38 / 42
第33話 「決戦」
しおりを挟む
「レオンを殺したのね」
「ええ、それがどうかした?」
悪びれもせずミリアが応える。
「...もはやあなたと語ることはない。カイル、今ここでミリアを討つ!」
私は傍のカイルと頷きあう。
「わかった!騎士たちよ、あのミリアこそすべての元凶だ。今ここで禍根を断つのだ!」
「「「おおおーっ!」」」
カイルの号令一下、カイルが率いてきた騎士たちとミリアが従えるアイアンメイデンが乱戦に入る。
剣や槍が激しくぶつかる中、ミリアは徒士ながら騎士たちを巧みにかわしてこちらに向かってきている。
もちろん狙いは私だ。
「エレナ、君は馬から降りて後ろへ下がるのだ。ミリアは私が!」
「わかったわ。...気をつけて」
カイルは私を下がらせると、自らも馬を降りてミリアに対峙した。
既に戦場は錯綜しており、馬を走らせるような余裕はないと判断したのだろう。
「アキュラ...どうにかカイルを援護できないかしら」
「まだ君の体には薬効が残っている...無理はしないほうがいい」
アキュラの言葉に歯噛みする思いだが、その事実はどうしようもない。
今はただカイルの無事を祈るしかないのだろうか。
「カイル!そんな女は捨てて、私とこの国を牛耳る気はない?」
「戯言を!貴様のような毒婦は私の趣味ではない」
「あら、つれないお言葉。レオンよりは見込みがあると思ったのに... 」
ミリアは余裕の表情でカイルの斬撃や魔法をあしらっていた。
カイルの武芸も魔法も相当なものだが、ミリアの力は底が知れない。
2人の戦況が膠着しつつある間に、次第にアイアンメイデンが辺境騎士たちを圧倒し始めた。
アイアンメイデンも決して兵力が多いわけではなかったが、そもそも騎士たちは強行軍を重ねている。
その上数が少なく、時間の経過が不利に働いていく。
「このままじゃ...!」
じりじりとカイルもミリアに押されはじめ、騎士たちもアイアンメイデンの包囲に1人また1人と倒れていく。
見えかけた希望の光が、風前の灯火の様に消えかけようとしていたその時だった。
「待たせたな!エレナちゃん!」「エレナ様!」
聞き覚えのある声と共に、大勢の騎馬隊がアイアンメイデンに突入してくるのが見えた。
先頭を率いるのは、エリックとサキだ。
「生きていたのね...!」
たちまち数人のアイアンメイデンを退けた2人が、私たちの方に駆け寄ってくる。
「俺はちょいと男前になっちまったが...無事でよかった」
「お嬢さま、遅くなって申し訳ございません...!」
「エリック!サキ!」
気がつけばエリックは左目を失って眼帯をしており、サキは片腕を失っていた。
2人が生き延びるための代償は決して小さくはなかったのだろう。
それでも、生きていてくれて本当に良かった。
「おう、カイル。北の騎士団の生き残りと、他の騎士団の後発組を全部連れてきたぞ。これで押し切れるはずだ」
「よくやってくれたエリック!」
2人はがっしりと抱き合った。
その間にも辺境騎士たちが次第にアイアンメイデンを退けていく。
気がつけば、敵側に立っているのはミリアただ1人になっている。
しかし、微塵も怯む様子はなく、むしろ傲然と私たちに対峙していた。
「ミリア、ここまでよ。大人しく法の裁きを受けなさい」
「わかってないわね。私は別に失うものもないのよ?」
そう吐き捨てるミリアの瞳に、再び深い沼の様な虚無が宿っていた。
「気をつけろエレナ...何かとてつもないことをやるつもりだ」
アキュラの緊張した声が警告する。
表情を失ったミリアが詠唱を始める。
聞いたこともないものだが、凄まじい禍々しさであることはわかった。
「Animae Parasitae, Evocamini! Vitam Circumstantium Sugite! Fluat Energia ad Me! Ego Vivam, Illi Languescant! Vita Eorum Mea Fiat...」
「まずい、離れろ!」
アキュラの叫び声も虚しく、ミリアから放たれた禍々しい邪気がたちまち私たちを包み込んでいく。
私たちや辺境騎士たちだけではない。
かろうじて残っていたアイアンメイデンたちも容赦無く包み込んでいく。
「こ...これは...」
身体から力が抜けていき、皆次々と跪いていく。
「生命力を奪う禁術...こんなものまで使うとは...」
「エレナ...君だけでも逃げてくれ...」
剣を杖代わりに立ち上がったカイルが、私を庇う様によろよろと立ち上がった。
「そろそろ遊びの時間も終わりだわ...Per Vim Inferni, Ignes Obscuri Saliant!」
そう言い放ったミリアから、禍々しい黒炎が連続で放たれる。
かろうじてそれらを防いだカイルのところへ、時間差で更なる黒炎が襲ってくる。
最初の攻撃は囮だったのだ。その瞬間、私は無意識に身体が飛び出していくのを感じた。
「ええ、それがどうかした?」
悪びれもせずミリアが応える。
「...もはやあなたと語ることはない。カイル、今ここでミリアを討つ!」
