ダンジョンコアの始まり

Teruru52

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次の日の朝、ハティは騒がしい鳴き声に目を覚ました。


「ギャギャグァ、グギャギッ!」


「・・・お?またゴブリンか、何か探してるのかな?」


木の上から眺めていると、一匹のゴブリンが何かを探すように茂みを掻き分けたりしながら当たりをウロウロしていた。
しばらくすると探し物は見つからなかったのか、そのゴブリンは去っていった。


「なんだったんだろうな・・・。ん?」


ハティが枝に乗って隠れている木の下からカサカサという音が聞こえて、音の元を見てみると、そこには腹から血を流してぐったりしているホーンラビットがいた。


「こいつを狩り損ねて探してたのか・・・。ラッキーだな、可愛そうだし、早く楽にしてあげよう。」


ハティは木をゆっくり降りると、瀕死のホーンラビットのもとへ行って、その体に触れた。


「ごめんね。」


ハティはスキル吸収を発動した。すると徐々に自分の体に力が沸いてくるのを感じた。その感覚が収まったのを確認してから、ハティは少し体を動かしてみる。


「これが吸収の力か・・・。確かにちょっと前より早く動けるようになったな、でもこの程度じゃさっきのゴブリンにはまだ敵わないな。こんなに何度も運よく死にかけの魔物に出会えるわけもないし、どうしようか・・・。」


朝よりは強くなったとはいえ、吸収した相手が相手だけにそこまで伸びたわけでもないことを自覚しているハティは、まだ積極的に森を動き回ろうとは思えなかった。


「とりあえずまた木の上に戻って考えるか・・・。」


降りたときよりは短い時間をかけて元いた木の枝に戻ったハティは、自分がどれだけ強くなったのか確認することにした。


「ステータス。」


ーーーーーーーーーーーーー

ハティ

ステータス

HP      4
MP      1
STR     2
VIT     1
INT     5
DEX     2
AGI     3

スキル

吸収
分裂

ユニークスキル

慈愛

ーーーーーーーーーーーーー


「うん、HPとSTRとAGIが上がってるな。他が伸びてないってことは、相手が弱いと伸びないこともあるってことか。」


ハティの予想通り、能力の値が低いと、吸収を使っても自分のステータスが伸びないこともある。吸収と言っても、相手のステータスをそっくりそのまま自分の物にできるわけではないのだ。


「けっこう地道な作業になりそうだな・・・。ん?あれは・・・同族か?」


川の淵でモゾモゾしているものを見つけてよく見てみると、それはハティと同じスライムだった。
そのスライムはハティと同じ薄い水色の体をしていて、川の水を吸収していた。神から創られたスライムのハティは食事を必要としないのだが、野性のスライムは度々水分を吸収しないと、体の中の水分が徐々に蒸発して最後には死んでしまう特性があった。


「自分と同じ魔物を倒すことなんて考えても無かったけど、よく考えたら僕がタメはって勝てるのってスライムぐらいだったな、忘れてた。同じ種族だったら、少し強くなった僕が勝てるだろ。」


そう思い立ったハティは木から下りて、バレないようにスライムへ近づいていった。

目がついていないスライムは、全方向を見ることができる。体をできるだけ低くして近づいたハティも、少し背の高い草が途切れたところの手前まで来ると、スライムが水を吸収し終わるのをじっと待った。

しばらくするとスライムは充分水分を吸収できたのか、ハティのいる所へ近づいていった。
あと1メートルほどでハティと接触するというところまで来たところで、ハティは目一杯伸ばした体を戻して、スライムに体当たりした。

ボールにぶつかった様な反動を感じた後、スライムは少し吹っ飛んで、その先にあった岩にぶつかってベチャッと潰れた。
だがもともとの体が体なので、それだけでは死なずに少しずつ元の体に戻ろうとするところへハティは近づいて、相手のスライムの一部に触れる。


「よし、これで大丈夫だな、吸収。」


ハティは勝利を確信してスキル吸収を発動するが、自分の中に力が入りこんでくる感覚は来ず、目の前のスライムは徐々にもとの形に戻っていく。


「あれ?なんで発動しないんだ?」


わけがわからず混乱している間にも、スライムはどんどん元の形に戻っていって、とうとう完全に復活して今度はハティに飛び掛ってきた。


「わっ、なんで吸収が効かないんだ!?やばいやばい!」


そのまま飛び掛ってきたスライムは、ハティの体を自分の体で包み込もうとしてくる。


「このまま取り込まれたらまずいな、力なら僕が勝ってるはず!」


ハティは相手のスライムの体を逆に自分で覆ってしまうと、スライムの抵抗する力が徐々に弱まってきた。


「これならいけるはずだろ、吸収!」


今回はきちんと発動したようで、ハティの体に力が流れ込んでくる。始めはハティの中で弱弱しく動いていたスライムも、途中で事切れて動かなくなった。
力を吸収し終わったのを確認したハティは自分が包みこんでいたスライムを吐き出して、また元いた木の枝へ戻ってからステータスを確認する。



ーーーーーーーーーーーーー

ハティ

ステータス

HP      5
MP      1
STR     3
VIT     1
INT     5
DEX     2
AGI     3

スキル

吸収
分裂
形態変化 Lv1

ユニークスキル

慈愛

ーーーーーーーーーーーーー



「よし、ちゃんと吸収できてるな。でもなんで一回目は吸収できなかったんだ?ホーンラビットのときは体の一部に触れるだけでできたのに・・・。もしかして相手が瀕死じゃなかったから?」


またハティが考えた通り、スキル吸収は、相手が満足に動ける内は発動しても効果が無い。抵抗できる内は何度頑張ろうが意味がないのだ。


「あとスキルも今回は取れたな。形態変化ってことは、体の形を変えられるのか。でも同じスライムなのになんで僕はこのスキル持ってなかったんだ?」


シャーロームの神アハヴァーは確かにハティに種族はスライムだと伝えていたが、厳密にはハティは普通のスライムではなかった。

ハティの持つスキル、吸収は実は他のスライムが持っているスキルではない。さっきのスライムが川の水を吸収していたのも、体に水分を取り込んでいただけで、スキルとして持っているわけではなかった。
食事の際も魔物を普通のスライムは徐々に消化して吸収していくのだが、ハティは食事を必要としない体なので、やろうと思えば取り込むこともできるのだが、スキル吸収を発動する際に一緒に消化して取り込もうとしない限りは死体はその場に残ったままになるのだ。


「まぁ手には入ったんだし、いっか。とりあえずゴブリンや他の魔物に勝てるって確信できるまでは、地道にスライムを吸収して行こう。」


そう結論付けたハティは、暗くなるまで形態変化の練習をして寝ることにした。




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