兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい

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番外編16・真意

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「なっ……!」

ソフィアの指先から力が抜け、サッと冷たいものが身体中を駆け巡った。花束の方を向いていた身体は勢いよく逸れ、まるで毒物を前にしたかのように数歩後ろに下がる。

頭の中で、点と点が繋がっていく感覚がした。
なぜ、事前に進言していたにも関わらずこの場に召集されたのか。
なぜ招待状に王家の紋様が押されていたのか。  
なぜカミーユにやたらと話しかけられるようになったのか。
なぜ、白薔薇のブーケにここまで会場がざわめいていたのか───全ては、ここに集約されていた。

嫌われていたのではない。むしろその逆。確かに、年齢で言っても爵位で言っても、カミーユに最も相応しいのはソフィアだろう。王家の思惑なのかカミーユの思惑なのかは判然としないが、嵌められそうになったのだということだけは分かった。


“奥の手”をバラされたカミーユの表情が歪む。ぐしゃりと、手の中にあるブーケから歪な音が鳴った。

「出しゃばるな、スカーレット!」

怒声が響き、貴婦人たちの肩がすくむ。普段の柔和な仮面は剥がれ落ち、苛立ちを隠さぬ王子の素顔が露わになる。スカーレットは最早気力も湧かぬのか、それとも気力を使い果たしてしまったのか、その場にへたり込んでいた。

「この女に選ばせる必要などない。王家が望むのだ、黙って受け取ればいい!ソフィア嬢、自分の立場と今後をよく考えて選び取れ。美しい君なら、正しい選択が何か分かるはずだ!」

普段のカミーユからは想像もつかない、傲慢さが滲んだ鋭い言葉を浴びせられたソフィアは、一瞬だけ胸の奥が震えた。だが──その震えを押しとどめるように、深く息を吸う。
今までのソフィアなら、おとなしくブーケを受け取り、父母の望む幸せを享受していただろう。けれど、今のソフィアが思い描く未来はそうじゃない。

彼女はゆっくりと背筋を伸ばし、王子の目を真っ直ぐに見据えた。

「恐れながら、殿下」

 声は静かに、けれど確固として響いた。

「私は殿下の婚約者になるつもりはございません。その花を受け取ることも、決して」

 ざわ……と会場の空気が揺れる。人々の視線は王子ではなく、毅然と拒絶したソフィアに注がれていた。

「~~~ッ……!!」

全てが思い通りに行くはずだったシナリオ。それが1人の女によって台無しになったカミーユは、首まで赤く染め上げ、感じたこともないほど膨大な苛立ちにくらりと体をよろけさせた。


純白の薔薇は、なお王子の手の中で輝きを失わず、しかしその輝きはもはや誰の心も魅了しなかった。
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