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ユサ:若返りトリップ
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神様に祈り続けて早6年。私はようやく念願の異世界トリップなるものを果たしました。ありがとう神様。アンタならやってくれるって信じてた。
「お嬢ちゃん、いったいどうしてこんなとこにいるんだい?」
「親はどうした」
「もしかして誘拐かぁ?」
気がつけば洞窟の中にいて、お約束みたいに体は縮んでた。目線の高さとか手足のサイズから推定して、たぶん小学生。
で、とりあえず洞窟から出ようとワクワクしながら出口に向かったら、おっさんに囲まれたってわけだ。
「こりゃどう見ても平民じゃねーだろ」
「見た感じ近くに大人はいねぇな」
「誘拐じゃねえか?」
「ここらに賊が出たって話もないし……」
「旅の途中で襲われたって感じでもねぇしな」
「やっぱり誘拐かぁ?」
ぽけーっとおっさん達を見上げていたらアホの子だと思われたのか、私をよそに険しい顔で始まった会議。仕方がないから私は今のうちにおっさん達を観察することにしよう。
先ずは1人目。推定30代前半。髪は蜂蜜色で瞳はモスグリーン。無造作な髪型と髭で誤魔化そうとしてるけど童顔だ。ちゃんとすればイケメンになりうる可能性をもった童顔だ。
2人目のおっさんは、推定30代後半。髪は蘇芳で瞳も蘇芳。頼れる兄貴オーラをバンバンだしてるワイルド系のおっさんだ。
3人目はたぶんこの中で一番おっさん。推定40代前半。髪は濃紺で瞳はグレー。大人の色気をほんのり醸し出した見た目ちょい悪オヤジなんだけど、こいつはアホだと思われる。自覚のないアホ。絶対そう。さっきからやけに誘拐を押してくるのもこのおっさんだし。
最後4人目は、ずばり29歳。なんというか、まだ20代ですぅっていう意味わかんないプライドを持ってた従兄と同じ臭いがするから絶対そう。髪は黒で瞳は焦茶。ずっと無言でクールキャラを気取ってやがる。
4人ともたぶん結構背が高いと思う。自分がどれくらい縮んじゃったのかわからないから何とも言えないけど、日本人の成人男性の平均よりは高いんじゃないかな。
体もガッチリしてるし。戦うための筋肉ですって感じ?
「俺の名前はキーアっていうんだ。お嬢ちゃんの名前を教えてくれるかい?」
赤いおっさんが、しゃがみ込んで目線を合わせてから聞いてきた。この優しいしゃべり方といい行動といい、赤いおっさんは子どもの扱いに慣れてるな。
なぁんて考えながら名前を言おうとしたら、大変なことが発覚してしまった。
「……、…………っ?」
声が、出ない、だと……!
どんなに声を出そうとしても、喉から出るのはヒューヒューといった空気の音だけ。高校生の時に“辛い過去を抱えた美少女”に憧れて、声が出ない設定を盛り込もうとしたことがあったけど、まさか本当に声が出なくなるなんて……。
想像していたよりも辛い状況に、視界がぼやける。中身を知ろうとしないバカな思い込みで、声出なくなるとかカッケー憧れるーとか思ってごめんなさい。
「声が出ねぇのか?」
「大丈夫。少し落ち着こうか」
喉を押さえてパニクる私に、赤いおっさんと黄色いおっさんが優しく言ってくれるけど、落ち着くとか無理。ポロポロと零れてくる涙に、青いおっさんがギョっとする。
黄色いおっさんは困ってるし、青いおっさんは慌てふためいてるし。黒いおっさんは目を丸くして固まってるし。私もパニックで涙は止まらないしでてんやわんやになっていると、突然グンと視界が揺れた。
どうやら赤いおっさんが私を抱き上げたみたいだ。おっさんの腕に座る形で抱っこされ、目線がほぼ一緒になる。
「ここにいてもどうしようもねーし、とりあえず町に戻るぞ。……お嬢ちゃん、俺たちがどうにかするから、もう泣くな。な?」
「…………」
「よし、おりこうだ」
赤い瞳に見つめられて思わずこくりと頷けば、ニカッと安心するような笑みを向けられて、私はおっさんの肩に顔を埋めた。カッコ良すぎるよおっさん。
で、いつの間にか寝ちゃってたらしく。目が覚めれば見知らぬ場所にいた。
中学の時に泊まった自然の家を思い出させるここは、いったいどこなんだろうか。むくりとベッドから起き上がり、簡素な室内を見渡す。
そして私はあることに気がついた。胸の辺りまで伸びたこの髪の毛。大学デビューでハニーブラウンに染めたはいいものの、染め直すのが面倒で見事プリン頭となったこの髪の毛が。
なんと銀色になってらっしゃる。しかも透き通るような銀色。
「…………!」
や、やべえ。感動で手が震える。これも、トリップ特典……。神様、ありがとー!
