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番外編最終話・新しく得た友
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『拝啓
敬愛するソフィア・リルベール様。
近頃は秋の気配が近づきつつありますが、どうお過ごしでしょうか。
ソフィア様におかれましては、事業を始めるにあたっての準備で、ご卒業までお忙しいことと思います。
そんなお忙しい中、このお手紙に目を通していただいて恐縮です。
私は、ソフィア様に一つ、謝らなければならないことがあります。
ソフィア様に度々届いていた不気味な警告文は、実は私がしたためたものでございます。
お恥ずかしいお話ですが、私は第二王子殿下の婚約者になるために、どんな手段も問わないつもりでした。
しかしある日、彼が貴方のカバンを池に放り投げているところを見てしまいました。
貴方に続いていた嫌がらせはおそらく、カミーユ様本人が行ったものだと思います。それに気づいて、私は、これは良い機会だと思ったのです。
ソフィア様を尊敬しております。しかし、あなた様を助けるという体裁を取りつつも、王子の婚約者候補である貴方を退けられる。いやしくもそう思い、あの手紙を送り続けました。
直接お会いしてお話しするのが当然の理だと存じております。
しかし、ソフィア様に合わせるお顔がありません。
せめてものお詫びとして、何か困ったことがあれば、何でもお申し付けください。
本当に、過ぎた真似をいたしました。
申し訳ありませんでした。
敬具
スカーレット・ヘルヴァン』
「スカーレット様……」
相変わらず趣味の良い、リスときのみが品良くあしらわれた便箋。そこには、ソフィアへの謝罪がしたためられていた。
薔薇の香りがする手紙の差出人は、やはりスカーレットだったのだ。あの選別会の言動で薄々察してはいたが、こうして改めて書かれると驚きが勝った。
本来であればこちらが礼を言う立場なのに、どうして謝罪を受けているのだろうか。スカーレットがいなければ、ソフィアはあのブーケを受け取り、正式な婚約者として祭り上げられていただろう。
それに、とソフィアは、そっと自室の引き出しを開けた。
中には今まで送られてきた色とりどりの便箋と、美しい字形が連なっている。この手紙の風体を見ただけでも、心がこもっているのは十分に伝わってきた。
こんなにも美しい手紙をくれる人。あの時、私を救ってくれた人。
感謝こそすれ、どうして遠ざけることがあるだろう。ソフィアが望んでいるのはむしろその逆、彼女に近づくことだった。
机に座り、ペンを取る。便箋には小鳥とクローバーがあしらわれ、全体的に淡い緑に染まっている。まずは何から書こうかと思案していると、何やら部屋の外が騒がしいことに気がついた。
「~~から、~~き…です」
「~~…が…い……。……~を…る」
よく聞こえないが、この騒がしさでは思考に集中できないことは確かである。渋々部屋の外に出ていくと、そこには兄と弟が相対し、何かを言い合っていた。
2人の中心には、なぜか忌まわしき白薔薇のブーケがある。ギョッとして思わず退くソフィアに気が付かず、2人は白い花弁を散らしながら睨み合っていた。
「ですから、こんな縁起の悪いモノ、即刻火にくべて灰にするべきです!!」
「気持ちはわかるが、王家からの贈り物だぞ!?一応!!バレたら……」
「バレなきゃいいんですよ!!大体、一度振られたくせに未練がましくこんなもの寄越してきて、嫌がらせにしても気持ちが悪い!!」
「それは同意するが、捨てるのはまずい!せめて鳥の餌にでもしよう!!」
「鳥は薔薇なんて食べません!!」
ギャアギャアと、ソフィアには気が付かず、貴族らしからぬ剣幕で怒鳴りあっている。会話から推察するに、王家から送られてきたブーケの処分に困っているのだろう。
ソフィアは2人に気付かれないようそっと扉を閉じると、喧騒を背景に、そっとペンを握り直した。
書くことは決まっている。自分を助けてくれた彼女への感謝と、素敵な便箋のお礼と、それから───文通友達にならないかという、ささやかなお誘いだった。
『拝啓
親愛なるスカーレット・ヘルヴァン様へ』
紙にそう綴ると、続きの文章は不思議と、次々に浮かんできた。
事業のことも、便箋のデザインのことも、感謝の念も、スラスラと文字になって紙に描かれてく。
これからどうなっていくかは分からないけれど。
