転生者G-転生前はゴキブリでした-

花鳴カナリア

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  Ⅰ 父と子

 ファランと民衆

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 モルトンに背中を押されたユリカを先頭にG達はマラカーンの門を潜った。
真っ先に目に飛び込んできたのは、大陸各地から白聖祭を目当てに集まった大勢の観光客と露天商達の姿である。
視界に収まる範囲だけで、ゆうに二百人は越えているだろうか。
街頭ではこの地方の特産品や飲食物、他国との海洋貿易で持ち込まれた異国の書物や工芸品、武具に楽器、酷い悪臭を放つ傷薬や怪しい媚薬など多種多様な品が販売されており、無い物を探す方が難しいほどの物量だった。

「どうだ、マラカーンの街並みは。
大陸広しと言えどもここまで活気に満ちた都市は、王都を除けばこの街以外にまず無かろう」

ファランが誇らしげに二人に語った。
しかし、その声の半分は群衆からの雑音に掻き消されてしまう。

「とっても素晴らしい、大きな街ですね!」

Gはなるべく大きな声で答えたつもりだったが、ファランの耳まで届いているかは不明だった。

「ファラン様、ファラン様だっ!」

若き領主に気付いた群衆から歓声が上がる。
ファランは片手を挙げてそれに応えると、慣れた様子で演説を始めた。

「マラカーンの民よ。
今宵の白霊祭は昨年の恩恵を神に感謝し、今年一年の更なる街の発展と安泰を祈願するものである。
女神ナーシェは必ずや我等の願いをお聞き届け下さるであろう。
さぁ、昨年神に祈りを捧げ、見事に幸舞い込みし者は名乗り出よ。
今一度、女神のご加護に皆で祝杯を傾けようではないか」
「うちの店の売り上げが三割も上がったんだ!」

商人風の男が葡萄酒を片手に叫んだ。

「うちは子供が産まれたよ!
こんなに元気な男の子だ」

今度はその前方で若夫婦が赤ん坊をあやしながら手を挙げる。

「私は一月前に大好きな人と結婚できたの!」

次々と自分に起きた出来事を報告し、互いに杯をかわす人々。
さっきまで泣きじゃくっていた女の子が、民の前では堂に入ったものではないですか。
ファランの領主としての振る舞いに、Gは感心した。
他者より優れている者が良き統治者になるとは限らない。
民と同じ目線で悩み、その土地を心から愛し、どんな困難にも屈する事なく最善を探求し続けられる人間。
それこそが良き領主なのだとGは思う。
その強き想いに民の心が動かされ、皆が一つに団結した時、より良い街に発展する為の新たな礎が造られていくのではないだろうか。

「ユリカ様、じきに祈祷のお時間となります。
こちらへ」

モルトンに連れられ、ユリカは人波を掻き分けながらマラカーン教会の中へと入った。
純白の祭衣に袖を通して数人がかりでの着替えを終えると、大急ぎで中央広場へと駆け出す。
-さぁ、いよいよだ。
式服に着替えたファランが広場の祭壇に立っている姿が遠目に映った。
これから三人が行うのは、五千人の大観衆を相手取った大博打である。

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