兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい

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番外編14・冷戦

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ソフィアとカミーユにこの場で話しかけられる者といえば、彼女以外あり得ない。
堂々と割って入ってきたのはスカーレット・ヘルヴァンその 女ひとであった。

「スカーレット様!私は勿論、構いませんわ」

我が意を得たりと歓迎の微笑みを浮かべるソフィアに対して、カミーユの顔は歪んでいる。それに気がついたスカーレットは、あからさまに眉を下げた。

「カミーユ様……やはり、私は邪魔者でしょうか」
「い、いや。そんなことはないよ。君ともきちんと話がしたいと思っていた」
「まぁ。嬉しいですわ、殿下」

外面を気にするカミーユが、そう言われて突き放せるわけもなく、こうして3人は奇妙な雰囲気のまま話を続ける運びとなった。

「ところで、ソフィア様は新しく事業を興すのですよね。レオン様と共に」
「はい。とは言っても、私にできることは限られているのですが……」
「ああ、そういえば、そんな話もあったね。しかし、君も誰かと共になれば、事業は諦めるのだろう?」

当然のように微笑んでそう言ったカミーユに、ソフィアは苦笑いした。

「未だ結婚の予定も未定ですから……。少なくとも、始める前から諦める気はありませんわ」
「……良い心がけだね、さすがソフィア嬢」
「光栄です」
「私も、とても素晴らしいことだと思います。もう今は男だ女だという時代ではございませんから、きっと、多くの者が快く思いますわ。頑張ってくださいまし」

同じ女性であるスカーレットにそう言われ、ソフィアはじーんと感動して頷いた。

「はい。勿論ですわ。ありがとうございます、スカーレット様」
「ええ。………そういえばカミーユ様、先ほどポルシュール家の子爵令嬢が、お尋ねしたいことがあると仰っていましたよ」
「まぁ、そうなのですか」
「……そう、でも僕としては、もう少し君たちと話してみたいんだけれど……」

絶好のチャンスだと思ったソフィアは、カミーユの言葉ににっこりと笑顔を返した。

「私達もそのお気持ちは山々ですが…今宵の時間は限られていますから、是非お行きになってくださいまし」
「私も、待っていますわ。カミーユ様」

「……分かったよ。すぐに戻ってくるから、待っていてくれ」

複雑そうな顔をしたカミーユが離れていき、ソフィアの肩の荷がそっと降りた。ほっとした気持ちのままスカーレットに向き直ると、彼女はなにやら、何とも言えない表情を浮かべている。
焦燥とも沈痛とも取れない彼女の顔色は悪い。仮病を使ってしまったソフィアよりも、よっぽど体調がすぐれないように見えた。

「スカーレット様、もしかして、お加減がすぐれないのですか?」
「……いえ。ソフィア様。私、貴方にお話ししたいことがあるのです」
「お話し?」

ソフィアがかすかに首を傾げると、スカーレットはぎゅっと引き結んだ唇を緩め、縋るような目線を寄越した。


「はい。私、私は……今回の、選別会で、何としても選ばれたいのです」

潤んだ瞳と、血色の失せた頬を見て、彼女の言葉が本気なのだと悟った。

「そ、そうなのですね。ですが、私は本当に、今回は形式だけの参加で……」
「違います。ソフィア様の本心は、勿論存じ上げておりますわ。私……」
「スカーレット様?」
「私が恐ろしいのは、ソフィア様ではありません。あのお方は、諦めの悪い方です。私も最近まで知らなかった。純粋に憧れていたのです…。ですが、あの人の考えていることは、私にとっても、ソフィア様にとっても、最悪のことです。今から話すことは誰にも他言しないと誓ってくださいませ」
「す、スカーレット様、落ち着いて、ね?」

尋常ではない気迫のスカーレットに、ソフィアは思わず瞠目し、彼女の肩に触れる。それでもスカーレットの目力は衰えることなく、どころかその鋭さを増したように思えた。

「スカーレット様。カミーユ様は嘘をついています。今夜うまく切り抜けられないければ、貴方様は一生、籠の中の鳥です」
「!スカーレット様、貴方……」
「真意までは分かりませんが、彼の方は───」




不意に、会場の遠くが騒めいた。


「見て、アレ……」
「もう?まだ始まったばかりじゃない」
「でも噂だと、あのお二人はすでにお約束されていたとか……」
「綺麗なブーケ…」


そのざわめきは、会場全体に行き渡り、止むことなくソフィア達の方まで伝ってくる。

ざわめきの中心地には、堂々と歩を進めるカミーユの姿があった。
その手には、真っ白なブーケを携えている。

隣で、スカーレットが息を呑む気配を感じた。
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