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第31話 「斬首」
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群衆の怒号があたりを揺るがし始め、兵士や貴族たちも明らかに動揺し始めている。
しかしミリアは冷然とその様子を睥睨しただけで、さして気にする様子もない。
「虫ケラが騒いでも、所詮は力無き連中...騒ぐ口実を探しているだけだわ」
「それは違う!力には責任が伴うのよ。あなたにも力があるのだから...どうして彼らの声に耳を傾けられないの?」
「私は私の好きにする...この国がどうなろうと知ったことではないわ。でも、ちょっと騒がしすぎるわね。そろそろあなたの処刑も終わらせましょう。あなたの首が惨めに落ちるところを見れば、愚かな群衆も静まるでしょうから」
「この...人でなし!」
「あら...今頃気づいたの?じゃあ、これでお別れね。...レオン!」
ミリアが口にした名を耳にした瞬間、私の身体は強張った。
レオン...かつて婚約者だったその人が、ミリアの声に応じてゆらり、と前に歩み出てくる。
その表情はどこか遠くを見ているようで、私の知っているそれとは別人だった。
「レオン... あなたがこの女を処刑するのよ。王国と私の敵である、このエレナをね...」
「あ、ああ...そうだな。君がいうならそうしないと...」
そう答えるや、レオンはぼんやりとした表情のままするりと剣を抜いた。
その様子を見て、怒号を上げていた群衆が潮が引いていくように静まる。
剣を構えたレオンが、そのままゆっくりと私に歩み寄ってきた。
「...レオン、私を殺すの?」
私はレオンの瞳を見据えて、静かに問いただす。
先ほどまで私を支配していた死の恐怖は、どこかに消し飛んでいた。
もはや覚悟が定まったのか、恐怖が振り切れていっそ感じなくなってしまったのか、それはわからない。
ただ、かつて愛そうと決めた男が、私の命を奪うために刃を抜いた。
その哀しい事実に、少しでも抗いたいと思ったからかもしれない。
「エレナ、その男は何らかの精神干渉を受けているぞ!」
アキュラの発した言葉に、ミリアがおかしそうに応えた。
「あら、私たち何度も愛し合ったものねぇ...?私のためなら何でもしてくれるって言ってくれたわ」
「ああ...ミリアのためなら...何でもしないと...ううっ」
夢遊病患者のような瞳で、レオンが呟いた。
その端正な顔立ちに、今は意志の光が宿っておらず、まるで人形のように見える。
「レオン...私のことがわからないの?」
「う...き、君は... 」
レオンは微かに呻きながら私を訝しげに見つめる。
その表情を見ると、長くはなかったけれど、確かに彼と過ごした時間が走馬灯のように思い出された。
そう、彼はぎこちなく不器用ではあるけれど、紳士的で優しいところもあったのだ...
「あなたは私を愛していなかったかもしれないけれど...私はあなたのことを愛そうと決めていたのよ」
「あい...す?」
「そう。親が決めた婚約とはいえ...あなたと何度か過ごした時間は、決して悪いものじゃなかった」
そう言いながら、気がつけば私は静かに涙を流していた。
そうだった。レオンは私に指一本触れたことはないけれど、優しく私を見つめてくれた。
時折交わす言葉は、不器用だけれど誠実だった...
