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救出編
幕間-Interludio-
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彼女たちを見送って男はひと段落と云った風に息を吐く。
彼女たちには今後彼の同胞が力を貸すだろう、彼女に資格がないと炎が判断した時炎はこちらに帰還する。
本来の持ち主は神であるスルトなのだ。
それだけは変わらない。
だが、何故あの炎はあんな小娘を主と認めたのだろう。
彼としてはあの小娘にそのような資格があるようには見えなかった。
俗世にまみれた汚い人間、清廉なモノなど神を以てしても限りがある。
だから、彼は小娘が生還して驚いたのだ。
人間に膝を着くのも屈辱的でしかなかった。
少し前にこの地に足を踏み入れた人間は炎を前に恐怖で逃げ出した、あの小娘にはそれがなかったのだろうか。
考えたところで無駄なことだ、彼は神代が終わった後も従順にその使命を果たすだけの精霊なのだ。ただ、帰らざる主の姿を真似てここで神の炎を守り続ける、それだけでいい。
そう息を吐いた彼はそう云えばもう一人の従者が静かなことに疑問を覚えた。
主の命令であれど人間などに従うのは彼のほうが屈辱に感じるであろうことはわかりきっていた。
彼の悔しさの咆哮の一つでも聞けたならば気持ちも落ち着くと云うものなのだが、と彼の元に向かおうとして男は自分の胸に深々と刺さる剣に気付いた。
「は?」
情けない声だったと思う、痛みがじわじわと身体を蝕むように湧いて来る。
この痛みは果たして何だと云うのか、聖霊の身を傷つけるなど神でもなければあり得ない。
だからこそあり得ない、神は死んだ。
神代は終わったのだ。
だからこそ男とドラゴンはこの地で無敵であれた。
うねった蛇のような刃を手で握り引き抜こうとして痛みに悶える。
引き抜きあの炎に身を投じれば炎の聖霊である男ならば回復が出来る。
それでも刃は抜けず、男の身体からぼたぼたと血が抜け出る。
この地を守りに辺り主から与えられた主とうり二つの身体、その誇りが崩れ落ちる。
ダメだと必死に刃を抜こうとして自分の手がずたずたになるのも気にせず男は必至に暴れる。
「意外だった、まだ生きてたんだって」
唐突に男の背後から聞き慣れない声が響いた。
振り返るとそこにはドラゴンの首を持った男がへらへらと立っていた。
自分に傷を付けたこともだが更にあり得ないものを見たと彼は男を見て口から零れる血を抑えもせず叫んだ。
「この破壊神め!」
汚いどの種族とも違う黒水晶の眸。
間違いない、神代を終わらせたあの破壊神だ。
彼は悶えながらも炎に後ずさる。
伝えなければ伝えなければ。
あの破壊神が、神々の恥じがこの時代に帰って来た。
今度は何をするつもりかなどわかったものでもない。
この身体はもうダメだ、だから悔しいが聖霊の身体に戻り世界中の聖霊に伝達する。
「逃げちゃダメじゃないか」
ドラゴンの首をどこかに放り投げ破壊神は彼に近寄る。
恐怖が彼を支配する。
何故今になって、何故この場所に、何故生きている。
様々な問いは言葉にならず破壊神は背後から彼に刺さっていた剣を抜く。
「が、は……」
「この子はボクの愛剣でね、傷口を広げながら敵を切り裂けるんだ」
頼んでもいない紹介をされ彼は振り返る。
これほどまでに出血しても死なないのは聖霊のしぶとさだろうか。
黒水晶は彼を見下ろしている。
破壊神と云えど神は神だ、その重圧に彼は逃げると云う選択肢を見失った。
ただただ恐怖に打ち震え身体が震える。
命乞いをしろ助けを請えそんな頭が動く。
「か、カオスさま」
「うん?」
「どうか、お許しを」
その言葉と同時に彼の首を破壊神が切り落とした。
人間と変わらない血が噴き出すが破壊神は気にしない。
少し汚れてしまったかなと顔に付着した血を拭い、動かなくなった聖霊を燃やす。
白き炎はない、黒い炎だ。
それは魂をも焼き尽くす炎、破壊神の持つ剣に宿る精霊の持つ力。
この聖霊はもう二度と転生も許されない。
