【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん

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第34話 「終幕」

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「「エレナッ!?」」

アキュラとカイルの叫び声が重なったな...などと思っているうちに、空とカイルの顔が見えた。
身体中が痺れた様に痛み、うめき声しか出てこない。
黒炎をもろに喰らい、私の身体は倒れ伏していた。

「エレナ!エレナ!なんて無茶を...」

「カ、カイル...無事で...」

かろうじてその一言だけを紡ぎ出すと、口の端から生暖かい液体が溢れるのを感じた。
どうやら、衝撃で内臓がやられたみたいだ。

「健気なところもあるじゃない?ふふ、仲良くあの世に送ってあげるから焦らなくてもいいのにね」

私とカイルを見下ろしながら、ミリアが更に強大な術を行使しようと力を集め始めるのがわかった。
もはやそれを止める力は誰にも残っていない。
あちこちに人々が倒れ伏す中で、ミリアだけがただ独り傲然と立っている。
そんな彼女が、ふと寂しげに見えたのは気のせいだろうか。
これほどの力、才能を持ちながらーミリアの傍らには誰もいない。
私は身体から大切な何かが流れ出ていくのを感じながら、ふとそんなことを思う。
死神が近づいてくると、人は全てを許す気になるとでもいうのだろうかー

その時だった。

「エレナ...最後の賭けに付き合ってくれるかい?」

覚悟を決めた様なアキュラの声がした。

「賭け...?」

「ああ...このままでは君は死ぬ。だから、私の力をすべて君に注ぎ込む。耐えられるかはわからないが、それしかない」

「...みんなを助けられるなら、何を迷うことがあるの?」

「...愚問だったね。エレナ...君と出会えてよかった」

「アキュラ...私もよ...」

「はじめるよ...Rex Spirituum Sum! Per Foedus Sacrum, Accumenta Annorum Innumerorum Trado! Tu Sis Vasorum Virtutis Meae...我は精霊王なり。神聖なる盟約により、数え切れぬ年月の蓄積を渡す。汝、我が力の器とならん

アキュラの詠唱が終わった途端、凄まじい力の奔流が流れ込んでくるのを感じる。
とてつもない大嵐のようなそれは、私の身体の中を怒涛の如く暴れ回る。

「う、うぁぁぁあ...」

何も考えられないほどの苦痛が私を苛み、身体が地面を転げ回るのを止めることができない。
生まれてこのかた味わったことがないほどの、想像を絶する痛みだった。

「エレナ...エレナ!」

カイルの声がかろうじて耳に届く。
全身を引き裂かれる様な苦悶の中で、その声だけがかすかに苦痛を和らげてくれる様な気がした。

ーそうだ、私はこの人を守りたい。
だから、ここで死ぬわけにはいかない。
こんなところで負けてたまるものか。

苦悶の中で、強い意志の力が忽然と私の中に湧き上がり、荒れ狂う精霊王の力を次第に制御し始めるのを感じる。
荒波が次第に凪へと変わるように、私の中に穏やかに力が行き渡っていく。

「馬鹿な...そんな馬鹿な...!」

怒り狂ったミリアが、私に向かって術を連発してくる。

「無駄よ」

私が少し手をかざすだけで、たちまちミリアの攻撃は無効化されていく。
長きにわたって蓄積された精霊王の力を、今や私は完全に行使できるようになっていた。
ニヴェルガルドで出会った精霊女王セレスから受け継いだ魂の情報のおかげかもしれない。
もし彼女と出会えていなかったら...この膨大な力の奔流を到底受け止めきれなかったろう。

Spiritus Vitae, Descendite! Omnes Circa Me Sanentur!生命の精霊よ、降り来たれ!我が周囲の全てが癒されんことを!

紡ぐべき詠唱は、自然と心の中に浮かんできた。きっとセレスの魂が教えてくれているのだ。
周囲の人々を回復させるための精霊術は、たちまち効果を現した。
倒れ伏していた辺境騎士たちやアイアンメイデンの騎士たちもよろよろと起き上がる。

「ふふ...ふふふ...」

その様子を見て、ミリアが呆けたように笑い出した。

「もうこんなことは終わりにしましょう...大人しく投降して」

「投降?その力でさっさと私を殺せばいいじゃない」

投げやりな口調でミリアが吐き捨てる。

「精霊たちの力は、誰かを傷つけるためのものじゃない」

「最後まで綺麗事を言うのね...」

次の瞬間、ミリアが吐血して跪いた。

「がはっ...こ、ここまでみたいね...」

もちろん、私はミリアを攻撃していない。
しかし、ミリアの身体から一気に力が抜けてその場に倒れ伏した。
私咄嗟に回復術をかけたが、ミリアはそんな様子を見ておかしそうに笑うばかりだった。

「ど、どこまでお人よしなの...私を助けて恩に着せようとしても無駄よ...」

「別に恩に着せるわけじゃない。ただ法の裁きを受けて欲しいだけよ」

「...そ、そういうところが...嫌い...でも、残念ながらその要望には応えられないと思うわ...」

カイルが私の傍らに来てミリアを見下ろした。
その瞳に憎しみはなく、ただ哀れみが宿っている。

「エレナ、この女が使った禁術は...その生命を代償にするのだろう。おそらく、体内の魔術回路がずたずたに焼き切れているはずだ。...君の精霊術といえど、もはや救えない」

「ふふ...ご名答ね」
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