なけなしの石で引いたガチャから出てきた娘がただのレアだった件

きゅちゃん

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第18話 豹変

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「どるぁぁ!」

斧が一閃し、スケルトンゴラゴンの頭蓋骨を粉々に砕いた。
ふんっ、とガッツポーズを決める小野寺さんがもたらす安心感は異常だ…。

現在、塔の第38フロアまで到達。
幸いにして大きなトラブルやダメージもなく、俺たちは順調すぎると言っていいほど順調に進んでいた。
あの時よぎった嫌な予感は、きっと何かの間違いだったのだろうと、忘れることにする。

アベルが二度とあの冷酷な表情を浮かべることはなく、相変わらず気弱そうな微笑が張り付いていた。   

「また来るぞ!」

スケルトンドラゴンを倒したものの、一息つく暇もない。
またも前方に転送光が発現し、次の瞬間には十数体のスケルトンナイトが現われる。
カタカタと骨の音を響かせ、剣や槍、ボウガンなどさまざまな武器を構えながら近づいてきた。

「…こいつらは、かなり強いぞ。俺とアイシャでできるだけ片付けるが、討ち漏らしはリョウキとアベルで何とかしてくれ」

「「了解」」

「ニアも攻撃魔法でできるだけ敵の邪魔をして欲しい。ヘイトを集めすぎないようにな」

ヘイトとは、敵を攻撃することで上昇するシステム上の値で、プレイヤーが直接確認する術はない。
敵は基本的に最寄りの相手を狙うようにプログラムされているが、
一定以上のヘイト値を集めてしまうと、例え離れていてもヘイト値の高い相手を狙うようになるのだ。
それゆえ、近接戦闘が苦手な遠距離型、サポート型のクラスがヘイト値を集めすぎると戦線が乱れることになりやすい。
裏返せば、小野寺さんがそれだけニアを信頼してくれていることの証でもある。

「はい、任せてください!」

ニアが力強く頷いた。

「アイリスは、背後からの奇襲に備えつつ、ニアに敵を近づけるな」

「…わかった」

アキバ系電脳アイドルのような見た目とは裏腹に徹底的にクールな槍使いだが、頼れることはこれまでの戦闘で実証済みだ。

「では、蹂躙の時間だ!」

言い終わるや否や、我らの突撃隊長は猛然と走り出す。
雷神の露払いをするかのように、滝のような矢が敵へ向かって降り注いだ。
威力を犠牲にした物量攻撃、アイシャのアローストームだが、
スケルトンナイトたちは一向にひるむ気配がない。

…これまでの敵とは格が違う。
しかし、矢の奔流のおかげで、前進するスピードが少しだけ鈍ったその隙に、
紫電のごとき閃光が数体のスケルトンを薙ぎ払った。

小野寺さんのトールハンマーが、ついにその牙を解き放ったのだ。
しかしそれは、解きはなたざるをえなかったということでもあり、
これまでとは戦闘のステージが変化したという明確な証でもある。
俺のスキルが、どこまで通用するのだろうか。

「いこう、アベルさん」

「…そ、そうだね」

先陣で斧を振るう小野寺さんから少し距離を取り、
雷神の槌トールハンマーをかわして抜けてくるスケルトンを待ち構えることにする。

「…来た!」

槍持ちが一体に、ボウガン持ちが一体、他のスケルトンを犠牲にしつつ、
俺たちの方へと突進してくる。

「アベルさん、ボウガン持ちは任せます。俺は槍の方を!」

「わ、わかった!」

二手に分かれた俺たちは、それぞれの目標に向かって対峙する。
スケルトンが突き出した槍を、左の剣で受け流しつつ、前ステップで一気に詰め寄る。
槍を引き戻そうとして生まれた隙を逃さず、右の剣を渾身の力で突き出し、スケルトンの顎を打ち砕いた。
電池切れのように骨がバラバラと散らばり、次の瞬間塵になって消えていく。

次の瞬間、嫌な気配を感じて振り向いたところに、ダガーが振り下ろされる。
いつの間にかボウガンからダガーへと持ち替えたスケルトンが、俺の背後に迫っていた。

「うぉ…」

アベルさんに任せきって油断していた俺は、とっさにダガーの初撃こそ躱せたものの、
バランスを崩して転んでしまう。
その機を逃すまいと、スケルトンがのし掛かって俺の喉元にダガーを振り下ろしてくる!
こんなところで死ぬのか…?
ごめん、ニア…

そう覚悟を決めた瞬間、

「…諦めるの、早い」

迅雷のごとき速度で飛来した槍が二本、俺に覆いかぶさっていたスケルトンの双方の眼窩をそれぞれ正確に貫いた。

「あ、ありがとう…」

「…油断するな。敵はどこにでもいる」

アイリスはそれだけ言ってぷいと目を逸らした。
しかし、アベルさんは何をしていたんだ?
先ほどの腕があればスケルトン1体ごときに遅れをとるとも思えないが…

アベルさんの姿を探すが、どこにも見当たらない。
乱戦とはいえ、敵の数がそれほど多いわけではないし、小野寺さんとアイシャが敵の大半を食い止めている。
この状況下で行方不明になるというのはおかしい。

ふと、この旅の始まりで目にしたアベルさんの酷薄ともいえる表情を思い出す。

「わざと…俺をスケルトンに襲わせたのか?」

嫌な考えが頭をよぎる。
…新人とはいえ、白の騎士団のメンバーがそんなことを?

そう思い悩む間にスケルトンはほぼ全滅しかけていた。
相変わらずアベルさんの姿は見当たらない。

まずは小野寺さんに相談しよう。
そう足を踏み出した瞬間、

「うわあああ!!ご、ごめんよおお!!!」

後方から大絶叫が響き、アベルさんがふらふらと駆け寄ってきた。
こいつ、どこに行っていたというんだ…?
疑いの視線を向けた俺は…その先の光景に絶句する。

それは、百鬼夜行ともいうべきモンスターの群れ、否、軍団だった。
スケルトン、スケルトンドラゴン、リッチ、ヴェアウォルフ…種々雑多な魔物達が憎悪に目を光らせ、
徒党を組んでアベルさんを追いかけてきていたのだ。

「くそ…よくまぁこんなにも出てきたもんだ…」

さすがの小野寺さんの額にも汗が浮かんでいる。
この人が焦るところ、はじめて見た気がするぞ。
つまりそれだけ、とんでもなくやばい状況だってことだ。

「も、申し訳ない、ちょっと乱戦で道を外れたらものすごく付いてきてしまって…」

アベルさんはぺこぺこと頭をさげる。

「仕方ない、まずは前進して、なんとかやり過ごせる場所を探そう」

小野寺さんが、先ほどスケルトンナイト達が現れた方向へと進もうとした。

「いや、それじゃ困るんだな」

申し訳なさそうな表情が一転、アベルさん…いや、アベルが薄ら笑いを浮かべて俺たちの前に立ちふさがった。
その背後には、無表情のアイリスが槍を構え、アベルを掩護する。

「…なんだと?」

睨み据える小野寺さんに、一向にひるむ様子もなくアベルは言い放つ。

「あんた達には、ここで奮戦虚しく死んでもらうのさ」
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