【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん

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第12話 「フローズンレイク」

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そのままエルグランデに逗留すること数日、カイルの部下たちが到着した。
わずかに8人ほどからなる分隊だったが、見るからに精鋭揃いだった。
この瞬間も魔獣の猛攻に晒されているという辺境から、分隊とはいえ引き抜くのは大変だっただろう。
襲撃を警戒したカイルが、最大限手を尽くしてくれたに違いなかった。

頼もしい彼らに護衛されながら北の騎士団の拠点「凍結湖の要塞フローズンレイク」に数日かけてたどり着いた。道中は、護衛のおかげか襲撃者の影も形も見えず、平和な道のりだった。もちろん、その道中もアキュラは微塵も手を緩めずあれこれと結界術を私に教え込んだので、暇を感じることは全くなかったのだが...。
おかげで、精霊術についてはかなり要領を飲み込めてきたような気がする。

ここフローズンレイクは北方に築かれた堅固な要塞だった。実用一辺倒で無骨だが、そこで立ち働く騎士たちの佇まいには凛とした緊張感があり、そして誰もがカイルのことを尊敬していた。
そんなカイルが三顧の礼で迎えたエレナに対して、彼らはごく自然に敬意を持って接してくれた。もっとも、ただ一人例外がいるのだが...

「なんだか申し訳ないぐらいに丁重にしていただいているわね...」

「ちぇーっお嬢様ばっかりイケメンズにチヤホヤされてさーっ」

「あなたはどうしてそういう発想から抜けられないの...」

「ははは、君たちは仲がいいねぇ」

これから魔獣が出没するという、通称"黒い森"と呼ばれる前線へ向かうのだが、出発までまだ時間があるので私たちは要塞の一角にあるヒ広間で暖をとりながら待っているのだった。そこに野生味溢れる男性の声が割り込んでくる。

「おう、お前ら楽しそうだな!エレナちゃん、暇なら俺とデートしようぜ」

である、北の騎士団副団長であるエリック・バスティオンは、初対面のその瞬間から臆面もなく口説きの言葉を嘯いてくるのだった。当然カイルは嗜めたのだが「団長が惚れた女をどうしても横取りしたい」などと意味不明なことを言って生真面目な団長を困惑させていた。エリックが纏う歴戦の騎士らしい獰猛な雰囲気は、団長のそれとは正反対だが、よく見れば目鼻立ちはエリックに負けじと整っておりこれまた美男子には違いなかった。

「これから森へ行くということでしたので...」

「そういえばそうだったか。安心しろ、俺が守ってやるからな」

「はぁ...それはどうも...」

「つれないねぇエレナちゃん。でもまぁそこがいいっちゃいいんだな」

エリックはそう言ってどっかりと座り込んだ。どうやら出発まで居座るつもりらしい。

(こういう男をこらしめる精霊術はないの?)

(なくはないが...存外に本気で口説いているような気もするぞ?)

(まったくあなたまで...)

(なぁに、恋に燃える男は、同じ男として応援したくなりもするのさ)

カイルやアキュラと相談した結果、精霊術については基本的に他の人には伏せておくことにしていた。遥か古代に途絶えた力であること、謎の襲撃が続いたことなどを慮ってのことだ。なので、私はここでは結界魔法に優れた魔法使いということになっていた。しかしこのエリックは「どうも怪しい。女に縁のなかった団長がこんな可愛い女の子をわざわざ辺境にまで連れてくるなんて、よほど惚れ込んでいるに違いない」などと言ってあれこれと口説き文句を並べては何かと私に絡んでくるのだった。ひょっとしたら、戦士の直感で私の力に気づいているのかもしれないが...

「で、カイルとはもうなのか?」

「へ?」

突拍子も無い質問に私は間抜けな返事をしてしまう。
サキが突っ伏して肩を震わせているのが見えた。...爆笑しているようだった。

「ふーむ、その調子ではまだ手も握っていないとみた。あれは堅い男だからな」

「ですから私たちはそういう関係では...」

「何を馬鹿なことを言っている!」

そう鋭い声が飛んだかと思うと、険しい目をしたカイルがつかつかと入ってきた。

「エリック、お前は軍紀というものを...」

「あーはいはい、焦るな焦るな。まだ取って食いやしないよ。まだ」

「私にはともかく、エレナ嬢への無礼は許さんぞ」

「麗しのご令嬢には指一本触れておらぬとも」

エリックはそういって仰々しく私に向かって跪いて見せた。

「...もういい。エレナ嬢、ご準備はよろしいか」

「...はい。いつでも」

「俺もついていくからな!ちょうど非番なんだ。いいだろ?」

「...勝手にしろ」

そういうわけで、カイルの直属小隊にエリックを加えた10人ほどの騎士たちと、私たち3人で件の黒い森へと向かうことになったのだった。
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