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丘陵の剣士と秘めた好奇心
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丘陵地帯での甘く熱い夜が明け、俺たち三人は焚き火の残り火を片付けていた。
朝露に濡れた草が靴を湿らせ、遠くの川からは水音が心地よく響いてくる。
リリアが俺のジャケットの裾を引っ張りながら、眠そうな目を擦る。
「悠斗、昨夜はサフィーラさんいじめすぎちゃったかな……でも楽しかったね」
彼女の声は少しハスキーで、昨夜の甘く生々しい記憶が蘇る。
サフィーラが荷物をまとめながら、照れ隠しに笑う。
「ふふ、リリアちゃんにやられっぱなしだったよ。悠斗、次はお前が私を助けてよね?」
彼女が腰を振ってウインクしてくる。
艶のある褐色の肌に朝陽が当たり、布越しに見える曲線が誘うように揺れた。
俺は苦笑しながら荷物を背負い、三人で川沿いの道を歩き始めた。
俺の体力、持ちますかね?
丘を一つ越えると、視界が開け、小さな集落が見えてきた。
木と石でできた質素な家々が点在し、畑で働く人々の声が風に乗ってくる。
昨日の魔物騒ぎがここまで届いていないのか、村は穏やかだ。
俺たちが集落の入り口に近づくと、突然、鋭い誰何の声が響いた。
「そこの三人! 何者だ、名乗れ!」
声の主は、集落の門前に立つ少女だった。
長い赤髪をポニーテールにまとめ、革の鎧に身を包んだ凛々しい剣士だ。
腰に佩いた剣の鞘は使い込まれ、姿勢には隙がない。
鋭い緑の瞳が俺たちを睨むその凛とした美しさに、一瞬息を飲む。
「俺は悠斗、こっちはリリアとサフィーラ。別の世界から飛ばされてきて、この辺を旅してるだけだよ。敵意はない」
俺が手を上げて答えると、彼女が少し眉を緩める。
「……そうか。私はミレア、この集落を守る剣士だ。昨日、近くで魔物が暴れたと聞いて警戒してる。よそ者でも危害を加えないなら、村で休息を取ってもいい。ただし、私が見張っているからな」
ミレアが剣の柄に手を置いたまま、俺たちを村へ案内した。
歩くたびに鎧が軽く鳴り、彼女の引き締まった体が際立つ。リリアが俺の耳元で囁く。
「悠斗、あの人、強そうだね。でもなんか可愛いかも」
「ふふ、真面目そうだけど、私なら誘ったらすぐ堕ちそうね」
サフィーラが自信たっぷりにニヤリと笑う。俺は軽口を叩く二人を軽く睨んで黙らせた。
妙な雰囲気を出して、ミレアの警戒心を強めることもない。
村の広場で一息ついていると、ミレアが剣の手入れを始めた。
彼女が刃を丁寧に拭う姿はまるで職人みたいだ。
興味を持った俺が話しかけると、彼女が少し緊張した声で応じる。
「この剣は父の形見だ。剣士として村を守るのが私の役目。よそ者が来ると、どうしても警戒してしまうんだ」
「立派じゃないか。俺たちも昨日、魔物と戦ったよ。ミレアみたいな剣士がいれば楽だっただろうな」
「……そうか。なら、お前たちもただの旅人じゃないな。私と手合わせしてみるか?」
ミレアが立ち上がり、剣を構える。
俺はブレスレットを握り、軽く応じた。ブレスレットが形成する水の刃と剣が交錯し、数合で引き分けに。
彼女が息を整えながら笑う。
剣術なんか習ったこともないが、ブレスレットが不思議と身体を導いてくれるようだった。
「やるじゃないか、悠斗。面白い力だな、その腕輪」
ミレアのその笑顔が意外と柔らかくて、俺は少しドキッとした。きれいな人だ。
