💰転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社💰 〜奴隷を買いに来たら女子高生が売られていた件について〜

石矢天

文字の大きさ
31 / 48
WORKS3 転生社畜、女子高生と見つける

💰血塗られた盾

しおりを挟む

「くあっ、ふああぁぁぁ」

 眠い。もうすぐ昼になろうというのに眠すぎる。あくびがとまらない。
 昨日は夜遅くまで、というか明け方まで試作品を作っていた。

「試してみたいことはできた?」
「ああ。バッチリだ」

 試作品を取り出し、チトセの前に出す。
 いくつか作った中で、一番よくできたヤツだ。

「ふぅん。コレがねぇ」

 チトセが試作品を無造作に掴みあげる。

 あっ、あっ、あっ、ちょっと。
 もう少し丁寧に、あっ、そんな乱暴にしたら壊れちゃうから。

 パキッ。嫌な音が執務室に響いた。
 パーツが一つ折れ、コンと軽く小気味よい音を立てて机に落ちた。

「あ」
「ああああああああ!!!!」
「あの……、ごめん、ね」
「俺の力作があああああぁぁぁ」
「ごめえええぇぇん!!!!」

 小一時間かけて、なんとか元通りに直した。



「なんですか……コレ」
「……最高に趣味悪ぃな」

 ダリスが夜なべして作った力作を見たジュハとヨミの第一声である。
 ラウンドシールドの表面を、ナーガリザードの赤黒い鱗でビッシリと覆った試作品。言うなれば『うろこの盾』だ。

 国民的人気ゲームに出てくる『うろこの盾』はドラゴンを想起させるエメラルドカラーだったが、こちらはブラッディレッド。酸化した血液のような色をしている。

 まるで返り血を浴びたようなたたずまいの盾は、見る者を畏怖させるに十分なビジュアルだ。

「見た目は……ちょっとだけ怖いけど、性能は良いんだ。ほら、持ってみてくれ」
「えっ、僕ですか!?」
「当たり前だろ。これはジュハの盾なんだから」
「あ、これ僕のなんですね。……………………はい、わかりました」

 ずいぶんと長く葛藤した後、ジュハは盾を手に取った。
 嫌だけど仕方がない、という気持ちを全く隠せていない。

 恐る恐る、というよりも、汚いものを触るかのように。
 ジュハが指の背で盾の前面をノックする。

 さらにはくるくると盾を回転させたり、取っ手を掴んで構えてみたり。
 ひとしきり触り終えた頃には、さっきまでの胡乱うろんな目ではなく、少し興奮したようなキラキラした目になっていた。
 
「まるで金属のように硬いですね。それに丸みがあるから、敵の攻撃を逸らしやすい。重さも……ラウンドシールドより少し重たいくらいで、邪魔にならないです」
「だろ! いやあ、苦労したんだよ。うまく丸みが出るように鱗を重ねて、でも重ねすぎると盾が重くなるから、こうバランスを取るのが難しくて――」
「これを……ダリス様がご自分で?」
「お、おう」

 盾を両手で持っていたジュハが、そのまま抱きしめる。
 顔がうつむいていて表情は伺えないが、身体が小刻みに震えていた。

 え?
 なに?
 怒ってんの?
 泣いてんの?
 ハッキリ言ってくれ!

「ダリス様が、僕のために……」
「えっと……ジュハ?」
「どう、して、ですか? ぐすっ。僕は亜人で、奴隷なのにぃ」

 ジュハが顔を上げ、濡れた目でダリスを見る。
 めっちゃ泣いてた。これでもかってくらい涙がこぼれていた。

 どうして、という問いに答えるなら。
 この盾を商品化するためのテスターとして、まずはジュハに使って貰いたかったからだ。あと、ラウンドシールドがすぐ壊れるからどうにかしたかった、っていうのもある。

 なんだけど、とてもそんなことを言いだせる空気じゃない。

「ジュハはいつも頑張ってくれてるからな。これからもよろしく頼む」
「…………ッ!?」
「使いづらかったら、いつでも言ってくれ」
「ぐすっ、はいぃ」

 涙声で返事をすると、ジュハはうろこの盾を大切そうにギュッと抱きしめた。
 ついさっきまで『なんですか……コレ』と嫌悪感を露わにしていたのに、ダリスが自分のために骨を折ってくれたのだと思い込んだことで、まるで宝物のように感じているのだろう。

 なんだか純情な子を騙しているようで、少しだけ心がチクチクするなぁ。

「おいおい。それじゃあ、アタシが頑張ってないみたいじゃねぇか。アタシには何かないのかよ?」

 それまで黙って様子を見ていたヨミが、ニヤニヤしながら軽口を飛ばしてくる。
 彼女の性格から考えて、本当に何か欲しいわけではなく、ただ揚げ足を取れそうだったから取っただけだろう。

 だが。

「もちろん、あるぞ」
「はあっ!?」
「ヨミもいつも頑張ってくれてるからなあ?」

 口を大きく開けて驚いているヨミを、ニヤニヤと見返しながら、ダリスは矢束を取り出して机の上に置いた。

 その矢の先端。取り付けられたやじりは黒く鋭く尖っていた。



💰Tips

【うろこの盾】
 某国民的人気ゲームで有名になった、RPGでは序盤で手に入ることが多い盾。
 前衛から後衛まで幅広く装備できる軽さ、そして性能のわりにお値段が手頃であることがウリ。
 金属などの小片を鱗状に貼り付けた『スケイル』とは別モノである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...