同じ景色を眺め、食事を共にし、ふと微笑みを交わしたあの時間は、確かに存在したのだ。
...突然の婚約破棄までは。
でも、今になってわかる。あのときのレオンは明らかに変だった。
それを今この瀬戸際であれこれ言っても仕方がない。
私は覚悟を決めてレオンに告げる。
「レオン...私に優しくしてくれて、ありがとう」
それは嘘偽りのない言葉だった。
恋愛や情熱を知らない私に、確かにその片鱗を教えてくれた人。
私の命を奪うのが、見知らぬ兵士の剣ではなく、愛しても良いと思った男のそれならば。
幾分かだけ、救いがあるというものだろう。
「う...うぅぅ...」
混乱をきたしたレオンが剣を振り上げる。
「さぁ、その女を殺すのよ!レオン!」
昂奮したミリアが叫ぶ。群衆の叫びや抗議の声も最高潮に達していた。
その様子を見て、切羽詰まったアキュラが私に叫ぶ。
「こうなったら一か八かだ...私の魔力を暴走させる...!」
「待って!」
その瞬間だった、レオンの剣が振り下ろされたのは。
しかしミリアは冷然とその様子を睥睨しただけで、さして気にする様子もない。
「虫ケラが騒いでも、所詮は力無き連中...騒ぐ口実を探しているだけだわ」
「それは違う!力には責任が伴うのよ。あなたにも力があるのだから...どうして彼らの声に耳を傾けられないの?」
「私は私の好きにする...この国がどうなろうと知ったことではないわ。でも、ちょっと騒がしすぎるわね。そろそろあなたの処刑も終わらせましょう。あなたの首が惨めに落ちるところを見れば、愚かな群衆も静まるでしょうから」
「この...人でなし!」
「あら...今頃気づいたの?じゃあ、これでお別れね。...レオン!」
ミリアが口にした名を耳にした瞬間、私の身体は強張った。
レオン...かつて婚約者だったその人が、ミリアの声に応じてゆらり、と前に歩み出てくる。
その表情はどこか遠くを見ているようで、私の知っているそれとは別人だった。
「レオン... あなたがこの女を処刑するのよ。王国と私の敵である、このエレナをね...」
「あ、ああ...そうだな。君がいうならそうしないと...」
そう答えるや、レオンはぼんやりとした表情のままするりと剣を抜いた。
その様子を見て、怒号を上げていた群衆が潮が引いていくように静まる。
剣を構えたレオンが、そのままゆっくりと私に歩み寄ってきた。
「...レオン、私を殺すの?」
私はレオンの瞳を見据えて、静かに問いただす。
先ほどまで私を支配していた死の恐怖は、どこかに消し飛んでいた。
もはや覚悟が定まったのか、恐怖が振り切れていっそ感じなくなってしまったのか、それはわからない。
ただ、かつて愛そうと決めた男が、私の命を奪うために刃を抜いた。
その哀しい事実に、少しでも抗いたいと思ったからかもしれない。
「エレナ、その男は何らかの精神干渉を受けているぞ!」
アキュラの発した言葉に、ミリアがおかしそうに応えた。
「あら、私たち何度も愛し合ったものねぇ...?私のためなら何でもしてくれるって言ってくれたわ」
「ああ...ミリアのためなら...何でもしないと...ううっ」
夢遊病患者のような瞳で、レオンが呟いた。
その端正な顔立ちに、今は意志の光が宿っておらず、まるで人形のように見える。
「レオン...私のことがわからないの?」
「う...き、君は... 」
レオンは微かに呻きながら私を訝しげに見つめる。
その表情を見ると、長くはなかったけれど、確かに彼と過ごした時間が走馬灯のように思い出された。
そう、彼はぎこちなく不器用ではあるけれど、紳士的で優しいところもあったのだ...
「あなたは私を愛していなかったかもしれないけれど...私はあなたのことを愛そうと決めていたのよ」
「あい...す?」
「そう。親が決めた婚約とはいえ...あなたと何度か過ごした時間は、決して悪いものじゃなかった」
そう言いながら、気がつけば私は静かに涙を流していた。
そうだった。レオンは私に指一本触れたことはないけれど、優しく私を見つめてくれた。
時折交わす言葉は、不器用だけれど誠実だった...
同じ景色を眺め、食事を共にし、ふと微笑みを交わしたあの時間は、確かに存在したのだ。
...突然の婚約破棄までは。
でも、今になってわかる。あのときのレオンは明らかに変だった。
それを今この瀬戸際であれこれ言っても仕方がない。
私は覚悟を決めてレオンに告げる。
「レオン...私に優しくしてくれて、ありがとう」
それは嘘偽りのない言葉だった。
恋愛や情熱を知らない私に、確かにその片鱗を教えてくれた人。
私の命を奪うのが、見知らぬ兵士の剣ではなく、愛しても良いと思った男のそれならば。
幾分かだけ、救いがあるというものだろう。
「う...うぅぅ...」
混乱をきたしたレオンが剣を振り上げる。
「さぁ、その女を殺すのよ!レオン!」
昂奮したミリアが叫ぶ。群衆の叫びや抗議の声も最高潮に達していた。
その様子を見て、切羽詰まったアキュラが私に叫ぶ。
「こうなったら一か八かだ...私の魔力を暴走させる...!」
「待って!」
その瞬間だった、レオンの剣が振り下ろされたのは。
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