ぎゅっと髪の毛を握りしめて感動にうち震えていると、軽い音をたててドアが開いた。
「あら、目が覚めたのね」
柔らかなソプラノに顔を上げれば、女子大生くらいのスラッとした女性がお盆を手に立っていた。薄紫の瞳と目が合う。
どうしよう……。そういえば、どんなキャラでいくか設定考えてなかった。
若返りに、銀髪に、声が出ない。その上洞窟で1人っきりという訳あり要素。ここまで盛り込まれてたら、絶対美少女でしょ。それ以外あり得ない。
さて、どうするか。訳あり美少女でしょ? うーむ。だけどこの世界がどんな感じなのかもまだわからないからなぁ。
とりあえず、……警戒しとこう。ぎゅっとシーツを掴んで、少し怯えたような困惑気味の表情を浮かべる。端から見たら鼻血もんの可愛さに違いない。
「はじめまして、わたしはコピラ。ギルドの職員よ。どこか具合の悪いところはあるかしら?」
「…………」
コピラちゃんの質問に、おずおずといった感じで首を振りながら、心の中で雄叫びをあげる。
よっしゃーー!! 今ギルドって言ったよね? 言ったよね! 聞き間違えとかじゃないよね?! ……やっっっったぁぁぁああ!
嬉しさが押さえきれなくて、小さく体が震える。すると、ベッドサイドにあるテーブルにお盆を置いたコピラちゃんが、ふんわりと微笑んだ。
「大丈夫よ。ここにはあなたを傷つける人はいないわ。……お水だけど、飲めるかしら?」
そう言って差し出されたコップを両手で受けとり、コクコクと喉を潤す。よっぽど喉が渇いていたみたいで、お水をあっという間に飲み干してしまった。
おかわりはいるか、と聞いてくるコピラちゃんに首を横に振り、空のコップを渡す。
「じゃあ、キーアさん達を呼んでくるから、少し待っていてちょうだいね」
コップをテーブルに置いてそう言うと、コピラちゃんは部屋を出ていった。
ふふふ。これは、思ってたよりもラッキーだぞ。
異世界若返りトリップに訳あり美少女設定。ギルドがあって、顔面偏差値も割りと高め。言葉は通じるしたぶんしゃべれる。文字はまだわからないけどこの流れだとどんな文字でも読めそうだ。
やった。やったよ神様。ありがとう。私ここで、最強の冒険者になるね!
それで国1、いや世界1の冒険者になって、いろんな国から引っ張りだこで、だけど私の本当の姿を知る者はいなくて、私は
「よぉ嬢ちゃん」
「気分はどうかな?」
「目が覚めてよかった」
「…………」
「キーアさん達を連れてきたわよ」
ノックも無しにやって来たのは、赤、青、黄、黒のおっさん達。
あー、そういえばいたなぁ。ギルドがあることに興奮しすぎてすっかり……。
「どこか、痛いところはあるか?」
赤いおっさんがベッドの脇にしゃがみ込んで、目線を合わせて聞いてきた。他のおっさんとコピラちゃんは、ドアの近くで待機だ。
あたしはシーツの端をぎゅっと握って、小さく首を横に振った。
「そうか。なら、気分はどうだ? 気持ち悪いかい?」
「…………」
「どこか変なところはあるか? いつもと違うなぁー、とか」
「…………」
赤いおっさんの質問に、全て首を横に振って答える。心配しなくても、あたしは普通に元気だった。むしろテンション上がりすぎてヤバイくらい。だけどまぁ弱々しい演技はとりあえずしとく。
「うん、大丈夫そうだな」
一通りあたしの健康チェックをした赤いおっさんは、満足したのかニカっと笑うとあたしの頭を優しくポンポンと撫でた。
うわっ……。イケメンの頭ポンポンとか、破壊力ヤバすぎるでしょこれ。目を泳がせて羞恥に耐えていれば、生暖かい目でこっちを見てるおっさん達とコピラちゃんと目が合った。から急いで逸らした。
なにこれ恥ずかしすぎる。若返ってて良かったぁ。本来の年齢でこれはムリ。耐えられない。羞恥で死ぬ。
いや、そもそも若返ってなかったらこんな対応されるわけないか。美少女に若返ったからこそのこの対応だよね。美少女ばんざーい!
脳内で万歳三唱していると、赤いおっさんが真剣な様子で口を開いた。
「よし。じゃぁお嬢ちゃん。これから聞くことは、嫌だったら答えなくていい。答えられることだけ、教えてくれ。いいか?」
こりゃいよいよ事情聴取か?と内心ニヤニヤしながらも不安そうな表情でコクりと頷けば、赤いおっさんがあたしを安心させるように、いい子だ、と言ってにかりと笑った。
ぐっはぁ…………! いい子だ、って……。いい子だ、って……! ヤバい。このイケメンは思ったよりも危険だ。危険すぎる。頭ポンポンのみならず、イケボのいい子だ、まで習得してるとは……。この男、できる……!
【未完】
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