夕方、村の宿に案内された。
まだ木の香りが残る感じの良い部屋で、俺たちは荷を解く。
リリアが俺に抱きつき、じとっとした目で俺を睨みながら甘い声で囁く。
「悠斗、ミレアさんのことずっと見てたでしょ? 私の方がかわいいよね?」
彼女がドレスをずらし、白い胸元を見せてくる。
そのさまがいじらしくて、俺がキスしようとした瞬間、突如ドアがノックされ、ミレアが入ってきた。
「悪いが、夜の見回りまでここで……って、何を!?」
キスする寸前の俺とリリアの姿を見て、ミレアが顔を真っ赤に染めた。
サフィーラが笑いながら肩を叩く。
「ふふ、真面目ちゃんが覗きに来たね。どう、私たちと一緒に楽しむ?」
「ち、違う! 見回りの話を……って、なんですか、その絡み合う感じ!?」
ミレアが慌てて目を逸らすが、チラチラ見てるのがバレバレだ。
リリアがニヤリと笑い、ミレアに近づく。
「ミレアさん、興味あるでしょ? 私たち、いつもこうやって仲良くしてるんだよ」
「興味!? 仲良く!?いや、私は剣士として……その……」
ミレアがしどろもどろになる。
サフィーラが彼女の腰に手を回し、耳元で囁く。
「剣士でも女の子だろ? 私、踊り子だから分かるよ。ミレアちゃん、えっちなことに興味津々だね?」
「なっ!? や、やめなさい、そんなこと……!」
ミレアが思わず剣を手に持って構えるが、手が震えてる。
うーん、田舎の堅物剣士には刺激が強すぎたみたいだ。完全に錯乱してる。
ま、そこもかわいいんだが。見かねた俺が仲裁に入る。
「二人とも、いじめすぎだよ。ミレア、ごめんな。こいつら、からかうのが好きなんだ」
「……分かった。だが、私だって興味がないわけじゃない……って、いや、今のは忘れてくれ!」
失言を漏らしたミレアが顔を覆って部屋を急ぎ足で出ていく。
リリアとサフィーラが笑い合い、俺は苦笑するしかない。
その直後、村の外で大きな物音がした。
慌てて同行を願い出たミレアと一緒に確認に行くと、魔物の群れが集落を狙っている。
彼女が剣を抜き魔物を牽制する間に、俺がブレスレットの力を発動。
リリアとサフィーラも加わり、連携して見事に撃退した。
戦いの後、ミレアが息を切らしながら俺を見る。
「悠斗、お前たち……本当に頼りになるな。私一人じゃ無理だった」
「ミレアの剣もすごかったよ。俺達はあちこちの世界を回って人助けしているんだ。仲間にならないか?」
「……考えさせてくれ。私にも守るものがあるからな」
彼女が剣を静かに鞘に収めた。
月光に照らされた横顔がひどく美しい。
部屋に戻ると、リリアが続きをと言わんばかりに俺にキスし、サフィーラが背中に抱きつく。
ふと見れば、ミレアがドアの隙間から覗いてるのに気付き、俺は笑った。
これは新たな仲間が加わる日も近いかもしれない。
――続く
朝露に濡れた草が靴を湿らせ、遠くの川からは水音が心地よく響いてくる。
リリアが俺のジャケットの裾を引っ張りながら、眠そうな目を擦る。
「悠斗、昨夜はサフィーラさんいじめすぎちゃったかな……でも楽しかったね」
彼女の声は少しハスキーで、昨夜の甘く生々しい記憶が蘇る。
サフィーラが荷物をまとめながら、照れ隠しに笑う。
「ふふ、リリアちゃんにやられっぱなしだったよ。悠斗、次はお前が私を助けてよね?」
彼女が腰を振ってウインクしてくる。
艶のある褐色の肌に朝陽が当たり、布越しに見える曲線が誘うように揺れた。
俺は苦笑しながら荷物を背負い、三人で川沿いの道を歩き始めた。
俺の体力、持ちますかね?
