神の暇潰し~装飾品の中の霊獣達~

羽人

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一章

4話

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『開戦しましたか……。これからはいつどこで戦闘になるかわかりません。なので主人にはこれを常時身に付けていただきます』

開戦を宣言された数分後、意識の戻ったロゼと俺は地面に腰をおろし話していた。
そしてロゼの手にはお土産屋で買えるような木刀が握られている。

『この一ヶ月、主人の部屋で見つけたこの木剣に私の魔力を毎日欠かさず込めてきました。この木剣は並みの鉄よりは硬くなっていますし、壊れにくくもなっています。なので自衛のために必ず肌身は離さず持ち歩いて下さい』

渡された木刀には持ち手の部分に革が巻かれていて手にしっくりくるように馴染んでいる。
近くにある岩を叩くとコンコンと音がなる。

「ありがとう。死なない程度に頑張るよ」
『はい。それでは特訓に戻りましょう。これからは実践形式を増やし自衛の手段をよりいっそう習得していただきます』

開戦されても特訓は続く。
文句はないこれも死なないためにやらなければいけないことなのだ。



ーーーー
朝、通学路を歩いていると、リア充の多いこと多いこと。
おはよー!そんな事を大きな声で言い合いながら歩きだすカップル。
毎朝この光景を見るんだ嫌でも慣れた。
だからと言ってこのリア充の多い光景はあまり見たくない。

『毎朝思いますが、人の多さにビックリを通り越して呆れますね』
「まぁ日本には一億人以上人がいるからな」

同じ制服に身を包む人達が多い通学路で他の人に聞こえないトーンでロゼと話す。

『こんなに人がいると近くに契約者がいてもわかりませんね』
「確かにな。場所がわかるっていっても装飾品を持つ奴までは特定できないなら人が多いと困るよな」

中指に嵌まっているロゼの宿る指輪を見ながら言う。
この指輪は契約者がわかる物でもありロゼの宿る物でもある。だからなのなこの指輪、中指から外れないのだ。
最初の頃こそ同級生に色々言われたが今になっては興味が失せたのか何も言ってこない。

『それにしても主人、何故周りの者達のは異性同士で学校に向かっているのに、主人は異性が隣にいないのですか』
「お前完全にわかってて言ってるだろ」

ニヤニヤしながら言うロゼを睨む。

『そこは異性ならお前がいるじゃないか、とこのように私の手を握るのが普通じゃないんですか?』
「いきなり手なんか握るな!」

ロゼの細くて柔らかい指が自分のてに絡み付いてくる、その瞬間俺はロゼの手を振りほどき叫ぶ。
周りからは完全に変人を見るような視線がこちらに向いている。

『いきなり叫んでは変人に見られますよ?あっもう遅かったですね』
「……お前のせいだよ」

完全に周りの人達に変人認定された俺はキモい等の陰口を聞きながら近くなった門を通り抜け学校の敷地内に入る。

「お前のそういう所嫌いだ」
『私は主人のそういう所好きですよ』

あー言えばこう言う、ロゼはいつだってそうだ。もう慣れたもの、俺はロゼの言うことを無視して教室に向かう。
教室の前には他の男子が集まって教室の中を見ていた。
そして教室に近づいていくと徐々に中指に嵌まった指輪か熱を持ち震えはじめる。

『主人、契約者です』
「これが契約者が近くにいるときの反応か」

教室のドアの前にいる男子達を掻き分けて教室に入ると、中には昨日までは居なかった茶髪で活発そうな可愛い少女が教室の真ん中の机に座っていた。
少女の周りには男子や女子が集り質問攻めをしている。これだけ人が多ければ契約者だと特定はされないだろう。
そう思い真ん中の机を避け遠回りに自分の席に向かっていると、ふと少女と目が合う。少女の顔には見つけた、そう書かれているかのように少女の目は俺をとらえている。

「ヤバイな……」

俺は警戒しながら少女を横目で監視する。この場で何かをしてくることはないだろうが、念のため監視は続けることにする。



ーーーー
昼休み、俺の前には朝のHRで転校生と紹介された少女、朝霧麻衣が立っている。

「ちょっと二人きりで話があるんだけどいい?」
「嫌だ……。他のやつと話せばいいんじゃないか?」

俺は目の前に立つ朝霧と二人きりになりたくなくて他の人と話すことを勧める。
すると周りにいた女子達が最低等の文句を言い始め、男子達は殺気のこもった視線を向けてくる。

「他の人じゃなくて私は貴方と二人きりで話したいの」

余計に男子からの視線に殺気がこもる。
このままじゃ、放課後や休み時間に男子に何をされるかわかったもんじゃない。
俺は席から立ち上り目の前を歩き始めた朝霧についていく。
後ろから男子の殺気のこもった視線が飛んでくるが無視をする。
もしかしたら今から命をかけた戦いをするかもしれないのだから。

