【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第10話「宮廷魔法使いとしてスカウトされる」

フォンテーヌ家での一件から二日後、セリアは王都の図書館でエリスの恋人であるライアンと会っていた。彼は二十代前半の青年で、穏やかな性格と深い知識を持つ魅力的な人物だった。

「エリス様のために、本当にありがとうございます」

ライアンは深々と頭を下げた。

「いいのよ。エリスが幸せになれるなら、それが一番」

「でも、僕のような平民が貴族の令嬢と……やはり無謀なことかもしれません」

ライアンの表情には、身分の違いへの諦めが見えていた。セリアは前世を思い出した。自分も、学歴や家柄で判断される社会に嫌気がさしていた。

「身分なんて、ただの紙切れよ。大切なのは、お互いを思いやる気持ちでしょう?」

「セリアさん……」

「それに、私にはアイデアがあるの。あなたの知識を活かせる方法が」

セリアは前世の経験を思い返していた。出版業界、教育事業、情報産業。この世界でも応用できることは山ほどある。

「僕の知識を?」

「ええ。でも、詳しい話は後にしましょう。今日はエリスと一緒に、もっと大きな問題に取り組む予定なの」

その時、図書館の入り口に騎士の一団が現れた。先頭を歩くのは、見覚えのない年配の騎士だった。

「セリア・アルクライト様はいらっしゃいますか?」

「私がセリア・アルクライトです」

「私は王宮騎士団長のガルシア・レオンハルトと申します。陛下がお呼びです」

周囲の人々がざわめいた。王様直々の召喚など、滅多にあることではない。

「陛下が? 何のご用でしょうか」

「詳細は王宮にて。至急お越しいただきたく」

ライアンが心配そうに見つめる中、セリアは騎士団と共に王宮に向かった。

王宮は想像以上に豪華で、前世で見た海外の宮殿を思い起こさせた。しかし、セリアの心は落ち着いていた。どんな権力者であろうと、今の自分には屈する理由がない。

謁見の間に通されると、玉座に中年の男性が座っていた。威厳のある表情だが、どこか疲れて見える。これがアルカディア王国のエドウィン三世だった。

「セリア・アルクライト、参上いたしました」

セリアは礼儀正しく挨拶した。

「うむ、よく来てくれた。そなたの活躍は耳に入っている。商人ギルドの件、見事だったな」

「ありがとうございます」

「実は、そなたに頼みがある」

王は真剣な表情になった。

「この国には、長年解決できずにいる問題がいくつかある。そなたの力を借りたいのだ」

「どのような問題でしょうか?」

「まず一つは、魔物による被害の増加だ。近年、各地で魔物の活動が活発化している。通常の騎士団では対処しきれない規模になってきている」

セリアは頷いた。確かに、自分が経験した魔物襲撃も、普通ではない規模だった。

「二つ目は、貴族間の権力争いが激化していることだ。民衆への被害も増している」

これも、セリアが直接目にした問題だった。商人ギルドの件も、その一例だろう。

「そして三つ目は、経済の停滞だ。税収が減り、国の運営が困難になってきている」

「なるほど、確かに深刻な問題ですね」

「そこで、そなたに宮廷魔法使いの地位を与えたい。正式な王宮の一員として、これらの問題解決に当たってほしいのだ」

周囲にいた廷臣たちがざわめいた。宮廷魔法使いは、王国でも最高位の魔法使いに与えられる称号だった。

「光栄なお話ですが、少し条件があります」

セリアの言葉に、廷臣たちが驚いた。王の申し出に条件をつけるなど、前代未聞だった。

「条件とは?」

王は興味深そうに身を乗り出した。

「私は一人では限界があります。信頼できる仲間と一緒に働かせてください」

「仲間?」

「はい。騎士団のルーク・ヴァンハイム、そしてフォンテーヌ家のエリス嬢です」

廷臣の一人が前に出た。

「陛下、エリス・フォンテーヌは政略結婚の件で問題を起こした……」

「その件なら解決済みです」

セリアが割って入った。

「むしろ、エリスの才能を国のために活かすべきです。彼女は単なる政治の道具ではありません」

王はしばらく考え込んだ。

「面白い。そなたは、人を見る目があるようだな」

「ありがとうございます」

「よろしい。そなたの条件を受け入れよう。ただし、成果は期待している」

「必ず期待に応えてみせます」

その時、玉座の間の扉が開いた。現れたのは、豪華な服装をした中年男性だった。その表情には、明らかな不快感があった。

「陛下、このような重要な決定を、我々に相談なく決められるのですか?」

「財務大臣殿、何か問題でも?」

「この娘は、商人ギルドに大きな損失を与えました。経済への影響を考えれば……」

セリアは内心で冷笑した。この財務大臣は、商人ギルドと癒着している可能性が高い。前世でも、こうした利権にまみれた役人をたくさん見てきた。

「財務大臣殿、商人ギルドの不正徴税こそ、経済に悪影響を与えていたのではありませんか?」

「何ですって?」

「小さな商店が健全に経営できてこそ、真の経済発展があります。一部の権力者だけが利益を独占する構造では、長期的に見て国の衰退を招きます」

セリアは前世の経済知識を総動員して説明した。廷臣たちは、その論理的な分析に驚いていた。

「さらに言えば、民衆の不満が高まれば、政治的な不安定を招きます。それこそ、国にとって最大のリスクです」

財務大臣は言葉に詰まった。セリアの指摘は的確で、反論の余地がなかった。

「見事な分析だ」

王は感心したように頷いた。

「やはり、そなたに任せるのが正解のようだな」

「陛下のご期待に添えるよう、全力で努めます」

こうして、セリアは正式に宮廷魔法使いに任命された。しかし、それは同時に、王国の複雑な政治に巻き込まれることを意味していた。

財務大臣をはじめとする既得権益者たちは、セリアを警戒するだろう。彼らにとって、現状を変えようとするセリアは脅威でしかない。

「面白くなってきたわね」

セリアは心の中で呟いた。前世では、会社の政治に振り回されるだけだった。でも今度は違う。自分が主導権を握って、理不尽なシステムを変えてやる。

王宮を出ると、エリスとルークが待っていた。

「セリア! どうだった?」

「宮廷魔法使いに任命されたわ。そして、あなたたちも一緒に働くことになった」

「本当?」

エリスの目が輝いた。

「でも、簡単な仕事じゃないわよ。既得権益者たちとの戦いになる」

「望むところです」

ルークが力強く答えた。

「私たちなら、きっと何でもできるわ」

エリスも決意を込めて頷いた。

セリアは二人を見て微笑んだ。前世では得られなかった、本当の仲間がここにいる。そして、理不尽な世界を変える力もある。

新たな戦いが、今始まろうとしていた。
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