいの何物でもない。知ってたかい?桜さんも、向日葵さんも、紅葉さんも、ぼくも、みんな、きみに恋焦がれてるんだ。だから、きみが来てくれるのが待ち遠しいんだ。』

雪だるまさん…。

『ほら、もうすぐ真っ白な冬も終わる時間だ。お別れするのは寂しいけど、そろそろ新しいピンク色の空気を見つけに行く時間じゃないかい?風さん。』

うん!ありがとう、雪だるまさん。また来年、会いに来るからね。真っ白な風になって…。

                                  ー完ー
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