それでもソフィアは確かに、明るい未来への一片を掴み始めていた。
敬愛するソフィア・リルベール様。
近頃は秋の気配が近づきつつありますが、どうお過ごしでしょうか。
ソフィア様におかれましては、事業を始めるにあたっての準備で、ご卒業までお忙しいことと思います。
そんなお忙しい中、このお手紙に目を通していただいて恐縮です。
私は、ソフィア様に一つ、謝らなければならないことがあります。
ソフィア様に度々届いていた不気味な警告文は、実は私がしたためたものでございます。
お恥ずかしいお話ですが、私は第二王子殿下の婚約者になるために、どんな手段も問わないつもりでした。
しかしある日、彼が貴方のカバンを池に放り投げているところを見てしまいました。
貴方に続いていた嫌がらせはおそらく、カミーユ様本人が行ったものだと思います。それに気づいて、私は、これは良い機会だと思ったのです。
ソフィア様を尊敬しております。しかし、あなた様を助けるという体裁を取りつつも、王子の婚約者候補である貴方を退けられる。いやしくもそう思い、あの手紙を送り続けました。
直接お会いしてお話しするのが当然の理だと存じております。
しかし、ソフィア様に合わせるお顔がありません。
せめてものお詫びとして、何か困ったことがあれば、何でもお申し付けください。
本当に、過ぎた真似をいたしました。
申し訳ありませんでした。
敬具
スカーレット・ヘルヴァン』
「スカーレット様……」
相変わらず趣味の良い、リスときのみが品良くあしらわれた便箋。そこには、ソフィアへの謝罪がしたためられていた。
薔薇の香りがする手紙の差出人は、やはりスカーレットだったのだ。あの選別会の言動で薄々察してはいたが、こうして改めて書かれると驚きが勝った。
本来であればこちらが礼を言う立場なのに、どうして謝罪を受けているのだろうか。スカーレットがいなければ、ソフィアはあのブーケを受け取り、正式な婚約者として祭り上げられていただろう。
それに、とソフィアは、そっと自室の引き出しを開けた。
中には今まで送られてきた色とりどりの便箋と、美しい字形が連なっている。この手紙の風体を見ただけでも、心がこもっているのは十分に伝わってきた。
こんなにも美しい手紙をくれる人。あの時、私を救ってくれた人。
感謝こそすれ、どうして遠ざけることがあるだろう。ソフィアが望んでいるのはむしろその逆、彼女に近づくことだった。
机に座り、ペンを取る。便箋には小鳥とクローバーがあしらわれ、全体的に淡い緑に染まっている。まずは何から書こうかと思案していると、何やら部屋の外が騒がしいことに気がついた。
「~~から、~~き…です」
「~~…が…い……。……~を…る」
よく聞こえないが、この騒がしさでは思考に集中できないことは確かである。渋々部屋の外に出ていくと、そこには兄と弟が相対し、何かを言い合っていた。
2人の中心には、なぜか忌まわしき白薔薇のブーケがある。ギョッとして思わず退くソフィアに気が付かず、2人は白い花弁を散らしながら睨み合っていた。
「ですから、こんな縁起の悪いモノ、即刻火にくべて灰にするべきです!!」
「気持ちはわかるが、王家からの贈り物だぞ!?一応!!バレたら……」
「バレなきゃいいんですよ!!大体、一度振られたくせに未練がましくこんなもの寄越してきて、嫌がらせにしても気持ちが悪い!!」
「それは同意するが、捨てるのはまずい!せめて鳥の餌にでもしよう!!」
「鳥は薔薇なんて食べません!!」
ギャアギャアと、ソフィアには気が付かず、貴族らしからぬ剣幕で怒鳴りあっている。会話から推察するに、王家から送られてきたブーケの処分に困っているのだろう。
ソフィアは2人に気付かれないようそっと扉を閉じると、喧騒を背景に、そっとペンを握り直した。
書くことは決まっている。自分を助けてくれた彼女への感謝と、素敵な便箋のお礼と、それから───文通友達にならないかという、ささやかなお誘いだった。
『拝啓
親愛なるスカーレット・ヘルヴァン様へ』
紙にそう綴ると、続きの文章は不思議と、次々に浮かんできた。
事業のことも、便箋のデザインのことも、感謝の念も、スラスラと文字になって紙に描かれてく。
これからどうなっていくかは分からないけれど。
それでもソフィアは確かに、明るい未来への一片を掴み始めていた。
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