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居眠り少女

居眠り少女と初老の翁

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ある少女が眠りに堕ちた
もう目覚めることは無かろうて
そう呟いて瞼を手で覆う
見て見ぬふりして欲しくて

観覧車に二人
優しげに佇むおじいさんは
孫のように小さな少女を連れ
ただ幸せそうに微笑んでいた

少女の生命はもうすぐ消える
おじいさんはただ悲しげに笑う
何も出来ない 少女に何も
ただ一人 悟られないように

少女と初老のおじいさん
仲睦まじく笑い会う
「また あしたもこようね」
また明日 また明日
また明日は来ないと少女は知らない
おじいさんは悲しげに微笑む

観覧車に一人
寂しげに佇むおじいさんの側に
孫のように小さな少女はもういない
おじいさんは涙を流しながら回る

少女の大好きな初老のおじいさん
眠りに落ちるまで疑問に思っていた
「またあした」
と少女が言う毎に泣きそうに笑うおじいさんに
やっとわかった
「またあしたはこない」
少女はただ茫然と泣く

わたしかなしいよ
おじいさんといきられない
だいすきなおじいさん
わたしのおじいさん
まごのようにかわいがってくれるおじいさんを
したいにしたっていたんだ
さいごのじかくはまだないけど
とてもとてもねむいんだ
でもねたらとぎれちゃう
いのちがとぎれちゃう
「また明日 お休みなさい」

居眠り少女と初老のお爺さん
彼らに血の繋がりはない が
それよりも強い絆に結ばれていた
もうそんなことに意味などないよ

ある少女が眠りに堕ちた
もう目覚めることは無かろうて
そう呟いて瞼を手で覆う
見て見ぬふりして欲しくて

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