【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

文字の大きさ
10 / 37

第10話「宮廷魔法使いとしてスカウトされる」

しおりを挟む
フォンテーヌ家での一件から二日後、セリアは王都の図書館でエリスの恋人であるライアンと会っていた。彼は二十代前半の青年で、穏やかな性格と深い知識を持つ魅力的な人物だった。

「エリス様のために、本当にありがとうございます」

ライアンは深々と頭を下げた。

「いいのよ。エリスが幸せになれるなら、それが一番」

「でも、僕のような平民が貴族の令嬢と……やはり無謀なことかもしれません」

ライアンの表情には、身分の違いへの諦めが見えていた。セリアは前世を思い出した。自分も、学歴や家柄で判断される社会に嫌気がさしていた。

「身分なんて、ただの紙切れよ。大切なのは、お互いを思いやる気持ちでしょう?」

「セリアさん……」

「それに、私にはアイデアがあるの。あなたの知識を活かせる方法が」

セリアは前世の経験を思い返していた。出版業界、教育事業、情報産業。この世界でも応用できることは山ほどある。

「僕の知識を?」

「ええ。でも、詳しい話は後にしましょう。今日はエリスと一緒に、もっと大きな問題に取り組む予定なの」

その時、図書館の入り口に騎士の一団が現れた。先頭を歩くのは、見覚えのない年配の騎士だった。

「セリア・アルクライト様はいらっしゃいますか?」

「私がセリア・アルクライトです」

「私は王宮騎士団長のガルシア・レオンハルトと申します。陛下がお呼びです」

周囲の人々がざわめいた。王様直々の召喚など、滅多にあることではない。

「陛下が? 何のご用でしょうか」

「詳細は王宮にて。至急お越しいただきたく」

ライアンが心配そうに見つめる中、セリアは騎士団と共に王宮に向かった。

王宮は想像以上に豪華で、前世で見た海外の宮殿を思い起こさせた。しかし、セリアの心は落ち着いていた。どんな権力者であろうと、今の自分には屈する理由がない。

謁見の間に通されると、玉座に中年の男性が座っていた。威厳のある表情だが、どこか疲れて見える。これがアルカディア王国のエドウィン三世だった。

「セリア・アルクライト、参上いたしました」

セリアは礼儀正しく挨拶した。

「うむ、よく来てくれた。そなたの活躍は耳に入っている。商人ギルドの件、見事だったな」

「ありがとうございます」

「実は、そなたに頼みがある」

王は真剣な表情になった。

「この国には、長年解決できずにいる問題がいくつかある。そなたの力を借りたいのだ」

「どのような問題でしょうか?」

「まず一つは、魔物による被害の増加だ。近年、各地で魔物の活動が活発化している。通常の騎士団では対処しきれない規模になってきている」

セリアは頷いた。確かに、自分が経験した魔物襲撃も、普通ではない規模だった。

「二つ目は、貴族間の権力争いが激化していることだ。民衆への被害も増している」

これも、セリアが直接目にした問題だった。商人ギルドの件も、その一例だろう。

「そして三つ目は、経済の停滞だ。税収が減り、国の運営が困難になってきている」

「なるほど、確かに深刻な問題ですね」

「そこで、そなたに宮廷魔法使いの地位を与えたい。正式な王宮の一員として、これらの問題解決に当たってほしいのだ」

周囲にいた廷臣たちがざわめいた。宮廷魔法使いは、王国でも最高位の魔法使いに与えられる称号だった。

「光栄なお話ですが、少し条件があります」

セリアの言葉に、廷臣たちが驚いた。王の申し出に条件をつけるなど、前代未聞だった。

「条件とは?」

王は興味深そうに身を乗り出した。

「私は一人では限界があります。信頼できる仲間と一緒に働かせてください」

「仲間?」

「はい。騎士団のルーク・ヴァンハイム、そしてフォンテーヌ家のエリス嬢です」

廷臣の一人が前に出た。

「陛下、エリス・フォンテーヌは政略結婚の件で問題を起こした……」

「その件なら解決済みです」

セリアが割って入った。

「むしろ、エリスの才能を国のために活かすべきです。彼女は単なる政治の道具ではありません」

王はしばらく考え込んだ。

「面白い。そなたは、人を見る目があるようだな」

「ありがとうございます」

「よろしい。そなたの条件を受け入れよう。ただし、成果は期待している」

「必ず期待に応えてみせます」

その時、玉座の間の扉が開いた。現れたのは、豪華な服装をした中年男性だった。その表情には、明らかな不快感があった。

「陛下、このような重要な決定を、我々に相談なく決められるのですか?」

「財務大臣殿、何か問題でも?」

「この娘は、商人ギルドに大きな損失を与えました。経済への影響を考えれば……」

セリアは内心で冷笑した。この財務大臣は、商人ギルドと癒着している可能性が高い。前世でも、こうした利権にまみれた役人をたくさん見てきた。

「財務大臣殿、商人ギルドの不正徴税こそ、経済に悪影響を与えていたのではありませんか?」

「何ですって?」

「小さな商店が健全に経営できてこそ、真の経済発展があります。一部の権力者だけが利益を独占する構造では、長期的に見て国の衰退を招きます」

セリアは前世の経済知識を総動員して説明した。廷臣たちは、その論理的な分析に驚いていた。

「さらに言えば、民衆の不満が高まれば、政治的な不安定を招きます。それこそ、国にとって最大のリスクです」

財務大臣は言葉に詰まった。セリアの指摘は的確で、反論の余地がなかった。

「見事な分析だ」

王は感心したように頷いた。

「やはり、そなたに任せるのが正解のようだな」

「陛下のご期待に添えるよう、全力で努めます」

こうして、セリアは正式に宮廷魔法使いに任命された。しかし、それは同時に、王国の複雑な政治に巻き込まれることを意味していた。

財務大臣をはじめとする既得権益者たちは、セリアを警戒するだろう。彼らにとって、現状を変えようとするセリアは脅威でしかない。

「面白くなってきたわね」

セリアは心の中で呟いた。前世では、会社の政治に振り回されるだけだった。でも今度は違う。自分が主導権を握って、理不尽なシステムを変えてやる。

王宮を出ると、エリスとルークが待っていた。

「セリア! どうだった?」

「宮廷魔法使いに任命されたわ。そして、あなたたちも一緒に働くことになった」

「本当?」

エリスの目が輝いた。

「でも、簡単な仕事じゃないわよ。既得権益者たちとの戦いになる」

「望むところです」

ルークが力強く答えた。

「私たちなら、きっと何でもできるわ」

エリスも決意を込めて頷いた。

セリアは二人を見て微笑んだ。前世では得られなかった、本当の仲間がここにいる。そして、理不尽な世界を変える力もある。

新たな戦いが、今始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...