階段を登り扉を開くと屋上に出る。
他に人はいない。二人きりで話すにはちょうどいい場所だ。

「そんな警戒されてたら話なんて出来ないんだけど」

警戒するなと言われる方が難しい。
俺は契約者で相手も契約者、最後の一人になるまで戦う運命にあるのだ。

「先に言っておくけど私に戦う意志はないの。貴方を見つけたのも偶然だし、今だって襲われるんじゃないかってビクビクしてる」
「それを信じろと?」
「信じたくないなら信じなくていい。ただ伝えて起きたかったの。私は貴方と戦う気はないって」

朝霧は俺から数歩離れて近くにあった椅子に腰かける。

「それにいつか戦う事になるかもしれない相手でも、相談できる相手が欲しかったのよ。こんな事をなにも知らない人に相談しても変な目で見られるだけ」
「まぁ確かに……」
「だから相談相手が欲しかったし、貴方を見つけたときはちょっと嬉しかったの。同じ境遇の人と会えたって」
「なんじゃそりゃ、俺達はいつか殺しあうんだぞ?そんな相手に会っても嬉しくなんかならないだろ」
「そうかな?いつ戦うかわからない、でも今は戦わない。それがわかってれば相談相手に位なれるわ。それに最後の二人になるまでチームを組んだりしてもいいんじゃない?」

確かに同じ境遇の人とチームを組むのはいいかもしれない。一人で最後の一人になるまで戦うよりも、チームを組んで少しでも生き残る可能性をあげるのはいいとは思う。しかしいつ裏切られるかわからない、そんなリスクを背負ってまでチームを組むかと言われれば否だ。

「私は願い事なんて決まってないの。なのにこんな事になって本当に迷惑極まりないわ」
「願い事か……。俺も決まってないんだよな。それに願い事が叶うのか本当かもわからないし」
「奇遇ね、私も同じ考えよ。いきなり最後の一人になるまで戦え、最後の一人になったら願い事を叶えるよーって言われても疑うことしかできないわ。無条件で信じるって方がおかしいわ」
「そんな時のための聖霊や聖獣じゃないの?普通ならこんな聖霊や聖獣が目に見えるだけで異常事態が起こってる事はわかるし」
「それはそれ、これはこれよ。本当に大事なことは願い事が叶うかどうか、そして本当に負けたら死ぬのか、相手を殺さなければ勝ちにならないのかその三つよ」

確かにその三つは重要だ。負けても死なない、殺さなくても勝てる。それならそれが一番なのだ。

「だからここはチームを組みましょうよ。二人ならもしもの時にも勝てる可能性が高くなるわ」
「本当にお前が俺と戦わないってなら考えないでもない」
「まぁすぐに信じろとは言わないわ。ゆっくりは困るけど、自分の目でみて答えを出して」
「わかった。とりあえず保留でこの話は終わりでいいか?」

俺がそう言うと朝霧は椅子から立ち上り入り口に向かって歩きだす。

「じゃあちゃんと考えといてね?後、私教室でも話しかけるから男子達は自分でどうにかしなさいね。毎回あんな殺気出されてたら疲れちゃうわ」
「はぁ!?あんなのどうしろっていうんだよ!」
「そこは任せるわ。話しやすい状況にしてくれればいいわ」
「そんな無責任な……」

実際問題、教室で話しかけてくるのが間違いなんだ。話したいなら今回みたいに人のいない場所、それか学校が終わってからでもいい。

「前途多難だな……」

俺はどうすれば朝霧と教室で話せるのか、それだけを考えて屋上から出て教室に向かう。




ーーーー
「ねぇ正人、放課後時間あるかしら」

さっそく話しかけてきた朝霧、そして呼びすて。周りからの殺気が凄い。

「名前教えてないんだけど……」
「そんなの誰かに聞けばすぐにわかるわ。それより質問に答えて。放課後はひま?」
「暇じゃない。特訓することがあるんだ」

周りから聞こえないように二人は小声だ。

「朝霧さん。今日朝霧さんの歓迎会することになったんだけど来てくれるよね?」

朝霧の後ろ、俺からすれば目の前に男子数人が立っている。一番前に立つ男子生徒、名前を成瀬俊介。
このクラスで一番のイケメンで彼女持ち。しかし彼女ができてもすぐに別れ新しい人と付き合いはじめる。
それを理由に一部の女子から嫌われているが、その一部の女子を除くと大人気だ。

「ごめんなさい。今日は用事があるのよ」
「そこのオタクに放課後暇か聞いてたみたいだけど?」

こちらを見下したように一瞬視線を向けるが、すぐに朝霧に対して女子に向けるイケメンスマイルで話はじめる成瀬。

「私の用事は正人と一緒に帰る事だもの」
「朝霧さんが、クラスでも嫌われもののオタクと?面白い冗談だね」

何が面白いのか、クスクス笑う成瀬。それに合わせて周りにいた女子や男子も笑いはじめる。

「そのオタクと関わってたら朝霧さんまで嫌われ者になっちゃうよ。だからそんなオタクは放っといて僕達と一緒に行動しようよ」
「私は貴方達より正人と一緒にいたいの。そういう事だから歓迎会は行けない」
「そう、それなら歓迎会はやめにするよ。そのオタクが嫌になったらいつでも言ってよ。朝霧さんなら友達として相応しい」

