勇者様より私ががんばってます

空沙樹

文字の大きさ
1 / 26
メインストーリー

1.プロローグ

しおりを挟む
 私には一つの悩みがある。
 それは…私のパーティーの勇者様と、その仲間が少しお馬鹿だということだ。
 今に始まった事ではないが、正直ここまでだとは思っていなかった。


 魔王城に行く当日、勇者様から書き置きが残っていた。

(女の子を危険にさらすことは出来ない。今までありがとう魔法使いさん   勇者より)

馬鹿すぎる、ここまで進めたのは誰のおかげかわかっていないようだ。

 私は急いで魔王城に行った。
 予想どおり、城の中には目が回るくらい魔物がいた。

「私って人混みに酔うタイプの人間なんですよね」

 とりあえず、棒術で全て薙ぎはらったが、門の前に大きな狼…ええと、なんだっけ。

「我が名はケルベロス! ここから先は通させん」

「それですよ~!ケルベロスでしたね、そういえば」

 魔物の名前って、一回は覚えるけど私はすぐに忘れてしまう。
 まあ、此処に来てやっと、中ボスって感じですかね。

 ケルベロスさんは既に臨戦態勢に入っていた。
 でも、私には聞かないといけないことがある。

「あの~すいません、勇者様ってきませんでした?」

 これを聞かないと、此処に来た意味がない。
 もし居なかったら私としてはすぐに帰らなくてはならない。

「勇者? 来ておらんな」

 来てなかったのかよ、あの勇者様、あの書き置きはなんだったんですか。

「しかし、城門前に3人の旅人が迷い込んでおったな、門兵のギガンテスとサイクロプスにやられておったがのう」

 三人? 魔界に? 絶対勇者様御一行じゃないですか。

「あの、誠に、まっことに申し訳ないのですが、それ勇者一行です」

 あの勇者様、勇者認定されてなかったよ。
 よくよく考えたら、あいつ、勇者のペンダント持ってなかったじゃん。
 王様が勇者のために作ってくれたペンダントを、泣いている女の子にあげたんだったな、そういえば。

「え? あれ、勇者」

「はい」

「ちょっと待って、魔王様に連絡する」

「はい」

 魔物たち驚いちゃってるよ、なんか、取引先への発注間違えたくらいあせってるんだけど。
 ケルベロスさんめっちゃ頭下げてるよ、三つとも頭下げちゃってるよ、絶対、上司(魔王)に怒られちゃってるよ。

「はい、あの弱いのがです。はい、はい、はーいすいません、では…えっ? そこにいるのは誰かって、えーとあの」

 ケルベロスさん困ってるよ、もう可哀想になってきたよ。
 ここは私が、ケルベロスさんのために私の情報をしっかり喋らなくてはいけないようですね。
 
「私は勇者一行の魔法使いをしているものです」

 「あっ、ありがとうございます。魔王様、勇者の仲間の魔法使いだそうです」

 敵にお礼言われちゃったよ、私。
 それにしても、初めのケルベロスの口調、カッコつけてたんだな。

 何はともあれ、その勇者を回収して鍛え直さなくては。

「とりあえず戦え? はい、はい分かりました~、では、あの…我と勝負してもらおう!」

 頑張ってカッコつけたよ、よくめげないな、この三首頭。
 

 ここで言いたいことがもう一つある。
 それは私の力についてだ。

「ウィンドスピア」

「そんな初級魔法、我に…」

 ケルベロスさんは、跡形もなく飛び散った。
 理由は簡単、レベル上限が500の世界で、私のレベルは9999だからだ。
 カンスト越え、バグ、チートというのが相応しいのだろうか。

 ちなみに勇者様のレベルは42です。
 これで皆さんも誰のおかげで勇者様が、旅をできたかわかってくれたと思う。

「よーし! ケルベロスさんの怒られた借りは必ず私が返すぞ、魔王」

 あれ? 私の目標変わってないか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...