とりあえずのとりあえず

syu-innonne

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「それを言ったらわたしだって一緒だ。危うく人を何人も殺しかけたんだからな」

「それは不可抗力です」

ああ言えばこういう。
メルフィーアはカミトの言葉に気にさわったのだろう。
そして、それはカミトも一緒だった。


ーーーー彼女とアイツは同じじゃない。違うんだ。

カミトのその感情を理解したのか、メルフィーアは話を変えた。

「まぁ、いい。クラスメイトたちの頼まれてたのもあってちょっと気になってたからな」

「そういうことですか」

メルフィーアは制服のブレザーに隠していた数枚の色紙をちらつかせた。

「こんなもん、ただのおまじないみたいなもんだろ?」

「だから、国軍の連中はあまり好きじゃないんです」

おそらくカミトは英雄の息子として特別視されるのが嫌なんだろう。
メルフィーアはそれをわかっていたのかある事実を漏らした。

「言っておくがこないだのクッキーの女の子は違うぞ」

「何を言い出すんですか。いきなり」

カミトはドキッとした。

「もちろん、礼は言っているよーだな。感心感心」

メルフィーアはカミトの反応を見て、ウンウンとうなづいた。

「で、わたしにもなにか用事があるのかしら?」

「さえずりさーん!待ってました!」

さえずりと呼ばれたフクロウは羽を羽ばたかせ、宙を舞い、メルフィーアの肩に止まる。

「どうやらわたしにしか答えられない質問のようね」

「まぁ、もう一人は答えてくれそうにないですから」

「今回は無料で答えてあげる。こないだのお礼もかねてね」

「簡単な質問ですよ」

メルフィーアは自分の聞いた話を繋げた結果を知るべく口を開いた。

「カミトのお母さんなんですけど」

「はいはい?」

「名前はツクヨミっていうんですか?」

「ぶーっ!!」

メルフィーアのささやかな疑問を聞いてカミトは盛大に噴いた。

「違いますよ!」

全力の否定がカミトによって提示された。

「えーとね。ツクヨミ様はわたしの仕事の上司で
 カミトのお母さんはホームステイ先のご主人さん。だからね、全く違うのよ」

「あーそういうことか」

「わたし自身はここら辺の住民じゃないから
 カミトのお母さんみたいな人に
 面倒見てもらっているのよ」

「なるほど」

メルフィーアは手をポンと叩いた。

「あの、メルフィーアさん。オレの疑問に答えてくれます?」

「なんだ?言ってみろ」

あっさり胸張って言葉を返されたら言いにくくなる。
カミトはずっと思っていたことを口にした。

「あの、ロボットはなんなんですか?」

「クリムゾンドラゴンだ」

メルフィーアはあっさり応えた。
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