神の暇潰し~装飾品の中の霊獣達~

羽人

文字の大きさ
5 / 7
一章

5話

しおりを挟む
朝霧が学校でも、特訓する時も着いてくるようになって一週間。いつものように教室に入ると男子からの嫉妬のこもった視線、そして女子のヒソヒソとこちらを窺う視線。この一週間、毎日登校し教室に入ると男子と女子からの視線に襲われるのだ。
その視線に襲われる原因、朝霧は自分の席ではなく俺の席に座り、こちらに手を振っている。

「今日も視線が凄いわね。毎日疲れない?」
「原因のお前がそれを言うな……。そしてヒューイ、俺の机の上で寝るな」

前半を呆れながら、後半を小声で机で寝ている猿、ヒューイに向け言う。

『やぁやぁ正人、ここの机はちょうど日か当たって暖かくていいね』
『ヒューイ、主人の邪魔になります。すぐに退けなさい』

欠伸をしながら言うヒューイの頭を指輪から出てきたロゼが鷲掴みにする。
宙に浮いたヒューイが暴れるが、体格さの問題でロゼにはなんの効果もない。

「本当にロゼちゃんは正人の事が好きなのね」
『私の主人ですから。そう言う朝霧様もヒューイの事がお好きなようですが』
「なっ……やめてよ。そんな猿普通よ普通。誰が好き好んでこんな猿なんか……」
『そんなに照れなくてもいいんだよ?僕も麻衣のこと大好きさ!』

朝霧がヒューイと言い合いになりそうな所で教室に担任が入ってくる。
朝霧が俺の席から移動したので自分の席に座り荷物を机の上におく。

「日直よろしく」   

担任の一声で今日の日直が号令をかける。

「起立、礼、着席」

今日も騒がしい一日が始まりそうだ。



ーーー

昼休み、朝霧が他のクラスの男子に呼び出された事で、俺は久しぶりの一人で過ごせる昼休みを満喫していた。
誰もいない屋上、購買で買ったパンと、コーヒー牛乳。実に最高な昼休みである。

『学校で二人きりになるのは久しぶりですね。この一週間、必ず朝霧様とヒューイが隣にいましたから』
「久しぶりすぎて泣きそうだ。自分一人だけの昼休みがこんなに最高な物だったなんて……」

瞳をウルッとさせながら買ったパンにかぶりつく。口の中でスパイシーな香りと揚げたパンが見事にマッチしていて、それをコーヒー牛乳で流し込む。至福の一時だ。
しかしそんな至福の一時も終わりを告げる。
屋上の扉を勢いよく開け、こちらに近づいてくる一人の女子生徒。

「本当に最悪!正人、聞いてよ!」
「俺の至福の一時が……」
「人の話聞いてる!?」

俺の至福の一時を破壊した相手は目の前で何故か怒っている朝霧。ようやく朝霧が他のクラスの男子に呼び出されて自由だと思ったのに……。昼休みが終わるまでは粘れよ名も知らぬ男子……。

「呼び出されて開口一番、正人の悪口言われたの!あのオタクと関わってたら友達できないよって!」
「現に友達いないじゃん」
「正人が友達よ!って恥ずかしいこと言わせないでよ!」

顔を真っ赤にしながら肩を思い切り殴ってくる朝霧。女子とは思えぬその力に俺は若干引きながら肩を抑える。

「ごめん……。でも本当に酷いのよ!」
「わかった、わかったから落ち着け」
「ふぅ……。それよりお昼先に食べないでねって言ったよね?」

俺の手には一口かじったカレーパンとストローの刺さったコーヒー牛乳。それを見た朝霧は睨んでくるが、呼び出されていつ終わるかもわからない者を待つほど優しくない。というより久々に一人で昼休みを過ごせると思っていたのだ。それを簡単に壊して目の前にいる朝霧に少しだけ文句を言いたくなるが、無意識に屋上に来ていた俺も悪い。

「怒ったらお腹すいてきた!そのカレーパンちょうだい?」
「自分の弁当食べろよ」
「教室に忘れたのよ。後で私のお弁当あげるからカレーパンちょうだい」
「は?あのダークマターを俺に食えと……?」

