悪役令嬢になんてさせません。

タツミ

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新生児

私の娘ースチューデント子爵その2

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それから平穏な毎日が続いていたある日、執事のセバスが困った顔をしながら報告をしてきた
書斎の本を返さず所有するものが屋敷にいるというものだ
とりわけ期限を設けているわけでないので構わないのではとも思っていたのだが、持ち出されている本はどれも貴重で高価なものばかりらしい。屋敷で働くものを疑いたくはないが、一度すべてを返還するように言ってほしいとのことだった
私はセバスのいうことも最もだと、翌日の朝にすべての使用人を集めて返還するよう求めた
もちろん、騎士たちも同様だ
だが、返還された本は少なく、私は疑惑の目を向け始めた
セバスやメイド長に命じて屋敷中の部屋を捜し、騎士団長には町中の買取りを行う店を調べさせた
しかし消えた本は見つからず、私もセバスも途方に暮れるしかなかった
そんな中、アズが奇妙なことを言い始めた
シルが窓を伝って書斎に侵入して、夜な夜な本を読んでいるということだ
話を聞いたとき信用などしていなかった。
当たり前だ、シルは赤子で一人で外に出ることすらできないのだ
セバスも同じでむしろ自分の息子がゆえに、アズが本を盗み出した犯人ではないかと疑っていた
アズはそんな私達の様子を当然のように受け止め、私達に提案した。
深夜、見張りの騎士が眠るとき、鍵穴から中の様子を見てほしい。もし何もなかったら、自分はどんな罰でもうけると
正直破天荒な話が故に私は答えを出せなかった。
しかも、見張りを行っている騎士たちが居眠りをしているなど、あってはならない話だ
セバスはアズの顔を見つめ、何か思案気に顎に手をやった
そんな私たちの様子をアズはじっと見つめていた
「今夜、私が様子を見てまいります。アズ、時間は同じなのか」
長い沈黙の末セバスが口を開いた。
「ハイ」
アズの答えは簡潔で、何度もその現場を目撃しているのか、答えに迷うことがなかった
「セバス、私もいこう」
「よろしいので?」
いきなりの私の決定にセバスはわずかに背筋を伸ばした。
「構わん、だが何も起こらない場合は、セバスとノーマにも罰を与えるがよいか?」
嘘であれば咎は肉親にも及ぶ。
一種の賭けだが、アズには迷いはなかった
「ハイ」
「セバスもよいか」
「承ります」
こうはいったものの、私はアズの言葉を信用はしていない。
アズは魔法によって操られているのではないか、というのが本音だ
もしかすると、謎の多い前回の侵入者の置き土産とも考えられた
さておき、私はアズのいう時間になると、普段は持たない短刀を懐に忍ばせた
召使たちには全員早めに休むように伝えたため、不寝番の姿は見えない
しんと静まり返った屋敷の廊下を歩き、階段を降りるとセバスとアズが待っていた。
私は指で行動を示すと、二人は頷いた
娘の部屋はこの先にある角の先だ、私たちが角を曲がるとそれに気付いた二人の騎士が肘をついて礼を取ろうとした瞬間、騎士たちの体が揺らぎ倒れてしまった
「おい」
あっという間の出来事だった、セバスが急いで傍らに座ると騎士の様子を伺った
「寝ているだけなので、大丈夫です」
セバスがいう前にアズは扉の前に倒れこんだ騎士の体をどかそうとしていた。
いつの間に?
どうやって?
声すら私は聞いていない。セバスが私を見てうなづいている。
アズがいう通り眠っているだけらしいが、私とセバスの間に緊張が走った
姿の見えない侵入者は扉の向こうにいる。しかも相当の手練れなのは容易に想像がつく
アズはやはり操られているのだろうか、だとしたら、犯人の目的は何なのか。部屋の中のシルやノーマは無事なのか、私はすぐに開きたくなる衝動をぐっとこらえて、アズに促されるまま鍵穴に目を向けた
そこには予想だにしなかった姿があった
暗い部屋を照らすのはライトの魔法。
小さなベットの上には、本が山積みにされていた
その中に小さなの体を柵にもたれるようにシルは座っていた。
シルは山積みになった本を自分の前に置いた。さすがにもてないのか、足の間に置かれた本を真剣な様子で読んでいる。
そう彼女は紛れもなく読んでいるんだ。彼女の手にしている本には私も見覚えがある、分厚い装飾がされたその本は、現代医学のすべてを書き写しているといってよいほどの難しい医学書だった
私は茫然とした状態でその場に立ち尽くした
あれは何だろうか
私の娘ではなかったか
私は娘に得体のしれないものを見たような気がしてならなかった
「旦那様」
「あ・・・」
セバスの声に私はハッと意識を取り戻した
「いかがいたしましょうか」
「・・・・」
捕らえるか否か。
セバスにはあれが敵と見えるのだろうか
私はどうすべきか答えられなかった。しかし、得体の知れない存在だが敵と認識するのは早計のような気がした
「アズ。本はいつ取りに行く」
「わかりません。日によって違うようです」
「書斎で捕まえることはできるか。話が聞きたい」
今まで、悪意に敏感だったのは何らかのスキルが関係していると思っていい、そして悪意は屋敷に向かっていた。
それを排除しているのは、彼女がこの家を敵としていないからだ。
彼女が何を求めているのか。
何が目的なのか知る必要があった
「話ですか?」
「本が読めるのだ、話はできよう」
あのような難しい本を読んでいるのだから私より頭が良い。
仮に彼女が姿替えの魔法を使用している何者かであれば、本物のシルを返してもらい、彼女にはこの屋敷に仕えてもらおう。命の対価として
私たちはその場を後にして、昼間彼女が動くのを待った
探知能力が高い彼女にばれないように見張るのは至難の業なので、言葉を理解していることを利用した。
アズに彼女の前で不在する旨を伝え退室させる
残るのはノーマだけになるので、動く確率は高くなるだろう。
案の定動き出している彼女に私は笑いが止まらなくなった
静かに扉を開き中に入るが本に夢中なのか全く気付いてない
本棚の下でちょこちょこ動く姿に、私は自然と笑みが浮かんでくる
私たちに気付いたら彼女はどんな顔をするのだろうか
対魔法の魔具も用意したので逃げることは難しい。
驚くだろうか、すぐ逃げ出すだろうか
もしかしたら魔法を使ってくるかもしれない
魔王クラスでなければ破るのは難しいといわれる魔具を見て、どんな顔をするか
私が最初にいう言葉は決めている
そんな中彼女が動く
私は待ち望んでいた時がやってきたのを知った



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