婚約者の幼馴染に圧勝するまでの軌跡

きんもくせい

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読書家

最悪のファーストコンタクトを終えてから約二週間後、フラヴィアにとっては嬉しく無いことに、また母と女中に拘束される日々が続いた。

「後一週間で再び顔を合わせるのでしょう。しかも、今度はコーネリアス邸に赴いて!」

「良いですか、お嬢様。困った時は微笑んで『ええ』とでも言っておけば良いのです。貴方様ほど美しいお人なら、ただ光の下にいるだけで男は皆いい気分になります。くれぐれも余計なことは言わないよう…」

「貴方は昔っから負けん気が強くて小生意気で……、必死に淑女教育仕込んだというのに、女には不必要な読書や外交公務にばかり目を向けていましたからね。やっとの婚約が破棄になるなんて悪夢、私の枕の上だけに留めておいてくださる!」

「さあお嬢様、お召し物の前にコルセットを締めましょうか」

悪夢の再来である。
姦しく母と侍女に畳み掛けられ、5時間も経てばフラヴィアの水分は抜け切っていた。15歳になってやっとできた婚約者を逃せば最後だとでも思っているのか、母は鬼気迫る表情で扇をたたんだり開いたり、フラヴィアの髪を撫で付けたり撫で付けなかったり。

そんな様子を見ていた弟は、呆れた様に「僕は早めに婚約者をつけてもらうことに致します」と捨て台詞を吐いていった。ほんの小さい頃は「姉様と結婚する!」と駄々を捏ねていたのに、成長とは早いもので、今や助けを求める姉を置いてけぼりにするまでとなった。

「コーネリアス子息には幼馴染の女も居るらしいですが、マァお嬢様の姿を見れば身を引くでしょう」

「幼馴染の女なんて、一番厄介ですわ!いいですこと!くれぐれも!その幼馴染の女にあの麗息を渡してはなりませんよ!」

コルセットのキツさで真っ青になる娘の側で、母と侍女は血気盛んに意気込んでいた。





そうして迎えた2度目の顔合わせの日、出迎えにきたベネディクトはフラヴィアを見て、最初の時のように数秒固まった。このような反応はフラヴィアにとっては見慣れたものなので、特に気にせず挨拶をすると、気を取り直したように咳払いを挟む。

「ゴホン……君の目当ては書庫だろう?案内しよう」 

「光栄ですわ。コーネリアス辺境伯は外国の蔵書も多いと聞き及んでおりますから」

「今日は半日ほどで帰るのだろう?私も同行しよう」

「有難いお言葉ですけれど、付き人もいますから、私のことはどうかお気になさらないで。きっと長くなりますし…」

フラヴィアがベネディクトの申し出を断ると、彼は意外そうに目を見開き、歩みを突如止めた。

「?……あの、コーネリアス様」 

「…ベネディクトでいい。私もフラヴィア嬢と呼ばせて頂いても?」

「ああ、はい。それは勿論…」

なぜ急に立ち止まったのか分からないまま困惑していると、ベネディクトは新緑の瞳でフラヴィアから目を離さないまま、静かにこう言った。

「君に少し、興味が湧いた。観察してもいい許可を貰いたい」

「………はあ」

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