性欲至上主義

双葉紫明

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第三発

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 後に妻となった彼女とは僕が30歳の頃出会いました。初めてのセックスはやはりぎこちなかったんだけどすぐに彼女とのセックスは素晴らしいものになりました。
 話が今に飛びますが僕らは経済的な理由で離婚してしまいました。その後も好きだのなんだのやってるわけですが、その中で彼女は「セックスが好きではない」としきりに強調します。しかし僕にとっては、彼女の反応は今までの女性に比べて段違いでした。だから早く出てしまい、怒られた事もあります。彼女にしてみればそれは精神的な部分が大きかったのかもしれません。子供もなく二人きりだった頃は、僕に気持ちを全部向けられた。しかし、それでも皮肉な事に、ふたりの性的なピークは離婚前後にやって来ました。
 もう50歳も近く、おそらく子供も出来ない。僕は僕で彼女に与えられるものは性的快楽くらいしかないと思っていました。相変わらず常に性欲があるものの、彼女のスケジュールに合わせて予め日程を決めてないとほぼ断られる。そんななかでやると決めた日のいざやった時の彼女の反応は素晴らしいもので、出来る事なら毎日、いやずっと精魂尽きるまでしていたいと云うような特別なものでした。どこかに彼女を悦ばせていればそれが愛情に結び付くかもしれないという希望もあったかもしれません。
 しかし現実に離婚して、彼女の愛情と僕のそれが大きくズレて行く中で、僕は「彼女はあんなに気持ち良くなれて、おそらく経済的やら精神的な余裕があればもっとなんだから、他に相手を探すべきだ。そしてそういう彼女の性的な感度の高さはきっと僕以外の男にとっても魅力的だから、すぐに相手なんか見つかる」と考える様になり、実際に何度も提案しました。
 しかし僕は彼女が誰かとして、僕の時と同じ様に、またはそれ以上に気持ち良くなっているところを想像すると、たまらなく興奮してしまう事に気付きました。思えば彼女と交わってから、他の女で勃起出来なくなっています。それは彼女がずっと側に居るなら良い事なのですが、彼女は去ってしまった。
 しかし彼女の言い分はこうでした。
「僕とだから気持ち良い。僕以外とはしたくない。だけど僕とも大切にされてる事がわかって心配事がない状況でしかしたくない」
 それは無理だ。いちばんの魔性だと思う。女性としては共感出来る言い草かもしれないけど、極めて男性的である僕に対しての配慮は一切感じられない。それなら僕が他の女としても良いかと言うと、嫌と言う。
 僕なら相手が求めても自分が与えられないなら誰かに求めなよと言う。それがセックスでも。自分の存在は少なからず相手を縛ってしまうから、なるべくそれを少なくするのが愛情だと思う。その逆は所有欲や、独占欲の類いだ。
 僕の性欲は彼女への愛情に鎖で繋がれ雁字搦めだった。
 だからもう彼女を諦める事にした。
 
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