朝霧の弁当はダークマター、それが俺の中にある朝霧の弁当を見たときの感想だ。
真っ黒な卵焼の形をしているが実はおにぎり、ウインナーかと思えば卵焼など、基本的に真っ黒な朝霧の弁当はカオス、そしてダークマター。そんな言葉が似合うほどの弁当なのだ。
そんな事を考えていると手に持っていたカレーパンをヒョイッと奪われ、目の前にはすかさずカレーパンを頬張る朝霧。

「私の……モグモグ……お弁当はダークマターなんかじゃ……ムグムグ……ないわ!」
「食うか喋るかどっちかにしろ」
「モグモグモグモグモグモグ」
「食うのかよ!もういいや、そのカレーパンはやる。でもお前の弁当はいらない」
「ング……。遠慮しなくていいのよ?今日のお弁当は自信作なんだから!」

自信作、その言葉を普通の女子に言われたら楽しみになるんだろう。しかし目の前にいるのは朝霧、そして朝霧の作る弁当はダークマター。そんな相手に自信作と言われても楽しみにならないどころか危険を感じる。

「その話は水に流して、今日の特訓は休みだから。ちょっと行きたい所があるんだ」
「えっ昨日言っといてよ!せっかく特訓の後に食べれるようにクッキーを作ったのに」

良かった、本当に良かった。弁当がダークマターならクッキーもダークマター。
そんな物を食べなくて済むのだ。本当に今日の特訓休みにしてよかった。

「行きたい所ってどこ?」
「それを言ったら着いてくる気だろ」
「行く場所にもよるわ。興味なかったら行かないし興味があれば行く」
「……本屋だよ。読んでる本の新刊が出るのと何か面白そうな本があるか見に行くんだ」

そう言うと目を輝かせ始める朝霧。
この目は確実に着いてくる、そんな目だ。

「私も行くわ!私も新しい本買おうかなって思ってたのよ」
「絶対嘘だろ……。着いてきてもいいけど邪魔するなよ」
「わかった!邪魔しないし大人しくついていくわ!」

こうして朝霧が本屋に着いてくることが決まった。どうやら特訓がない今日も朝霧と一緒に行動するはめになるみたいだ。



ーーー
放課後、朝霧から逃げるように本屋に急いで向かったが、本屋に到着すると俺より後に出たはずの朝霧が本屋の前に立ちこちらを睨んでいた。

「私も一緒に行くって言ったよね?」
「えっと……そうだっけ……?」
「はぁ……。そんなに私と一緒に行動するのが嫌なの?」
「嫌ってわけじゃ……」

ただ毎日一緒にいる必要はないんじゃないのか、何かあれば携帯で連絡するとか、そんなのでいいんじゃないかと思う。

「もういい。私今日は帰る」
「えっ……いや……」
「私、正人のそういうところ嫌い」

そう言うとそれ以上なにも言わず横を通りすぎる朝霧。何か声をかけようとするが口が開かない。そのまま朝霧の背中が見えなくなるまで俺は朝霧の背を見続けた。

「俺が悪かったのかな……」


あんな怒ったのを見ると、自分が悪かったと思ってしまう。しかし本屋に行くのは俺の趣味なのだ。

「今日は本を買う気にならないな」

俺は本屋を背に歩き出す。向かう先も家にまっすぐ帰る気もない。今日は街をぶらつこう。



ーーー
『マスター、見つけたぜ。あの小僧、契約者だ』

ビルの上に一人の男と一匹の大きな蛙、男は双眼鏡を目に当て、隣で騒いでいる蛙の指差す方に双眼鏡を向ける。

『俺っちが契約者を見分けれるのが得意でよかったなマスター』
「そうだな。得意なのがそれだけじゃなかったらもっとよかったがな」
『仕方ないじゃないか。俺っちの能力封印されてるんだぜ?』

双眼鏡に写るのは一人の少年、学生なのかブレザーを着てどこかに向かっているのか少し速い速度で歩いている。

『仕掛けるか?』
「そうだな。あの少年に俺の願いを叶えるための生け贄になってもらおうか」

男と蛙は少年を標的に動き出す。
少年と男、戦闘開始へのカウントダウンが始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...