どこへも帰らない

双葉紫明

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第一話

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 いつまで降るんだろう?ずっと雨が降っている。それに濡れて、冷えて、風邪をひいたか。喉が痛い。頭が、いたい。とても、とても。この雨が止まないならば、僕はその間じゅうずっと眠ってやろう。もともと低気圧には敏感な体質だし、酷くくたびれた。くたびれまくった。そんで、眠たいまで歩いて、ずっと眠たい。

 眠れば何も感じない。

 何もわからない。

 そうなのか?眠ってる間中、悪い夢を見る。それを書き留めた事もあったけど、眠る度にキリなくてもうやめた。寧ろ眠っる間に僕の不安は増幅されるのだけれど、あれ?おかしいや。そんなふうに夢の中、いつでも悪い気分で僕は生きていた。さっきまでその事に気付いて無かった。

 この雨がやんだら。きっと心は晴れないけれど、空は晴れるさ。僕ひとりじめじめ湿っぽく生乾き。いつもの暮らしに戻る。僕は晴れやかに笑って、カラカラと乾いた様に、振る、舞う。それを誰も知らないけれど。ひとりになって、カビが生えて、カビに花が咲く。とても綺麗だよ。そのぶん僕は腐敗する。肉体も精神も、部分的に腐って壊れて欠けていく。

 大丈夫、悪くはないさ。

 たいして良くもないけれど。

 たくさんの人が僕を愛して、特別に思ってくれて、それでもみんな忙しいから。誰かと居ると疲れる。誰とも居たくない。だからひとりに帰る時、いつも雨が側に居る。僕だけ目がけて一目散に、時にどしゃっと、だいたいしとしと降り注ぐ。変かな?それでも僕はいつもこうなんだ。

 きっといつか、僕は誰ともうまくやれる。馬鹿なやつ。だらしないんだ。今はたいして大事じゃない人にべらべら喋る。きみにはあんまり喋らなくなった。それが良いとわかったんだ。わからないかも。それでも僕が僕であるよりは、きみが機嫌良くしてるのが良い。たまにしか会えないんだしね。

 鳥が鳴いてる。こんな事書いてるうちに、雨があがったみたいだ。僕の小屋は散らかり果てて、シンクにはずっと放ったらかした洗い物が腐ってる。この長雨(秋雨だから夏の暑さよりはマシだけれど)で余計に酷い腐臭を放つだろう。

 あそこに居たくない。

 どこにも、居たくない。

 きみに会ったらラブホの風呂に入って綺麗になって、僕じゃなくなってからくっついていたい。少しの時間。金で買う時間。ふたりきりの時間。そこでほんの少しだけ、きみは僕を受け入れてくれる。僕はゴシゴシ身体を洗って、歯を磨いてから君を呼ぶ。きみはざぶんと湯船に浸かって、どうするわけでもなくふたり。それから普段かけないドライヤーを少しかけて、やっぱり生乾きの僕。外に出る頃には乾いて、きっと僕はおどけるだろう。人目があるからね。
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