絵描き旅行者〜美術部員が、魔術師の絵の世界へ連れていかれました

香橙ぽぷり

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1日目

村編4 元気少女!メミリー(後)

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「はいっ!ただいま。持ってきたよ」
透は2人にそれぞれリュックを渡す。
「透ちゃん、ありがとう」
「悪いな」
2人がそれぞれお礼を言った。
「じゃあ開けてみよう」
透がイスに座ったところで、3人はリュックを開けてみた。
すると…。
優志は鉛筆と消しゴムが入っていた。
鈴良は12色の色鉛筆が出てきた。立派にケ―スに入っている。
透は水彩絵の具だった。
普段部活では、透も鈴良も水彩絵の具だった。
優志はあまり部活に出てこないが、たまに出るときは鉛筆だった。
つまり鈴良は部活の時と画材が違ったのだが、実と違って落ち込んだりはしなかった。
逆に色鉛筆を楽しそうに見ている。
透は水彩絵の具なので水が必要なため、一緒に入っていた水汲みバケツを持って、さっきメミリ―が入っていったお店を見た。
建物の柵に付いている蛇口を思い出したのだった。
透は立ち上がってその建物の方を向くと、鈴良達を振り返って言った。
「わたし、ここの人に水もらっていいかどうか聞いてくるね」
そして建物に向かった。

「こんにちは―。絵の具をとくために水が欲しいんですけれど、外の蛇口から少しもらってもいいですか?」
入り口で透が中に向かって大きな声で率直に聞くと、店の奥にいた人が答えてくれた。
「うん、いいよ。絵描きさん。あと、イスは絵が描き終わったら中に持ってきてね」
その人は30歳くらいの男の人だった。眼鏡をかけた優しそうなおじさん。
建物の中にはこの人しかいなかったので、この人がさっきメミリ―が言ってたトロルおじさんだと透はわかった。
その人に透はお礼を言った。
「はい。貸してもらってありがとうございます。お水いただきますね」
そうトロルおじさんに頭を下げて蛇口に水を汲みに行った。
そして透は鈴良達と絵を描き始めることができたのでした。

「できた!」
絵は3人ほぼ同じ頃できあがった。
優志もなんだかんだ言っていても、絵は真面目に描いていた。
3人とも完成した自分の絵を見ていると、突然、ポケットに入れていた電話が透の手に飛んできた。
「えっ、なに?」
透は驚きの声をあげる。
鈴良・優志も驚いて電話に注目した。
見ると、星型のボタンが光っている。
透は広げていたスケッチブックを閉じて、そのボタンを押した。
そして電話を手に持ったまま、返事をした。
「はい。透です」
するとすっごく元気な明里の声が聞こえてきた。
『透ちゃん?あたしだよ、明里』
わあ。明里先輩だ。
透は驚きながらもうれしかった。
『あたし達はね、結構楽しんでるよ。いい山なんだ。
 透ちゃん達はどんなところにいるの?』
透ははずんだ声で答える。
「わたし達は、おじいさんに村で絵を描くよう頼まれたんです。
 それで今、村の入り口で絵を描いてたんですよ」
すると実と星成の声も聞こえてきた。
『透先輩!元気そうですね』
「実くん、星成くん!」
透はさらにうれしくなる。
透にとって、先輩の明里も大好きだし、自分より年も背も小さい実と星成は仲間であり、弟のよう
な大事な存在なのだった。
「うん。とっても楽しいよ。村の人もいい人達だし」
透がそう話しているのを、鈴良は自分も明里達の声が聞けてうれしそうに見ていたが、優志はさっきまで機嫌が良かったのになぜか、楽しそうに話している透を見てまた不機嫌になってきた。
それで優志は鉛筆をリュックにしまい、スケッチブックを持って立ち上がった。
そしてさっききた道を黙って歩き始めた。
透は電話に夢中で気付かなかったが、鈴良はすぐに気付いた。
そして透に教えた。
「透ちゃん、野村くんが…」
透はその声で顔をあげると、歩き去っていく優志が見えたので慌てた。
「あっ!優志くん、待って!」
透がそう言ったものの、聞こえていないのか優志は立ち止まりも振り向きもせず、どんどん行ってしまう。
どうしよう。優志くんが行っちゃうよ。
でも電話が……。
少しの間迷ったが、透は優志を追いかけることにした。
そこで明里達に謝った。
「あの…、ごめんなさい。また後で電話してもいいですか?」
すると明里が明るく笑いながら言うのが聞こえてきた。
『あ。別に特別用があったわけじゃないから、そんなに気にしなくていいよ。でもひまがあったらぜひかけてちょうだい』
「じゃあ今夜かけますね。すみません」
そう最後に言って星型のボタンを押すと、光が消えた。
明里先輩達に悪いことしちゃったな。
でもとにかく優志くんを追いかけなくちゃ。
そう思って急いで道具をしまい、水が入ったバケツとスケッチブックを持って追いかけようとしたが、イスを返すことを思い出した。
「あ、イス返してこなきゃ」
そこでとうに道具をしまい終えて透を待っていた鈴良が、
「私がイス片付けてくるわ。あの店に持っていくんでしょ?
 あ、その水もなんとかしてくるから貸して」
そう言って透の水汲みバケツを受け取った。
そして透に笑顔でこう付け加えた。
「透ちゃんは足速いから、野村くんに追いついておいて。いなくなったら困るしね」
「うん、わかった。ごめんね」
透はうなずいて、優志を追いかけ、メインストリ―トを全速力で走った。

透はすぐに優志に追いついた。
優志の隣を歩きながら話しかける。
「優志くん、突然先に行っちゃうんだもん。びっくりしたよ」
透は少し怒ったふうに言ったが、優志はひょうひょうと答えた。
「長々と電話しそうだったし、待ってるの疲れるからな」
透は気持ちを切り替えて聞いた。
「それで、今どこに向かってるの?」
「宿」
あまりにもあっさりと言うので、透はびっくりして聞いた。
「え?もう帰るの?まだ来たばかりなのに」
優志は透の言ってる意味がわかって、説明する。
「村を見るにしても、とりあえず荷物は置いてこないとな。
 もう今日は絵を描いたんだし、これ、じゃまだろ?」
そう言って持っているスケッチブックを振った。
「あ、それもそうだね」
透は納得した。

優志はとあることを思い出した。
「ところで、『とおる』ってどういう字書くんだ?」
そういえば聞いてなかったけ。聞こうとしたらこの村に着いたんだよな。
突然聞かれて透は驚いたが、ちゃんと説明する。
「え?わたしの名前?透明の『透』だよ」
「それで透か」
優志は頭にその字を思い浮かべて納得すると、今度は鈴良のを聞いた。
「じゃあ、『うずら』はひらがなか?」
えっ!優志くん、まだ勘違いしてる。
「『うずら』じゃなくって『鈴良』ちゃんだよ!」
透は必死に言ったが、優志はまた…。
「?すずか?」
「違うってば―」
2人がそんなことを言い合っていると、鈴良が2人に追いついてきた。
「お待たせ!ちゃんと返してきたわよ。はい!透ちゃん」
鈴良はそう息をはずませて言うと、透に空になった水バケツを渡した。
「ありがとう」
お礼を言ってバケツを受け取る。
「それで…、どこに向かっているの?」
鈴良も同じことを聞くと、今度は透がしっかり答えた。
「サ―ラの宿に向かってるの。村を見て回るのに、荷物があるとじゃまだから置いてこようって優志くんが」
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