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Ⅰ 父と子
マラカーンの門は、まだ開かーん
しおりを挟む馬車を降りて門番と話していた商人が、浮かない表情で二人の元に戻ってきた。
「お二人とも、すみません。
私とした事がうっかりしてました」
商人の話によると、この時期に毎年行われている白聖祭の習わしによって、現在マラカーンの街は閉鎖されているとの事だった。
「えぇっ?!
ちょっと、そこの門番さん。
こっちは半日以上もかけて、遠路はるばるやって来てるのよ?」
ずっと馬車の荷台に乗っていたせいで、猛烈にお尻が痛い。
この上、もう半日かけてとんぼ返りするなんて御免だ。
「そう言われてもな。
文句があるなら新領主のファラン様に言ってくれ」
「ファラン様?」
「前領主の後を引き継いで、今年から白聖祭の行事はすべてファラン様が執り行う事になったんだが、これが何をやっても駄目な御人でな。
いつもなら生け贄を捕えた領主が街に戻った時点で門を開けるんだが、明け方に森に入ったきり昼を過ぎても戻ってくる気配がないんだよ」
「……それは少し心配ね。
モンスターに襲われてなきゃいいけど」
ユリカがそう言うと門番は苦笑した。
「ハハ、その心配はないさ。
この辺りに出るモンスターはどれも雑魚ばかりだからな。
恐らくどこかで迷子にでもなってるんだろう。
と言う訳だから、ファラン様が戻るまでここは通せない」
しょげるユリカを励まそうとするGだったが、うまい言葉が見当たらなかった。
代わりに見付けたのは、森のなかへと続く一本の獣道である。
「二本足さん、二本足さん!
Gはとてもいい事を思い付きました」
袖を引っ張られたユリカはGの指差す方を見て、彼が何を言おうとしているのかを概ね理解した。
「……私は嫌よ」
この私がどうしてそんな面倒な事を。
顔を背けてはみたものの、視線の先に見えたのは硬い荷馬車の車輪である。
「そんな事言わずに領主を探しに行きましょうよ。
もしかしたらファラン様、とんでもないイケメンかも知れませんよ?」
「イケメン領主か……」
悪くない物件にユリカの顔が綻ぶ。
うまく乗せられたようでなんだか嫌だけど、これも逆ハーレムへの第一歩だと思えば-。
「しょ、しょうがないわね、Gったら。
あんたがどうしてもって言うから、私は渋々協力してあげるだけなんだからっ。
ちゃんと感謝しなさいよ!」
門番達に領主を捜索に行く旨を伝え、先陣を切って颯爽と歩くユリカ。
その後ろ姿から滲み出るのは圧倒的な下心のみであった。
「たっまの輿ー、あ、そっれ、たっまの輿ー♪
ほら、G、遅れてるわよ!」
二人は広大な森のなかをどんどん進み、道中の雑魚モンスターを次々に蹴散らしていった。
S級冒険者であるGの手にかかれば、どんな敵も姿を見せたと同時に倒されるのは当然だった。
しかし、道なき道に分け入ってまで捜索していると言うのに肝心の領主が見付からない。
「た、たっまの……こしぃ……ハァ、ハァ。
ファラン領主って、いったい何処にいるのよーっ?!」
緑に囲まれた森のなか、小鳥のさえずり以外に返事をする者はない。
しゃがみ込むユリカ。
その後ろの花畑では、Gが蝶々と戯れながら花冠を作っていた。
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