何様なのか、別に俺は成瀬みたいな奴と友達になろうと思わない。それ以前に友達などいても時間の無駄だ。俺は本を好きなときに読めればそれでいい。

「何様なのかわからないけど、君は少し人の気持ちを考えた方がいいわ」
「オタクの気持ちなんて知りたくないよ。それに僕は君じゃなくて成瀬俊介。名前で呼んでほしいな」
「私は仲良くない人は名前でも名字でも呼ばないの」

そう言うと成瀬はニヤニヤしながら朝霧から離れていく。

「今日の放課後、特訓する場所についていくわ。そこで話しましょう」
「いや邪魔なんだけど……」
「私の契約している聖獣を紹介するわ。それとこれからの事を話しといた方がいいと思うし」
「特訓の邪魔だけはしないでくれよ。死にたくないから特訓してるんだ」
「わかってるわよ。私も少し鍛えないとヤバそうだから一緒に特訓するわ」

何を言っても一緒に来るのだろう。断るだけ無駄だ。それなら一緒に来てもらって話をしながら特訓した方がいい。



ーーーー
放課後、毎日特訓している山の中にある広場。この一ヶ月人と会ったこともない。そんな場所に今日は俺とロゼ、そして朝霧がいる。

「山の中にこんな場所があるなんて特訓するにはいいわね」
「偶然見つけたんだ。それより話す事があるんじゃなかったのか?」
「そうね。ヒューイ出てきなさい」

朝霧がそう言うと、朝霧の耳についているイヤリングが光だし、俺の目の前に小さな猿が現れる。

『やぁやぁ正人。僕はヒューイ、麻衣の契約獣さ!』

とてもテンションが高い。目の前にいるヒューイはジェスチャーを交えながら自己紹介をする。

「私の装飾品はイヤリング。そして装飾品に宿る聖獣ヒューイ。正人は中指についている指輪が神に渡された装飾品よね」
「ロゼ」

俺が声をかけると指輪が一瞬光り目の前にロゼが現れる。

『お初にお目にかかります。私はロゼ、主人の契約霊です』

朝霧がロゼを見て俺に羨ましそうな視線を飛ばしている。まぁその気持ちもわからない訳ではない。
俺だったら猿とロゼを選べと言われたら、即ロゼを選ぶ。

『やぁやぁロゼ、僕はヒューイ。聖獣さ』
『ヒューイ殿ですね。私はロゼ、聖霊です』

主人を放ってヒューイと握手しているロゼ。警戒心はないのか……。

「美人な女性ね。ヒューイとは大違い」
「猿可愛いけどな」
「なら交換する?」
「それはやめとく」

俺は挨拶も終わり鞄からジャージを取り出して着替えはじめる。

「羞恥心という物はないのかしら」
「毎回ロゼに見られたら少しは慣れる」

そうは言っても恥ずかしい。手早くジャージに着替えストレッチから始める。すると朝霧もいつの間にかジャージに着替えており、俺の隣に座って真似するようにストレッチを始める。

「体柔らかいのね。私なんて硬すぎて爪先に指すらかからないわ」

足を開き爪先に腕を伸ばしながら言う朝霧。しかしつい最近まで自分も同じだった、いや朝霧よりも酷かったのだ。

「毎日やれば柔らかくなる。俺は今の朝霧より酷かった」
「そうなの?それなら私は正人より柔らかくなるって事ね!」

毎日の柔軟はかなり大事だ。体が硬ければうまく受け身がとれずに大怪我をするし、すぐに体のどこかを痛める。
だから、この一ヶ月俺はどこかしら体を痛めている。
それでも最初の頃に比べてケガをしても少しのケガですむようになってきた。
この一ヶ月の特訓の成果は少しだが意味あるものになっているのだ。

ストレッチを終え次にうつる。次は体を鍛えるために腹筋、背筋、スクワット、基本的な事を三十回の五セットを行う。
まずは腹筋から、と自分のペースでやっていると、

「ふんっ……あっ……うんっ……あんっ……」

隣で腹筋を一回もできずにもがいている、朝霧が顔を真っ赤にしながら喘いでいるのかと思う声を出していた。
俺は無意識に朝霧から距離を離し顔を背けながら再度腹筋を始める。

「ねっねぇ……なっ……んでーー」
「その声を出すのやめてくんない!?」

俺は朝霧に顔を向けずに叫んだ。

『やぁやぁ正人、麻衣の声を聞いて君のご子息がーー』
「何言ってるんだこの猿は!」

俺はニヤニヤしながら近づいてきたヒューイの頭を鷲掴みにして遠くに放り投げるが、ヒューイは危なげもなく着地すると遠くからニヤニヤしながらこちらを見ている。

「今日は本当にやりづらい……」

遠くからニヤついているヒューイ、近くで喘ぐように腹筋をしようとしている朝霧。本当に今日はやりづらい……。
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