なけなしの石で引いたガチャから出てきた娘がただのレアだった件

きゅちゃん

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第4話 油断

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「ツインソードスラッシュ!」

叫ぶと同時に、俺の双剣スキルが発動。
ウィーーーンと、両腕が鈍く発光する。
左右に構えた双剣の連撃が、青いプリン状のモンスターに決まった。
赤い「Hit」の文字が2連続で頭上に踊った。
決まったぜ……!

「お見事です!」

ぱちぱち……と拍手の音がする。
俺は颯爽と双剣を収めつつ、声の主に向かって振り返った。
ニアが子犬のように目を輝かせながら、
さも嬉しそうに手を振ってくれた。

ここはダナンの郊外に広がる草原エリア。
いわゆる初心者ノービスゾーンだ。
スライムやウルフといった超初級レベルのモンスターしか出現せず、
戦闘の練習にはまさにうってつけの場所である。
ここ数時間というもの、戦闘スキルを使いこなすべく、
ひたすら雑魚狩りに勤しんでいた。

ここルーンデスティニーのワールドでは、
魔法に限らず全てのスキル発動において「技の名前を叫ぶ」必要があるらしかった。
いたってオーソドックスな、音声入力によるスキル発動システム。
より世界観に入り込むために、様々なゲームで採用されており、
現代のゲームでは決して珍しいものではない。

「でもなんというか、やっぱりちょっと恥ずかしい……」

耳をすませば、あちこちから「アイスソード!」だの「サンダーボルト!」だの、
スキルの発動と思しき声が聞こえてくる。
俺と同じく初心者エリアで鍛練に励む、他のプレイヤーたちの声だ。

「そんなことないですよ。かっこいいです!」

どこまで本気なのか、あるいはパートナーを励ますプログラムが標準化されているのか。
ニアはどんなことでも褒めてくれる。
褒めて伸ばすタイプは、好きです。
とはいえ、リアルでは褒められることなんて小学生以来か。
ずいぶんご無沙汰なだけに、どうも居心地が悪い。

それでも、ニアの言葉に嘘はないと。
そう、なんとなくわかるような気がする。
所詮はプログラムの編み出した、組み合わせの言葉テンプレじゃないかー
と冷めたもう一人の自分が囁いてくるが、そっと押さえ込んだ。

「ゲームなんだ。楽しめばいい」

そう独りごちると、ニアには聞こえなかったのか。
小鳥のように小さく首をかしげられた。
俺はぎこちない微笑をニアに返すと、

「なんでもないよ。もう少しでスキルレベルが上がるから、命中強化イーグルアイをお願いしてもいいかな?」

と頼んだ。

「はい!」

キャスターであるニアに補助魔法を掛けてもらうことで、
スキル上げはそれなりに効率的に進んでいた。
スキル発動だけでは、レベルアップの経験値が入らない。
命中しないと上昇判定が発生しないようなのだ。

ガチャ資金を貯めるために初動で出遅れていた俺は、
少しでも早く戦闘スキルを上げたいと考えていた。
というのも、少しだけ攻略サイトをのぞいてみたところ、
イベント攻略で上位に入れば、有償召喚ー
すなわち課金ガチャと同等の召喚が可能なチケットが手に入るという噂があったからだ。

頑張って強くなり、イベント上位に食い込めれば、
もう一度課金ガチャを引けるかもしれない。
それが今のところ、このゲームを続ける強力なモチベーションだ。
さすがにもう1回あれだけの現金をブチ込めるほど、優雅な身分ではない。

「あの、あまり無理はしないでくださいね」

補助魔法の詠唱を終えたニアの声が、少しだけ曇る。
確かに、ここ数時間ぶっ通して狩り続けているからな。
装備している武器の耐久もかなり減ってきているし、
集中力も落ちてきている感覚があった。

「あと1レベルだけ、それで帰るよ」

俺は双剣を構えなおし、草原エリアをずんずんと進む。
思えば、それは驕りだったのかもしれない。

小学生の頃からゲーム好きだった俺は、
それなりの数のMMOを渡り歩いてきたし、
ゲーム勘みたいなものは結構備わっていると思っていた。

所詮は、初心者エリアだ。
大したモンスターも出るはずがない。
単なるレアとはいえ、課金キャラもパートナーにいるのだから、万一ということもないだろう。
そんな軽い気持ちで進んでいった。

ただ、俺は忘れていた。
いつもの癖でチュートリアルをスキップしていたことを。
それゆえ俺は気づかなかったのだ。
このゲームではPK、すなわちプレイヤーキルが許されているということ。
しかも大変シビアなことに、初心者エリアを一歩でも外れると、
PK可能になるという鬼仕様であることに。
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