💰転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社💰 〜奴隷を買いに来たら女子高生が売られていた件について〜

石矢天

文字の大きさ
47 / 48
WORKS4 転生社畜、女子高生とはじめる

💰逆転の秘策

しおりを挟む

「それじゃあ、もう一度聞くよ。ボクと取引をしない?」

 チトセが取引を持ち掛けてきた、あの日。
 ダリスが取引に応じた、あの夜を境に、戦況は大きくひっくり返った。 



「まずはボクと、ヨミ、ジュハの奴隷契約を解除してほしい」
「…………理由を聞いてもいいか。チトセはまだしも、ヨミとジュハはまだ購入代金の支払いも終わっていないんだ」

 このときは負債を理由にしたけど、本音を言えば奴隷契約を手放すのが惜しかった。せめてヨミとジュハは手元に……、と思ったことを告白する。

 チトセは金貨5枚だったけど、ヨミとジュハは合わせて金貨100枚。
 それだけのお金を払って手に入れた奴隷契約という権利を「はい、オッケー」と手放すのはさすがに抵抗があった。

「理由はふたつ。まずボクはこれから、ホークスブリゲイドのメンバーに接触して、移籍を匂わせる。これは情報を引き出して買収するためだ。そのときに奴隷契約が邪魔になる。もう一つはダリスの懐の広さを見せるため」
「懐の広さ?」
「買収するにはお金があればいい。だけど、しっかり仲間に引き込むためには、その先にも人参をぶら下げておく必要がある。成果を上げれば奴隷でさえも重用される、それなら自分だってきっと、ってね」

 それを聞いてダリスはピンときた。
 これは『まず隗より始めよ』というヤツだ。高校時代に漢文で習った。
 確か、有能な人材を集めたいなら、まず身近にいる者を優遇することから始めなさい、という意味の中国の有名な故事。

 この世界の感覚では、奴隷とは主人の持ち物であり、奴隷がいかに役に立とうとも優遇されることなど、ましてや奴隷から解放されることなどありえない。

 その『ありえない』を実践することが、『身近にいる者を優遇する』になる。
 ダリスは一拍悩み、すぐに結論を出した。

「なるほど。わかった、さっそく明日にでも契約解除の儀式をやろう」

 契約解除の儀式には、奴隷契約の証文と、奴隷本人が揃っている必要がある。
 チトセだけはこのままやってしまうこともできるけど、三人一緒にやった方が儀式の準備をする手間が省ける。

「決断が早くて、素晴らしいね。そうそう。メンバーを買収するときは、ダリスのスキルを使わせて」
「おお。優秀なステータスを持ってるヤツを選べばいいんだな?」

 ここしばらく出番がなかったダリスのスキル『真・鑑定』に、やっと活躍できる場面がやってきた。戦闘力をはじめ様々なステータスを見ることができる優れもの。
 本人もまだ気づいていない隠れた才能さえも、ダリスのスキルにかかれば丸裸。

 意気揚々と返事をしたダリスに、チトセは慌てて訂正をいれてきた。

「ちがう、ちがう。逆だよ、逆」
「逆?」
「別に戦闘要員が欲しいわけじゃないんだ。そこそこモンスターを倒せて、素材収集ができれば十分」

 なんだそれは。『そこそこモンスターを倒せて、素材収集ができれば十分』って、ホークスブリゲイドに所属しているような冒険者なら、誰だってそれくらいのことはできるだろう。

 せっかく、スキル『真・鑑定』の出番だと思ったのだけど、これでは……。

「それなら、別にスキル使わなくったって――」と、ちょっといじけ気味に返事をしたダリスに、チトセが理由を説明する。

「なるべく、ホークスブリゲイドで不遇をかこっている人がいいんだ」
「そうか。冒険者として有能でない方が、クランでは肩身が狭い」

 今いる場所を居心地が悪いと感じているなら、引き抜くハードルは大きく下がる。

 そのためにステータスを見る必要があるのだと理解した。
 戦闘力が低い、具体的にはD以下を目安として、ほかのステータスも低ければプラス査定。今、求められているのは、そういう鑑定だ。

「そういうこと。それとね、ダリスにはお金を集めて貰いたいんだ」
「買収に使うんだな。いくらだ?」

 お金集め、まさに経営者の仕事といったイメージがある。
 あくまでもイメージだけど。

 そのときの手持ちは、金貨100枚ぐらいだった。
 確かに軍資金としては心許ない。倍はあった方がいいだろうか、などと考えていたダリスはすぐに度肝を抜かれることになる。

「向こうのメンバーがどれくらい貰っているかにもよるんだけど、金貨1000枚あればさすがに足りるんじゃないかな」
「ぶっ!! せ、千枚!?」

 あのときは、おもわず噴き出してしまった。
 それも仕方ないことだ。想定の十倍の金額が飛び出してきたのだから。
 ホークスブリゲイドのメンバーが思っていた以上に安い報酬で働いていたので、結果的に金貨500枚の借金で済んだ。本当に良かった。

 いや、半分になったところで、ものすごい大金であることに変わりはないけど。

「そう。千枚。会社やるのに一億円くらいの借り入れ普通でしょ」
「普通、なのか」

 そうなのか。借金一億円は普通なのか。
 何度、頭の中に問いかけても答えが返ってくるはずもなく。

「あとは……。そうだ、人手が欲しい。冒険者じゃなくて、作業ができる人」
「作業……、あっ、そうか。うろこの盾の量産だな」
「正解。ホークスブリゲイドのメンバーを引き込んだら、素材が手に入るようになる。買収した人達にも手伝わせるから、これまでの何倍も手に入る。もうダリスの内職でどうこうなるレベルじゃなくなる」

 以前、一カ月で五十個作ったときは、正直ここが限界だと思った。
 あのときは、代わりにやってくれる人がいてくれればと、どんなに願ったことか。

「わかった。考えてみる」

 結果的にこの問題はジュハが解決してくれた。
 彼の故郷では、多くの亜人たちが職を探しているらしい。

 亜人というだけで差別をうけている仲間たちに仕事を渡すことができるなら、とジュハは連絡役も買って出てくれた。

 この機会に「グロテスク」だとか「趣味が悪い」だとか散々な言われようだった、盾の表面にあるうろこの色塗りにも挑戦した。どうせなら色んなカラーを用意しようよ、と言い出したのはチトセだ。

「これまでの話って、ホークスブリゲイドに勝つための方法だよな。取引ってことは……」
「うん。ここからが本題。この件が片付いたら――」



💰Tips

【まず隗より始めよ】
 中国で春秋戦国時代と呼ばれる時代のこと。
 燕の昭王が郭隗に「国に賢者を集めるにはどうしたらいいか」と問うと、郭隗は「賢者を招きたいなら、まず私を優遇してください。私のような凡人でも優遇されるなら、と私より優秀な者たちが集まってくるでしょう」と答えた。

 似たような言葉で「死馬の骨を買う」というものがある。
 これは「死んだ馬の骨を大金で買えば、生きた名馬を売りに来る者が現れる」という意味だ。郭隗はこの逸話を引き合いにだして、「まず隗より始めよ」と昭王に自分を売り込んだ。

 郭隗はなかなかやり手の営業マンだったようだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...