「神域なんて、今の時代には似合わないよ」
破壊神はそう笑うとその場を後にした。
彼女たちには今後彼の同胞が力を貸すだろう、彼女に資格がないと炎が判断した時炎はこちらに帰還する。
本来の持ち主は神であるスルトなのだ。
それだけは変わらない。
だが、何故あの炎はあんな小娘を主と認めたのだろう。
彼としてはあの小娘にそのような資格があるようには見えなかった。
俗世にまみれた汚い人間、清廉なモノなど神を以てしても限りがある。
だから、彼は小娘が生還して驚いたのだ。
人間に膝を着くのも屈辱的でしかなかった。
少し前にこの地に足を踏み入れた人間は炎を前に恐怖で逃げ出した、あの小娘にはそれがなかったのだろうか。
考えたところで無駄なことだ、彼は神代が終わった後も従順にその使命を果たすだけの精霊なのだ。ただ、帰らざる主の姿を真似てここで神の炎を守り続ける、それだけでいい。
そう息を吐いた彼はそう云えばもう一人の従者が静かなことに疑問を覚えた。
主の命令であれど人間などに従うのは彼のほうが屈辱に感じるであろうことはわかりきっていた。
彼の悔しさの咆哮の一つでも聞けたならば気持ちも落ち着くと云うものなのだが、と彼の元に向かおうとして男は自分の胸に深々と刺さる剣に気付いた。
「は?」
情けない声だったと思う、痛みがじわじわと身体を蝕むように湧いて来る。
この痛みは果たして何だと云うのか、聖霊の身を傷つけるなど神でもなければあり得ない。
だからこそあり得ない、神は死んだ。
神代は終わったのだ。
だからこそ男とドラゴンはこの地で無敵であれた。
うねった蛇のような刃を手で握り引き抜こうとして痛みに悶える。
引き抜きあの炎に身を投じれば炎の聖霊である男ならば回復が出来る。
それでも刃は抜けず、男の身体からぼたぼたと血が抜け出る。
この地を守りに辺り主から与えられた主とうり二つの身体、その誇りが崩れ落ちる。
ダメだと必死に刃を抜こうとして自分の手がずたずたになるのも気にせず男は必至に暴れる。
「意外だった、まだ生きてたんだって」
唐突に男の背後から聞き慣れない声が響いた。
振り返るとそこにはドラゴンの首を持った男がへらへらと立っていた。
自分に傷を付けたこともだが更にあり得ないものを見たと彼は男を見て口から零れる血を抑えもせず叫んだ。
「この破壊神め!」
汚いどの種族とも違う黒水晶の眸。
間違いない、神代を終わらせたあの破壊神だ。
彼は悶えながらも炎に後ずさる。
伝えなければ伝えなければ。
あの破壊神が、神々の恥じがこの時代に帰って来た。
今度は何をするつもりかなどわかったものでもない。
この身体はもうダメだ、だから悔しいが聖霊の身体に戻り世界中の聖霊に伝達する。
「逃げちゃダメじゃないか」
ドラゴンの首をどこかに放り投げ破壊神は彼に近寄る。
恐怖が彼を支配する。
何故今になって、何故この場所に、何故生きている。
様々な問いは言葉にならず破壊神は背後から彼に刺さっていた剣を抜く。
「が、は……」
「この子はボクの愛剣でね、傷口を広げながら敵を切り裂けるんだ」
頼んでもいない紹介をされ彼は振り返る。
これほどまでに出血しても死なないのは聖霊のしぶとさだろうか。
黒水晶は彼を見下ろしている。
破壊神と云えど神は神だ、その重圧に彼は逃げると云う選択肢を見失った。
ただただ恐怖に打ち震え身体が震える。
命乞いをしろ助けを請えそんな頭が動く。
「か、カオスさま」
「うん?」
「どうか、お許しを」
その言葉と同時に彼の首を破壊神が切り落とした。
人間と変わらない血が噴き出すが破壊神は気にしない。
少し汚れてしまったかなと顔に付着した血を拭い、動かなくなった聖霊を燃やす。
白き炎はない、黒い炎だ。
それは魂をも焼き尽くす炎、破壊神の持つ剣に宿る精霊の持つ力。
この聖霊はもう二度と転生も許されない。
「神域なんて、今の時代には似合わないよ」
破壊神はそう笑うとその場を後にした。
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