勇者様より私ががんばってます

空沙樹

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メインストーリー

2.世界の半分をお前にやろう

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「ここが、魔王のいる部屋ですか」

 これ、私の言うセリフじゃないんじゃないですか。
 なんで、ボッチでしかも、魔法使いが言ってるんですか。

 ぐたぐたしてても仕方ない、よし、行くぞ。

「お前が勇者か?」

「違います」

「そうか、そうかならば、私の仲間にならないか?」

「はっ?」

「仲間になれば世界の半分をお前にやろう」

「言いたいだけじゃねえか!」

 この魔王、勇者に言えなかったから私に言ってきたよ。
 ここにいる奴らって、どんだけめげないんだよ。
 しかもこいつ、絶対ケルベロスさんより面倒くさいよ。

 まあ、禍々しいオーラはしっかり出てるし、魔王の素質もかなりあるように見えるけど。

「今回の勇者の件についてなのですが~」

「ほう、このオーラを見てなお、我に立ち向かってくるか」

 駄目だ、この魔王、人の話聞かないタイプのやつだ。
 いいえ押しても、結局同じ反応してくるタイプの魔王だ。

「我は弱い奴の話は聞かん! さあ、実力を見せろ」

 
 なんでこんなことになってるんでしょうか。
 魔王にソロで挑むとか、無理ゲーですよ。
 なんて言ってみたいですね。

「世界の真理を求めし探求者よ、すべての光を混沌の世界に誘え、歌え!踊れ!出でよ! ホーリーカオスドラゴン」

「誰だワシを呼ぶのは…ってマスターじゃないですか! 驚かせないでくださいよ」

 因みにこいつ、世界が平和になった後現れる裏ボスくらい強いです。
 世界の天災龍の長らしい。

 レベルは勇者様の約7倍です。

 このドラゴンは私が戦った中で、一番強かったと言ってもいいと思う。
 私を前にして、3分立っていられたのは、こいつが初めてだった。
 
「天元龍 カオスホーリードラゴンがなんでこんなところに」

「簡単ですよ、魔王! これが私のペットだからです」

 この龍、わたしは「カホ」って呼んでますが、実は牙がとてもツヤツヤで綺麗なんです。
 聞いてみたところ、彼は洞窟のレアメタルを主食にしているらしいのです。

 初めは、ケルベロスさんみたいに爆発四散してもらおうか迷いましたが、それを聞いた瞬間、捕獲モード突入でした。

「天災龍をペットにする冒険者なんて聞いたことがないぞ! そもそも、人間嫌いの龍が人に従うなど」

「お主は勘違いをしておる。我々は人が嫌いなわけではない、弱い者が嫌いなのだ。マスターは強かった、だから従っただけのことだ」

 カホの奴め、泣ける台詞言ってくれるな。

「で、魔王、そこの棺を三つかえしてください 」

 力を見せればやつは、話を聞くと言った。
 ここまでの力を見せつけられて、話をしないなど相当の愚者だろう。

「我は認めん! わたしより強い者がこの世にいるなど」

 魔王の禍々しいオーラは、彼の中心に集まっていく。

 彼はニヤリと笑うと大声で叫んだ。

「空間魔法 ブラックホール!」

 身体が吸い寄せられていく、これが魔王の本気の一撃らしい。
 これでは私も流石に耐えられない、かもしれない。
 私はブラックホールに吸い込まれてしまった。

「空間魔法 ホワイトホール」

 ブラックホールに入った瞬間、ホワイトホールで元の世界に戻ってくる、ぶっ壊れ性能の私だからこそできる技。

 魔王は少しの間、動きが止まっていた。

「ウィンドブレイク!」

「そんな中級の魔法、我に!」

 魔王の右腕は吹き飛んだ。
 まあ、私の本気をそのくらいで耐えたんだから、逆に褒めるべきところだと思う。

 でも、デジャヴだな~。

 それと、出落ちしたカホ、ホントごめん。

「さあ、死ぬか、棺返すかどっちですか」

「嫌だな~! もちろん返すに決まってるじゃないですか。魔界でなんかあったときはいつでも言ってくださいね!」

 魔王がパシリになりたそうに話しかけてきた。

「じゃ、頼みます! 勇者様鍛えてまたきますから」

「はい、了解です」

 ここの奴らって本当にキャラ作るよな。
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