丘を一つ越えると、視界が開け、小さな集落が見えてきた。
木と石でできた質素な家々が点在し、畑で働く人々の声が風に乗ってくる。
昨日の魔物騒ぎがここまで届いていないのか、村は穏やかだ。
俺たちが集落の入り口に近づくと、突然、鋭い誰何の声が響いた。
「そこの三人! 何者だ、名乗れ!」
声の主は、集落の門前に立つ少女だった。
長い赤髪をポニーテールにまとめ、革の鎧に身を包んだ凛々しい剣士だ。
腰に佩いた剣の鞘は使い込まれ、姿勢には隙がない。
鋭い緑の瞳が俺たちを睨むその凛とした美しさに、一瞬息を飲む。
「俺は悠斗、こっちはリリアとサフィーラ。別の世界から飛ばされてきて、この辺を旅してるだけだよ。敵意はない」
俺が手を上げて答えると、彼女が少し眉を緩める。
「……そうか。私はミレア、この集落を守る剣士だ。昨日、近くで魔物が暴れたと聞いて警戒してる。よそ者でも危害を加えないなら、村で休息を取ってもいい。ただし、私が見張っているからな」
ミレアが剣の柄に手を置いたまま、俺たちを村へ案内した。
歩くたびに鎧が軽く鳴り、彼女の引き締まった体が際立つ。リリアが俺の耳元で囁く。
「悠斗、あの人、強そうだね。でもなんか可愛いかも」
「ふふ、真面目そうだけど、私なら誘ったらすぐ堕ちそうね」
サフィーラが自信たっぷりにニヤリと笑う。俺は軽口を叩く二人を軽く睨んで黙らせた。
妙な雰囲気を出して、ミレアの警戒心を強めることもない。
村の広場で一息ついていると、ミレアが剣の手入れを始めた。
彼女が刃を丁寧に拭う姿はまるで職人みたいだ。
興味を持った俺が話しかけると、彼女が少し緊張した声で応じる。
「この剣は父の形見だ。剣士として村を守るのが私の役目。よそ者が来ると、どうしても警戒してしまうんだ」
「立派じゃないか。俺たちも昨日、魔物と戦ったよ。ミレアみたいな剣士がいれば楽だっただろうな」
「……そうか。なら、お前たちもただの旅人じゃないな。私と手合わせしてみるか?」
ミレアが立ち上がり、剣を構える。
俺はブレスレットを握り、軽く応じた。ブレスレットが形成する水の刃と剣が交錯し、数合で引き分けに。
彼女が息を整えながら笑う。
剣術なんか習ったこともないが、ブレスレットが不思議と身体を導いてくれるようだった。
「やるじゃないか、悠斗。面白い力だな、その腕輪」
ミレアのその笑顔が意外と柔らかくて、俺は少しドキッとした。きれいな人だ。
夕方、村の宿に案内された。
まだ木の香りが残る感じの良い部屋で、俺たちは荷を解く。
リリアが俺に抱きつき、じとっとした目で俺を睨みながら甘い声で囁く。
「悠斗、ミレアさんのことずっと見てたでしょ? 私の方がかわいいよね?」
彼女がドレスをずらし、白い胸元を見せてくる。
そのさまがいじらしくて、俺がキスしようとした瞬間、突如ドアがノックされ、ミレアが入ってきた。
「悪いが、夜の見回りまでここで……って、何を!?」
キスする寸前の俺とリリアの姿を見て、ミレアが顔を真っ赤に染めた。
サフィーラが笑いながら肩を叩く。
「ふふ、真面目ちゃんが覗きに来たね。どう、私たちと一緒に楽しむ?」
「ち、違う! 見回りの話を……って、なんですか、その絡み合う感じ!?」
ミレアが慌てて目を逸らすが、チラチラ見てるのがバレバレだ。
リリアがニヤリと笑い、ミレアに近づく。
「ミレアさん、興味あるでしょ? 私たち、いつもこうやって仲良くしてるんだよ」
「興味!? 仲良く!?いや、私は剣士として……その……」
ミレアがしどろもどろになる。
サフィーラが彼女の腰に手を回し、耳元で囁く。
「剣士でも女の子だろ? 私、踊り子だから分かるよ。ミレアちゃん、えっちなことに興味津々だね?」
「なっ!? や、やめなさい、そんなこと……!」
ミレアが思わず剣を手に持って構えるが、手が震えてる。
うーん、田舎の堅物剣士には刺激が強すぎたみたいだ。完全に錯乱してる。
ま、そこもかわいいんだが。見かねた俺が仲裁に入る。
「二人とも、いじめすぎだよ。ミレア、ごめんな。こいつら、からかうのが好きなんだ」
「……分かった。だが、私だって興味がないわけじゃない……って、いや、今のは忘れてくれ!」
失言を漏らしたミレアが顔を覆って部屋を急ぎ足で出ていく。
リリアとサフィーラが笑い合い、俺は苦笑するしかない。
その直後、村の外で大きな物音がした。
慌てて同行を願い出たミレアと一緒に確認に行くと、魔物の群れが集落を狙っている。
彼女が剣を抜き魔物を牽制する間に、俺がブレスレットの力を発動。
リリアとサフィーラも加わり、連携して見事に撃退した。
戦いの後、ミレアが息を切らしながら俺を見る。
「悠斗、お前たち……本当に頼りになるな。私一人じゃ無理だった」
「ミレアの剣もすごかったよ。俺達はあちこちの世界を回って人助けしているんだ。仲間にならないか?」
「……考えさせてくれ。私にも守るものがあるからな」
彼女が剣を静かに鞘に収めた。
月光に照らされた横顔がひどく美しい。
部屋に戻ると、リリアが続きをと言わんばかりに俺にキスし、サフィーラが背中に抱きつく。
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――続く
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