【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第17話「ガルドとの出会い、商売を始める」

ヴィクトリアの新たな陰謀に対処するため、セリアは情報収集に奔走していた。しかし、相手の勢力は複数の国に潜伏しており、通常の手段では限界がありそうだった。

「やはり、商人のネットワークを活用する必要があるわね」

セリアは前世の経験を思い出していた。いつの時代も、情報は金と人脈を通して集まる。
その中枢にいるのは「商人」たちだった。
同じ人の集まりである以上、この世界でもその原理は変わらないはずだ。

なにはともあれという気持ちで王都の商業地区を歩いていると、大きな声が聞こえてきた。

「詐欺だ! この商品は偽物だぞ!」

声の主は、髭をたくわえた小柄な男性だった。ドワーフ族らしく、がっしりとした体格をしている。

「何をおっしゃいます! これは正真正銘の魔法剣です!」

相手は高級そうな服を着た商人だった。しかし、その表情には明らかに動揺があった。

「正真正銘だと? ハハハ! こんな安物の鉄に魔法のオーラを一時的に纏わせただけの偽物を?」

ドワーフの男性は剣を手に取ると、何かを確認するように調べ始めた。

「魔力の流れが不安定だ。せいぜい一週間で魔法が消える代物だな」

周囲に人だかりができていた。

「やはり偽物だったのか」

「あの商人、前から怪しいと思っていた」

商人の顔がたちまち青ざめた。

「ちょ、ちょっと待ってください! これは誤解です!」

「誤解? では、この剣に永続的な魔法がかかっていると証明してみろ」

ドワーフの男性は冷静だった。

「それは……その……」

商人は言葉に詰まった。

セリアは興味深く見守っていた。このドワーフは、明らかに魔法に関する深い知識を持っているようだ。

「まいったな……」

商人は観念したように肩を落とした。

「分かりました。返金いたします」

「当然だ。それと、今後はこのような商売はやめることだ」

ドワーフの男性は威厳をもって言った。

「さもなくば、ギルドに正式に告発する」

商人は慌てて荷物をまとめると逃げるように去っていった。

人だかりが散った後、セリアはドワーフの男性に近づいた。

「お見事でした」

「ん? あんた、見ていたのか」

「はい。魔法にお詳しいようですね」

「まあな。俺はガルド・ブラックハンマー。鍛冶師兼商人をやっている」

「セリア・アルクライトです。宮廷魔法使いをしています」

ガルドの目が驚きに見開かれた。

「宮廷魔法使いのセリア・アルクライト? 噂の......」

「ご存知ですか?」

「もちろんだ! 商人ギルドの一件は商人の間では有名な話だ。あんたのおかげで、俺たちのような小さな商人も安心して商売ができるようになった」

ガルドは心から感謝している様子だった。

「それは良かったです」

「ところで、こんなところで何をしているんだ? 何か商品をお探しか?」

セリアは少し考えてから口を開いた。

「実は、相談があります。お時間いただけますか?」

「もちろんだ。俺の店で話そう」

ガルドの店は、王都の商業地区の一角にあった。決して大きくはないが、清潔で整理整頓されている。店内には、様々な魔法の道具や武器が所狭しと並んでいた。

「いい店ですね」

「ありがとう。親父から受け継いだ店だ」

ガルドは奥から茶を持ってきた。

「粗茶ですまんが。それで、相談とは?」

「実は、情報収集のネットワークを構築したいんです。商人の方々の協力が必要で」

「情報収集?何かあったのか?」

セリアは思い切って事情を説明した。ガルドは信用できる男だと感じたからだ。
ヴィクトリアの陰謀、複数国にまたがる規模、そして対抗するための情報の必要性を熱弁する。

「なるほど……確かに、商人のネットワークは各国に広がっている。でも、ただで情報をくれる奴はいないぞ」

「もちろんです。対価は支払います」

「対価か……金は十分にあるのか?」

セリアは苦笑した。

「実は、そこが問題なんです。宮廷魔法使いの俸給だけでは限界があって」

ガルドは考え込んだ。

「それなら、一緒に商売をしないか?」

「商売?」

「あんたの魔法の知識と俺の商売のノウハウを組み合わせれば、きっと面白いことができる」

セリアの目が輝いた。前世では、小規模ながら新規事業の立案も経験していた。
その時のワクワク感は、数少ない良い思い出にもなっている。

「どのような商売を考えていますか?」

「魔法道具の改良だ。今の魔法道具は効率が悪すぎる。あんたの知識があれば、もっと性能の良いものが作れるはずだ」

「確かに、改良の余地はありそうですね」

セリアは店内の商品を見回した。どれも基本的な設計部分が粗雑で、効率性に問題があった。

「例えば、この魔法のランプ」

ガルドが一つの商品を手に取った。

「魔力の消費が激しすぎる。一晩点けていれば、魔力石が空になってしまう」

「魔力の循環効率を改善すれば、十倍は長持ちするはずです」

「本当か?」

「試してみましょう」

セリアはランプを受け取ると、解析魔法で内部構造を調べ始めた。

「やはり、魔力の流れが非効率ですね。ここと、ここを改良すれば……」

セリアは軽く魔法で干渉し、構造を再構築する。すると、ランプの光がより明るく、安定したものになった。

「すごい! 魔力の消費も明らかに減っている!」

ガルドは興奮していた。

「これなら、他の商品より圧倒的に性能が良い。絶対に売れる」

「でも、特許のようなものはありますか?」

「特許?」

「独占的に製造・販売できる権利です」

セリアは前世の知識で説明した。

「そういう制度はないが……でも、技術的に真似するのは難しいだろう。あんたレベルの魔法使いじゃないと無理だ」

「それなら安心ですね」

「よし、それじゃあ正式にパートナーシップを結ぼう」

ガルドは嬉しそうに手を差し出した。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

二人は握手を交わした。

「それで、利益の配分はどうする?」

「技術提供が私、製造・販売があなたですから、五分五分でいかがですか?」

「本当にいいのか? あんたの技術がなければ成り立たない商売だぞ」

「でも、あなたの商売のノウハウと人脈がなければ、私一人では何もできません」

ガルドは感動したような表情を見せた。

「あんた、本当にいい人だな。普通の貴族なら、もっと多くを要求するだろうに」

「私は貴族ですが、働いて稼ぐことの大切さを知っています」

「働いて稼ぐ? 貴族なのに?」

セリアは前世のことを思い出していた。

「以前、ブラ...厳しい環境で働いていたことがあるんです。だから、労働の価値をよく理解しています」

「そうか……それで、あんたはあんなに庶民の気持ちが分かるのか」

翌日から、二人は本格的に商品開発に取り組んだ。セリアの魔法技術とガルドの製造技術の組み合わせは、予想以上の成果を生んだ。

改良されたランプは従来品の十倍の効率を誇り、価格も従来品より安く設定できた。

「これは革命的だ」

ガルドは完成品を手に興奮していた。

「でも、これはまだ始まりよ。他にも改良できる商品はたくさんある」

「そうだな。それに、あんたの情報収集ネットワークも構築しなければ」

「商売が軌道に乗れば、その利益で情報を買えます」

「完璧な計画だ」

二人の新しい事業は、王都の商業界に大きな波紋を投げかけることになった。しかし、それは同時に、既存の利権者たちの反感を買うことをも意味していた。

新たな戦いの火種が、また一つ生まれようとしていた。
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