山賊王女と楽園の涯(はて)

紺乃 安

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絶望の檻

9 過去に住む老者 2

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「しかし長老、見るたび誰かに似てる気がすんだよなあ……」
 長老の部屋をしたリースベットは、会議室にいるバックマンの元へ向かう道すがら、首をかしげてつぶやいた。
「そういえば、ユーホルトさんもそんなこと言ってた。どこかで見たことあるって」
「ユーホルトが……? 歳も近そうだし、軍で同じ部隊にでも配属されてたか?」
「長老さんって幾つくらい……ていうか、名前も知らないのね」
「ま、本人が言いたがらねえからな。馬車がどこの省に所属してんのかの見分け方教えてくれたり、いろいろ不思議な爺さんだ」
 眉間にしわを寄せて会議室の扉を開けると、室内ではバックマンの他にドグラスが待っていた。ドグラスは妙に得意顔をしている。
「どうだ頭領カシラ、監獄の場所は分かったか?」
「大したもんだぜあの爺さん。さっき見てきたような説明ぶりだった」
「お城の外、東側にあるんだって」
「よし、これで食材が揃ったな。外側なら侵入も楽だし、騒ぎになっても追手が来るまで時間もかかる。前菜は難なく用意できそうだ」
「さて頭領、その牢獄破りに、手ぶらで行くわけじゃないだろう?」
 椅子に座っていたドグラスが立ち上がり、リースベットに先端が曲がったきりのような物を手渡した。
「ロックピックか。新品だな」
「いい鋼材が手に入ったんだ。そいつなら仕事も楽だろう」
「よし、ちょっと借りてくぜ」
「それとお二人さん、夜に王都をうろつくにゃ、その格好はちょっといただけねえな」
 バックマンがいたずらっぽく白い歯を見せると、リードホルム王国の地図が描かれた衝立ついたての陰に隠れた。リースベットが着ている革のコートやアウロラのフード付きストールは、確かにまっとうな町人らしくはない。
 リースベットとアウロラがバックマンの奇行を怪訝けげんな顔で眺めていると、自分は無関係だとでも言いたげに、ドグラスは部屋の隅の椅子に席を移した。
「げっ……てめえ何て物を」
「うわ……」
 バックマンは衣桁いこうにかけられた二着のドレスを持って衝立から出てきた。
 その下品とも言えるほど華美な装飾と彩色のドレスを着て夜道を歩けば、すれ違う多くの者に街娼がいしょうだと思われることだろう。ところどころ色せていたり糸のほつれも目立ち、真新しさがない点がかえって現実味を増している。
「ほど良くくたびれてるだろう? 売り物にならねえからずっと倉庫に眠ってたんだよ」
「そんなもんをあたしらに着せようってのか!」
「最悪……」
「いや、ここで着ろってんじゃねえよ。ヘルストランドに着いてからだ。夜の街じゃ、このほうが目立たねえだろ」
「いちいち言うことがごもっともだな、てめえは!」
 リースベットは舌打ちしてドレスをひったくるように掴み、テーブルの上にあった革のバッグに押し込んだ。
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