【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん

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第6話 「力の目覚め」

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「なんとかしようったって、なんとかなるの?」

無邪気にそう言ってのけたアキュラに、私はおうむ返しするしかなかった。
それともこの精霊王には何か考えがあるのだろうか。

「この庭に住まう精霊たちに事情を聞いたのだが、どうも魔術的な痕跡があるようだ」

思わぬ返答に私は驚いた。

「この庭に精霊がいるの?魔術的な痕跡って?どうすればいいの?」

「まぁそう一度に聞かれても困るよ。順番に説明しよう」

「ああ、そうね。ごめんなさい...」

「いやいや、私が言葉足らずなのが良くなかった。まず、精霊はどこにでもいる。大抵の人間には見えないがな」

「そうなのね。私にはあなたが見えるようになったけど...」

「うん、君は特別だ。本来は君の目にもこの庭に住まう精霊たちが見えるはずなんだ。ただ、彼らは弱っている。だから気配が薄い。私は一応精霊王だからね、彼らの声を聞くことができたのだ」

「なるほど、理解できた」

「飲み込みが早くて助かるよ。次に、魔術的な痕跡だね。これは言ってしまえば、一種の攻撃だな」

「こ、攻撃...?」

急に物騒な言葉が飛び出してきた。

「そう、極めて巧妙に隠蔽してあるが、この庭の変化は人為的な魔法によるものだ。人体への害はないから、嫌がらせ程度のものだがね」

「そう...」

「相当腕の立つ魔法使いの仕業だろう。何か心当たりはあるかな?」

真っ先に浮かんだのはあのミリア・サンフラワーの顔だ。それ以外は正直心当たりがない。
父は政治的には無意味と言っていいほど無害な存在で、政敵がいるという話は聞いたこともない。
となれば、このタイミングの嫌がらせであれば、先の婚約破棄と無関係であるとは到底思えなかった。

「まぁ、件のお嬢さんの仕業なのかもしれないが...証拠はないからな」

私の思いを察したようにアキュラが言った。

「妙なことをするな、という警告なのかしら」

「そうかもしれない。あえて痕跡を残したようにも思える。これほどの腕なら、完璧な隠滅もできたはずだろう」

せっかく忘れようと思ってガーデンに来たというのに、先回りするかのようなミリアの嫌がらせに、忘れかけていた怒りがふつふつと湧き上がってくる。

「気持ちはわかる。だが、まずはどうするか、の話をしようか」

アキュラが優しい声でそう言ってくれた。その落ち着いた声を耳にすると、すっと怒りが引いていく気がした。

「...そうね。今は、わたしにできることをするわ」

「その意気だ。では、わたしとこの庭を修復しようじゃないか」

「そんなことができるの?」

「できるとも。君はこの精霊王とともに在るのだぞ?わりと誇っていいことだ」

「そ、そうなのかな?」

「論より証拠を見せた方がいいね。では、まず目を瞑ってくれるかな?」

「わかった」

アキュラを信じて、素直に目を瞑ってみることにする。

「そうしたら、私から君へと"流れ"が繋がるようなイメージを思い浮かべてほしい」

「な、流れ?」

「そう、川でもいいし、風でもいい」

「わかった。やってみる」

正直自信はないが、大切なガーデンをどうにかできるなら、何でもやってみようという気持ちになっていた。
戸惑いながらも、穏やかな川の流れを想像する。その川がアキュラからわたしへ流れ込んでいく...。

「そう、その調子だ。さすがに飲み込みが早いな」

「そ、そうかしら?」

なんだかわからないが、褒められると気分が良かった。
さらに具体的に、キラキラと光る水と、穏やかな音を想像する...

「よし、いい感じに繋がった。...では、わたしの後に続いて詠唱してみてほしい」

「詠唱?でも、わたしに魔法は使えないけれど...」

「今から使うのは魔法ではないのだ。精霊術といって、精霊を通じて魔力を引き出して行使する技術さ」

「精霊術...」

「ま、理論よりは実践でいこう。さぁ、唱えて。Spiritus Viridis, Reviviscite!緑の精霊よ、蘇れ!

「ス、Spiritus Viridis, Reviviscite!スピーリトゥス・ウィリディス、レウィウィスキテ!

そう口にした瞬間、あたたかなエネルギーの奔流がアキュラからわたしに流れ込んできた。
そうして、それはそのままわたしの指先から庭中に向かってふんわりと拡散していく。
その奔流が触れた草木は、みるみるうちに生気を取り戻していく。

「こんなことが...」

信じがたいことだが、先ほどまでどんよりと枯れ細っていた庭の木々や草花が、嘘のように青々と茂っていた。

「いや、お見事。思った以上の才能があるようだね」

そういってアキュラがぱちぱちと拍手する。
その時だった。

「こ、これは何という奇跡なのか...」

庭園の外から男性の声がしたのだった。
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