私は傍のカイルと頷きあう。
「わかった!騎士たちよ、あのミリアこそすべての元凶だ。今ここで禍根を断つのだ!」
「「「おおおーっ!」」」
カイルの号令一下、カイルが率いてきた騎士たちとミリアが従えるアイアンメイデンが乱戦に入る。
剣や槍が激しくぶつかる中、ミリアは徒士ながら騎士たちを巧みにかわしてこちらに向かってきている。
もちろん狙いは私だ。
「エレナ、君は馬から降りて後ろへ下がるのだ。ミリアは私が!」
「わかったわ。...気をつけて」
カイルは私を下がらせると、自らも馬を降りてミリアに対峙した。
既に戦場は錯綜しており、馬を走らせるような余裕はないと判断したのだろう。
「アキュラ...どうにかカイルを援護できないかしら」
「まだ君の体には薬効が残っている...無理はしないほうがいい」
アキュラの言葉に歯噛みする思いだが、その事実はどうしようもない。
今はただカイルの無事を祈るしかないのだろうか。
「カイル!そんな女は捨てて、私とこの国を牛耳る気はない?」
「戯言を!貴様のような毒婦は私の趣味ではない」
「あら、つれないお言葉。レオンよりは見込みがあると思ったのに... 」
ミリアは余裕の表情でカイルの斬撃や魔法をあしらっていた。
カイルの武芸も魔法も相当なものだが、ミリアの力は底が知れない。
2人の戦況が膠着しつつある間に、次第にアイアンメイデンが辺境騎士たちを圧倒し始めた。
アイアンメイデンも決して兵力が多いわけではなかったが、そもそも騎士たちは強行軍を重ねている。
その上数が少なく、時間の経過が不利に働いていく。
「このままじゃ...!」
じりじりとカイルもミリアに押されはじめ、騎士たちもアイアンメイデンの包囲に1人また1人と倒れていく。
見えかけた希望の光が、風前の灯火の様に消えかけようとしていたその時だった。
「待たせたな!エレナちゃん!」「エレナ様!」
聞き覚えのある声と共に、大勢の騎馬隊がアイアンメイデンに突入してくるのが見えた。
先頭を率いるのは、エリックとサキだ。
「生きていたのね...!」
たちまち数人のアイアンメイデンを退けた2人が、私たちの方に駆け寄ってくる。
「俺はちょいと男前になっちまったが...無事でよかった」
「お嬢さま、遅くなって申し訳ございません...!」
「エリック!サキ!」
気がつけばエリックは左目を失って眼帯をしており、サキは片腕を失っていた。
2人が生き延びるための代償は決して小さくはなかったのだろう。
それでも、生きていてくれて本当に良かった。
「おう、カイル。北の騎士団の生き残りと、他の騎士団の後発組を全部連れてきたぞ。これで押し切れるはずだ」
「よくやってくれたエリック!」
2人はがっしりと抱き合った。
その間にも辺境騎士たちが次第にアイアンメイデンを退けていく。
気がつけば、敵側に立っているのはミリアただ1人になっている。
しかし、微塵も怯む様子はなく、むしろ傲然と私たちに対峙していた。
「ミリア、ここまでよ。大人しく法の裁きを受けなさい」
「わかってないわね。私は別に失うものもないのよ?」
そう吐き捨てるミリアの瞳に、再び深い沼の様な虚無が宿っていた。
「気をつけろエレナ...何かとてつもないことをやるつもりだ」
アキュラの緊張した声が警告する。
表情を失ったミリアが詠唱を始める。
聞いたこともないものだが、凄まじい禍々しさであることはわかった。
「Animae Parasitae, Evocamini! Vitam Circumstantium Sugite! Fluat Energia ad Me! Ego Vivam, Illi Languescant! Vita Eorum Mea Fiat...」
「まずい、離れろ!」
アキュラの叫び声も虚しく、ミリアから放たれた禍々しい邪気がたちまち私たちを包み込んでいく。
私たちや辺境騎士たちだけではない。
かろうじて残っていたアイアンメイデンたちも容赦無く包み込んでいく。
「こ...これは...」
身体から力が抜けていき、皆次々と跪いていく。
「生命力を奪う禁術...こんなものまで使うとは...」
「エレナ...君だけでも逃げてくれ...」
剣を杖代わりに立ち上がったカイルが、私を庇う様によろよろと立ち上がった。
「そろそろ遊びの時間も終わりだわ...Per Vim Inferni, Ignes Obscuri Saliant!」
そう言い放ったミリアから、禍々しい黒炎が連続で放たれる。
かろうじてそれらを防いだカイルのところへ、時間差で更なる黒炎が襲ってくる。
最初の攻撃は囮だったのだ。その瞬間、私は無意識に身体が飛び出していくのを感じた。
1
あなたにおすすめの小説
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの
鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」
そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。
ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。
誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。
周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」
――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。
そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、
家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。
だが、彼女の予言は本物だった――
数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。
国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、
あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。
「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」
皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、
滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。
信じてもらえなかった過去。
それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。
そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。
――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。
三月べに
恋愛
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。
帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!
衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?
何故、逆ハーが出来上がったの?
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
『殺されたはずの公爵令嬢は、幽霊として王太子を断罪します』
鍛高譚
恋愛
死んだはずの公爵令嬢――いえ、死んでませんけど、幽霊始めました。
婚約者である王太子アルファルドに突然、婚約破棄を言い渡されたユウナ・アストラル。
しかも彼は、次の婚約者セレスティナとの未来のために、ユウナの両親を「事故」に見せかけて殺害し、ユウナ自身まで――。
けれどユウナは死ななかった。瀕死の彼女が目覚めたのは、幽体化というスキルを得た“不完全な死”の状態。
それならば、生きているとは言えない。でも、死んでもいない。
ならば今の私は――幽霊になって復讐しても、いいでしょう?
正体不明の「亡霊」として、王太子と新しい婚約者をじわじわと恐怖に落とすユウナ。
しかし、真の目的は“復讐”では終わらない――。
王宮で、社交界で、玉座の間で。
すべての罪を暴き、偽りの王子を地獄に突き落とす“ざまぁ”の舞台は整った!
これは、「死んでないけど幽霊になった」令嬢が、人生を取り戻しに行く痛快・逆転ラブファンタジー。
彼女の本当の人生は、“幽霊”になってから始まった――!
-
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?
みこと。
恋愛
鉛色の髪と目を持つクローディアは"鉱石姫"と呼ばれ、婚約者ランバートからおざなりに扱われていた。
「俺には"宝石姫"であるタバサのほうが相応しい」そう言ってランバートは、新年祭のパートナーに、クローディアではなくタバサを伴う。
(あんなヤツ、こっちから婚約破棄してやりたいのに!)
現代日本にはなかった身分差のせいで、伯爵令嬢クローディアは、侯爵家のランバートに逆らえない。
そう、クローディアは転生者だった。現代知識で鉱石を扱い、カイロはじめ防寒具をドレス下に仕込む彼女は、冷えに苦しむ他国の王女リアナを助けるが──。
なんとリアナ王女の正体は、王子リアンで?
この出会いが、クローディアに新しい道を拓く!
※小説家になろう様でも「私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね? 〜不実な婚約者を見限って。冷え性令嬢は、熱愛を希望します」というタイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる