とりあえずのとりあえず

syu-innonne

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かきちらし 3

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ーーーーあー、これか。このくらいなら別にいいか。

オレは彼女が棚に戻したオルゴールの中身のような機械を手に取った。
それは海の中の映像を部屋の中で再生する機械だった。
ーーーー海の中の映像って言っても作り物だろうな。

 オレは近くにあった類似品を眺めながら考えていた。

ーーーーふむ、高級そうなものあるな。でも、あまり高いものがあると流石に怪しまれるか。

オレは何食わぬ顔でその機械を手に取ったまま、会計を済ませた。



「この後、どうかな?かわいい子猫ちゃん」

売店からでたオレの耳につく鬱陶しい男の声。

ーーーー隣のクラスの竹中だ!アイツ!!
スポーツの世界大会でいい成績だしたからか、なんか勘違いしてる。

「お断りします」

ナイフより鋭い言葉を切り返す声。
ーーーーん?この声、どこかで聞いたぞ。

「そんなことを言わないでさ~。ねっ!」

延々と言い寄ってくる竹中。

「だから断るって言ってるでしょ!!」

女の方が怒った。

「わたし、予定あるの!!いい加減にして!!」

冷静に聞こえるが死ぬほど怒っている。
そして、腕に生じる暖かい感覚。

「ねー、シント。この後のレポートなんだけど、聞きたいことあるのよ?いい?」

 心地よい甘い声。そして、耳触れる堪らない吐息。

ーーーーオレ、抱きつかれてます。天下のかわいい優等生サマに。
もっと抱きついてくださいとか言いたくなるくらい愛らしい。
これがノースユーロ式のコミュニケーションだろうが、何だろうが、オレには関係無い。

「あぁ」

オレは何食わぬ顔で返事をする。
オレの方はと言うと抱きついてしまった小柄な優等生サマをどうこうしたい感情を抑えるのに必死である。

「チッ」

竹中は舌打ちをすると逃げるように去った。
ーーーー流石のスポーツバカでも喧嘩する相手を選ぶらしい。



「シント、ごめん。嫌な思いさせちゃった」

しばらくするとそう言って彼女は離れた。

「気にするな」

ーーーーさっきみたいに抱きつかれることなら、こちらからお願いしたいくらい大歓迎だが。

「お詫びにジュース奢るわ」

彼女は自販機のところを指さした。

「いや、ここはオレが出そう。さっきの勇ましさは称賛に値する」

ーーーーいやいや、ここで貰っては男が廃るというものだ。
少し言い包めて出させてもらおう。
オレの方が圧倒的にイイ想いしてるしな!

「そうかしら?まぁ、そこまで言うなら・・・・」

ーーーー彼女はくびをかしげているが、ここは押し切るとしよう。


オレはデバイスを自販機の前にかざした。

「ほら、好きなの選べよ」

「うん。ありがと」

彼女は悩みながら選んでいる。
ーーーー優等生サマ、そこは好きなのを選んでいいんだぜ?
大好きなクリーミィラテ、1番高いからって遠慮するんなよ。

ガタッ

ーーーーチッ。無難どこのオレンジジュースか。
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