兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい

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番外編2・不穏な影

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 ソフィアの予想通り、家族は彼女の判断を最終的には尊重してくれた。
最終的に、と表現するのは、レオンと事業を起こすことに、最後まで母が反対していたからだ。父も快くは思っていない様子だったが、それよりも母の反対が凄まじった。

やれ
「女の幸せは結婚して子供を産むことよ」
やら、
「上手くやれば国母にだってなれる」
やら、
「レオンと事業を起こすなんて!評判も落ちるし、苦労することばかりよ」
やら、屋敷内でソフィアの顔を見た途端に説得し始めるほどで、一度捕まれば、誰かに止められるまで口が回り続けた。父や兄はナタリーの件があるからか、反対意見と言うほどの反対意見は無く、「お前の好きなようにやりなさい」「失敗してしまっても、また帰って来ればいい」と優しい言葉をかけてくれたのだが、同じ女性である母親だけが、最後の最後まで反対していた。

結局、母が納得したのもソフィアやレオンの努力が実を結んだのでは無く、アルフレッドの説得があったからだ。
アルフレッドは、ソフィアの意思が一番大事だと言い、「こんなことは償いにもならないが、」と見事に母を納得させてみせた。

「結婚が女の幸せだというのは、お母様がお父様と出会うことで幸福になれたから思うことであって、単なる結果論です。……僕の結婚で辛い思いをさせた分、せめてソフィアは、結婚というしがらみに捉われず、幸せになってほしい。仮に失敗したとして、やましいことをしている訳でもないし、いつだって家に帰って来られるじゃないですか。婚期を逃したってソフィアなら、その気になればいくらでも相手はいます」

と、つらつらとこのようなことを何度も言い聞かせ、遂には「それもそうね……」と彼女を納得させたのだ。後に、母には「あなたにはどんな形であれ幸せになって欲しい」と泣きながら言われたので、結局は一人娘が心配だったのだろう。また、謝罪の機会もなあなあになったままソフィアと離れることが怖かったのかもしれない。



そんな訳で、ソフィアはあと一年ほど学園に通い、無事卒業した後、レオンの卒業を待ちながらコネ作りと資金繰り奔走することとなった。幸い姉弟2人はまだ学生の身分であり、準備期間だけはたっぷりとある。
やる事は山積みだが、急いだり焦ったりする必要は無く、それよりも丁寧に下積みをしていこうと、話し合っていた。

そう、丁度そうやって、今後の計画を立てていた期間のことである。

リルベール侯爵邸に、一通の手紙と花束が届いたのは。





『我が敬愛するソフィア・リルベール様へ』
と綴られた手紙には、信じ難いことが書いてあった。





「王子の婚約者を決める選別会……!?」  

手紙を片手に、困った顔で立ち尽くすレオンが、眉を下げたままこっくり頷いた。

「はい。手紙を読む限り、どうもお姉様に結婚の意思が無いことが伝わっているのかどうか曖昧で……選別会というくらいですから、おそらく形式的なものだとは思いますが……」
「そんな、もうとっくにそのことは王家にも伝わっている筈なのに」
「そこが引っ掛かりますね。学園でだって、あからさまに態度を変える第二王子派閥の子息がいたくらいなのに……伝わっていない筈がない」
「でも行くしか無いわ…ここで逆らって変に目をつけられると、もしかしたら今後の事業にまで影響が出るかもしれないし」
「ふむ。確か第二王子であるカミーユ様は学園でも人格者で評判でしたし、現地で事情を話せばご納得していただけるのでは?」

脳裏で、生徒会活動に勤しむ顔のカミーユを思い起こし、それもそうかもしれない、と一つ頷く。彼は女性に優しく、物言いも柔らかな好青年だ。

「そうね………それしか無いわ……はあ、比べられるような場に赴くなんて、憂鬱…」
「お姉様なら誰にも何も劣らないと思いますけれど」
「過信しすぎかもしれない……」
「マなんにせよ、行って説明すれば終わることですから。意地悪なお嬢さんがいたらツンと眉を顰めればいいんですよ。それだけでお姉様のお顔なら迫力満点です。お手数かと思いますけれど、王子と話せれば早く帰って来れるかもしれませんし!」

ニコ、とレオンが柔和に笑った。憂鬱そうにするソフィアを元気づけようとしてくれているのだろう。

「………そうね…」

何故か感じる嫌な予感に気がつかないふりをして、レオンに気が付かれないよう、そっとため息を落とした。
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