みかんちゃんの魔法日和〜平和な世界で暮らす、魔法使いの日常

香橙ぽぷり

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5年生5月

みかんちゃんと動物達(後)

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その時、何か声が聞こえてきました。
小さな声だったので、さっきまではしゃいでいたわたし達には聞こえなかったみたいです。
「いたっ…、誰か来てーっ」
川の上を通っている橋の下辺りに生えている草むらから聞こえたようです。
「カンさん、声聞こえたよね」
確認すると、カンさんはうなずきました。
そこで草を分けて見てみると、いたのは白い猫さんでした。
さっきの声だったら女の子だね。
見ると右の前足を怪我していて、痛そうです。
わたしはその子に尋ねました。
「どうしたの?大丈夫?」
すると痛そうな顔をしながらも、説明してくれました。
「昨日の夜ここに落ちちゃったの。
その時に前足を痛めちゃって…」
ここは隣が道路なのですが、その道路と河原の高さが1番違う場所です。
ここから落ちたら怪我しちゃうね。
上の道路を改めて見て、わたしはそう納得しました。
カンさんは、その猫さんに聞きます。
「お嬢さん、飼い猫かい?
野生の猫なら、ぎりぎり着地できそうな高さだし」
その言葉に、猫さんはうなずきました。
わたしはそんな話を聞いて、これからどうしたらいいのか考え付きました。
「飼い主さんがいるなら、家に連れてってあげるよ。家はどこ?」
そうわたしが聞くと、さんはびっくりした顔でわたしを見ました。
「あなた、わたしの言葉がわかるんですか?」
あ、そっか。普通はお話できないもんね。
そこでわたしは、まだ自己紹介をしていなかったことに気が付きました。
「わたしは魔法使いなの。名前はみかんです」
そういうと、猫さんは意外な返事をしました。
「ああ。あなたがみかんちゃんですか。
友達から話を聞いてますよ。会えてうれしいです」
「え」
わたしが驚いていると、カンさんが教えてくれました。
「みかんちゃんは動物仲間でも有名なんだぜ。
こうやってオレ達みたいな友達がいっぱいいるだろ?
人間だけど仲間みたいでさ」
そういってもらえて、わたしはとってもうれしくなりました。
さっきのもやもやしていた気持ちがすっかりなくなったよ。
やっぱり友達になれるって最高だよね。
そして猫さんも自己紹介をしてくれます。
「私はリリーといいます」
それから困った顔をして、さっきの話に戻りました。
「今家には誰もいないんです。
家族みんなで、告(つぐる)さんのお父さんの家である、法事というのに行っています。
本当は私も一緒に出掛けたんだけど、途中ではぐれてしまって、家に戻るところだったんです。
響香ちゃん達、心配してるでしょうね」
そうリリーちゃんはため息をつきました。
迷子になっちゃって、怪我までしちゃうなんて大変だったね。
そうリリーちゃんがかわいそうな気持ちになってから、わたしはたずねました。
「そうなんだ。お家の人はどれくらいで帰ってくるの?」
「次の日曜日に帰ってくるはずです」
そう聞いてわたしは考えました。
今日は木曜日だから、あと3日もあります。
お家に連れてっても、怪我をしたまま1人で何日もいるのは辛いよね。
かといって、わたしもお母さんも、怪我を治す魔法は使えません。
それは状態魔法に入っている、とっても難しい魔法です。
状態魔法は2種類あります。
状態変化魔法はその物が普通に変わる範囲で変える魔法。
例えば水をお湯にしたりすることができます。
それから状態維持魔法。
普通なら溶けちゃう氷も、その魔法をかければずっと氷のままにしておけます。
怪我を治すというのは、怪我をしていない状態にするということで、この種類なんだって。
お母さんは状態魔法を使えるのですが、怪我を治す魔法は特別に勉強をしないと使えないそうです。
普通は覚えた種類の魔法は、自分の魔法の力の分だけ自由に使えるのですが、特別な勉強がいる魔法もあるんだって。
わたしはまだ夢魔法しか使えないし…。
すごく素敵な魔法だけど、1種類しか使えないと、叶えたいことがある時に、夢魔法に入るようにおきかえるのが大変かな。
そんなわけで、怪我を治してあげることはできません。
どうすればいいかな?
考えて考えて、わたしは名案を思い付きました。
「飼い主さんが帰ってくるまで、わたしの家に来ない?
手当てもできるし」
「え?いいんですか?」
わたしの提案に、リリーちゃんはびっくりした顔で聞きます。
「うん!」
わたしはしっかりうなずきました。
魔法使いは動物を飼っちゃいけないって、今までは家に連れて行ってもだめでした。
でも今回は、リリーちゃんの飼い主さんが帰ってくるまでの3日間だけだもんね。
大丈夫だと思います。お母さんもいいっていってくれるよね。
張り切るわたしに、リリーちゃんはほっとした顔でお礼をいいました。
「ありがとう。よろしくお願いします」
そう決まったら、リリーちゃんの怪我が痛まないように、気を使いながらだっこします。
そんなわたし達を見ていたカンさんが、思いがけないことをいいました。
「みかんちゃん、今日空き缶はオレがゴミ箱に入れてくるよ」
「え?どうして?」
わたしが聞くと、カンさんはしっかり説明してくれました。
「手当ては早い方がいいだろ。
空き缶だから、オレ1人で運べるよ」
そう気を使ってくれます。
それから決定的な1言をいわれてしまいました。
「それに…、そうやってリリーちゃんを持っていたらほうきで飛べないだろ。
みかんちゃん、手放しはできないし」
「あ、そっか」
わたしは納得しました。
リリーちゃんを抱っこしていたら、ほうきの柄を握れません。
わたしはまだ手放しでは飛べないんです。
かといって、怪我をしているリリーちゃんに、自分でつかまってもらうわけにもいかないしね。
こういう時、魔法の絨毯を使えたらいいのになあと思います。
ほうきは普通1人用の乗り物です。
他の人を乗せたい時は、その魔法の絨毯を使うんだよ。
わたしもほうきに乗れなかった時は、お母さんに絨毯に乗せてもらっていました。
あれならリリーちゃんも楽に乗れるはずです。
でもその魔法の絨毯を使うのはすごく難しくて、わたしはやったことさえありません。その前に、もっとほうきをうまく乗りこなせるように練習しないとね。
そういうわけで、これから歩いて帰らなくちゃいけません。
「歩いて帰るならなおさらさ」
カンさんの言葉に、わたしはうなずきます。
リリーちゃんの手当てを早くするなら、カンさんに頼んだ方がいいかな。
カンさんは公園のゴミ箱の場所を知っているし、大丈夫だよね。
わたしはそう考えて、カンさんにお願いすることにしました。
「じゃあ、カンさん。よろしくお願いします」
そうカンさんに空き缶の入った袋を渡します。
「おうっ。任せてくれよ。
みかんちゃん、またな。リリーちゃんも元気で!」
カンさんはそういって、ぱっと飛び立ちました。
そしてわたし達に翼を振って、飛んでいきます。
「カンさん、ありがとう!またねー」
わたし達はそう見送ります。
それからリリーちゃんに向き直っていいます。
「さあ、わたしの家に行こう」
カバンを背負って、ほうきを小脇に抱えます。
そしてリリーちゃんとお家に向かいました。
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