【完結】悪役令嬢のスローライフ

きゅちゃん

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友情

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館に戻ると、グレイソン准教授と学生たちが興奮した様子で待っていた。

「エレノア!素晴らしい発見があったよ」グレイソンは目を輝かせていた。「村の長老から聞いた『星の井戸』の伝説が、古代の魔法儀式の記録と一致するんだ」

「星の井戸?」

「伝説では願いが叶う井戸だというが、実は古代の魔力増幅装置だった可能性が高い」

エレノアは好奇心をそそられた。「その井戸は今も?」

「それが問題なんだ」グレイソンは頭を掻いた。「正確な場所がわからない。伝説では『蒼穹の湖』の近くだというが...」

「蒼穹の湖なら知っているわ」エレノアは言った。「明日、案内しましょう」

その晩の夕食は、緊張した雰囲気から始まったものの、次第に打ち解け、賑やかな会話で満たされた。学生たちは好奇心旺盛で、エレノアに谷の様々な話を質問した。

食事の後、エレノアは書斎でグレイソンと二人きりになった。

「君は本当に変わったね」グレイソンは静かに言った。

「そう思いますか?」

「ああ」彼は頷いた。「アカデミーでの君は常に完璧を求め、他者を寄せ付けなかった。でも今の君は...開かれている」

エレノアは少し考え込んだ。「完璧でなくても、受け入れられる場所を見つけたのかもしれません」

グレイソンは満足げに微笑んだ。「それこそが、私が教え子たちに見つけてほしかったものだよ」

翌朝、エレノアは調査チームを蒼穹の湖へと案内した。澄み切った青い湖は、初夏の陽光に輝いていた。

「美しい...」クラウディアは感嘆の声を上げた。

調査チームは湖の周囲を丹念に調べ始めた。エレノアはクラウディアと共に、少し離れた場所で休憩していた。

「アカデミーを離れる決断は、難しかったですか?」クラウディアが突然尋ねた。

エレノアは湖面を見つめながら答えた。「いいえ、意外と簡単だったわ。それまでの人生が、息苦しく感じていたから」

「羨ましいです」クラウディアの声には、少しの憂いが混じっていた。「私は...まだ自分の本当の望みがわからないのです」

エレノアは驚いて彼女を見た。完璧な「氷の女王」クラウディアが、そんな迷いを抱えているとは。

「いつか見つかるわ」エレノアは優しく言った。「そして、その時が来たら...」

「エレノア様!クラウディア様!」学生の一人が興奮した様子で駆け寄ってきた。「何か見つけました!」

湖の西側の小さな洞窟の入り口に、かすかに青く光る紋様が刻まれていた。グレイソンがその紋様を調べ、目を輝かせた。

「これは間違いなく古代魔法の痕跡だ!紋様の形からして、『星の井戸』につながる道標かもしれない」

調査チームは熱心に記録と測定を始めた。エレノアとクラウディアは少し離れた場所から、その様子を見守っていた。

「こんな身近に歴史の痕跡があったなんて...」エレノアは感慨深げに言った。

「それが地方領地の魅力ですね」クラウディアが応じた。「帝都では失われてしまった歴史や伝統が、こういった場所には残っている」

二人は互いに微笑み合った。かつての敵対関係は、今や共通の興味と相互理解に変わっていた。

その日の夕方、調査チームは湖での発見を詳しく記録するため館に戻った。エレノアはグレイソンから「明日は『月影の森』を調査したい」と告げられた。

「月影の森は少し危険です」エレノアは忠告した。「案内人として、村の薬草師エマに同行してもらいましょう」

翌日、調査チームが森に向かっている間、エレノアとクラウディアは館に残り、これまでの記録を整理していた。

「私たちの研究に協力してくれて、本当にありがとう」クラウディアは心からの感謝を込めて言った。

「いいえ、私こそ。谷の秘密を解き明かす手助けをしてくれて感謝しているわ」

「あのね、エレノア」クラウディアは初めて敬称を外した。「正直に言うと、この調査の話が決まった時、私はとても緊張したの。かつてのライバルとの再会に...」

「私も同じよ」エレノアも率直に認めた。「でも今は...」

「今は友人として、一緒に研究できることを嬉しく思います」クラウディアは微笑んだ。

二人は互いに頷き合った。不思議なことに、かつての敵対者こそが、お互いを最もよく理解できる存在だったのかもしれない。

その夜、調査チームが月影の森から戻ってきた時、彼らの表情は明るく興奮に満ちていた。

「大発見です!」学生の一人が息を切らせながら報告した。「森の奥に、古代の祭壇らしき遺構を見つけました!」

グレイソンが詳細を説明した。「祭壇は『谷の守護者』を祀るものだったようだ。そして興味深いことに...」彼はエレノアを見た。「祭壇に刻まれた紋様と、君が持っている『銀の鈴』の模様が一致しているんだ」

エレノアは驚いた。「それは...どういう意味ですか?」

「まだ断定はできないが」グレイソンは慎重に言った。「『銀の鈴』は単なる装飾品ではなく、何らかの儀式に使われる道具だったのかもしれない」

その晩、エレノアは眠れずにバルコニーに出た。星空が広がる夜空を見上げながら、谷の謎について考えていた。

「眠れないの?」

振り返ると、クラウディアが立っていた。彼女も眠れない様子だった。

「ええ、少し...」

「私も」クラウディアは彼女の隣に立った。「発見が多すぎて、頭が冴えてしまって」

二人は静かに星空を見上げた。

「エレノア」クラウディアが静かに言った。「あなたはここで、本当に幸せそうね」

エレノアはゆっくりと頷いた。「ええ。思いがけず、自分の居場所を見つけたの」

「帝都に戻る予定は?」

「今のところはないわ」エレノアは星空を見つめたまま答えた。「まだここでやるべきことがたくさんあるから」

クラウディアは微笑んだ。「そう。それがあなたらしい選択ね」

翌日、調査チームの滞在最終日、エレノアは彼らと共に村の春祭りの準備を手伝っていた。明日から始まる祭りの準備で、村は活気に満ちていた。

「帝都の祭りとは全く違いますね」クラウディアは花飾りを作りながら言った。「こんなに住民全員が関わるなんて」

「ええ、ここでは皆が参加するの」エレノアは誇らしげに答えた。

グレイソンが近づいてきた。「エレノア、本当にありがとう。調査は大成功だったよ」

「こちらこそ」エレノアは心から言った。「谷の歴史について、多くのことを教えてくださいました」

「これからも定期的に訪問させてもらえれば」グレイソンは言った。「この谷には、まだまだ解明すべき謎がたくさんある」

「いつでも歓迎します」

夕方、エレノアは調査チームを村の入り口まで見送った。馬車が用意され、荷物が積み込まれる中、クラウディアが彼女に近づいてきた。

「エレノア、これを」彼女は小さな本を差し出した。「私が集めた薬草の活用法よ。あなたの庭園に役立つかもしれない」

エレノアは感謝の意を込めて本を受け取った。「ありがとう。私からもこれを」彼女は小瓶を渡した。「銀風の谷の蜂蜜よ。最初の収穫なの」

「大切にします」クラウディアの目に、涙が光った。「もう一度会えますか?」

「ええ、必ず」エレノアは自信を持って言った。「今度は、あなたがこの谷の春祭りを見に来るといいわ」

二人は固く抱き合った。かつての敵対者が、今は大切な友人となっていた。
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